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米長期金利は一段と低下するか

2026/10/19 12:07

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【今週のポイント】
・米長期金利が示唆する景気失速は現実味を帯びるか
・ユーロ/英ポンドの重要なカギを握る財政政策
・トルコ中銀はどの程度利下げをするか

AIに対する疑念が市場の大きな懸念材料となっています。AIによる生産性の向上やデータセンターなどAI関連投資が景気をけん引し、AIや半導体の関連株が中心となって株高を推進してきました。市場では、AIのポテンシャルを評価しつつも、これまでのAIブームが行き過ぎでその反動が出るとの見方が強まっているのでしょう。

先週(10/12- )、米国の9月CPIやPPI(生産者物価指数)、小売売上高が上振れし、景気堅調やインフレ圧力の高さを示唆しました。また、WTI原油先物価格は9月中旬以来の1バレル=100ドル台に乗せました。それらにも関わらず、FRBによる利上げ期待は高まらず、長期金利は逆に低下しました。市場が、足もとの経済指標や原油高をスルーして、AIブームの反動での景気減速や株安を織り込み始めたからでしょう。

先週、AIクラウドのコアウィーブの社債(6年物、表面利率9.625%)が急落、流通利回りは14日に一時15.59%まで上昇しました。その後、小幅に低下したものの、15%台で週を終えました。そうした信用不安が他のAI関連企業に広がったり、深刻化したりしないか、今後の展開には要注意でしょう。

今週の経済指標・イベント

今週(10/19- )もAIに関する思惑が錯綜(そう)しそう。21日にはエヌビディアのフアンCEOが同社の国際カンファレンス(ベルリン)で基調演説を行い、AIの将来について語る予定です。ネットフリックス(20日)、テスラ、メタ、IBM(21日)などの決算発表もあり、大型ハイテク株を中心とした株価動向も大いに気になるところでしょう。<西田>

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米ドル/カナダドルや豪ドル/米ドルは引き続き、米国の長期金利の動向に影響を受けやすいと考えられます。米長期金利は10月7日に一時5.36%へと上昇したものの、その後は低下傾向にあります(16日は5.07%でNY市場を終了)。一段と低下するようであれば、米ドル/カナダドルは軟調に推移し、豪ドル/米ドルは堅調に推移する可能性があります。

NZドル/円やNZドル/米ドル、豪ドル/NZドルに関しては、22日発表のNZの7-9月期CPI(消費者物価指数)が相場材料になりそうです。市場では、RBNZ(NZ中銀)は次回10月28日の政策会合で0.25%の利上げを行うと予想されています。OIS(翌日物金利スワップ)に基づくと、16日時点で市場が織り込む次回会合での利上げ確率は約9割です。CPIが市場予想を上回る結果になれば、次回会合での利上げ観測が補強されるとともに、次々回12月9日の会合での追加利上げ観測も強まるかもしれません。

22日にはTCMB(トルコ中銀)の政策会合が開かれます。TCMBは1月に利下げを実施した後、前回9月まで5会合連続で政策金利を37.00%に据え置いています。トルコの9月CPIは前年比29.73%と、前月の31.51%から上昇率が鈍化し、21年11月以来およそ5年ぶりに30%を下回りました。TCMBは22日の会合で利下げを行うと市場は予想しており、利下げ幅に関しては1.00%になるとの見方が有力です。1.00%を上回る利下げが決定されれば、トルコリラ安圧力が加わる可能性があります。

原油価格の動向にも注目です。WTI原油先物は約1カ月ぶり、北海ブレント先物は約5カ月ぶりの高値圏にあります。原油価格が一段と上昇した場合、ノルウェークローネやカナダドル、メキシコペソにとってのプラス材料になりそうです。<八代>

今週の注目通貨ペア①:<米ドル/円 予想レンジ:154.000円~161.000円>
米FRBのウォーシュ議長は16日、IMF(国際通貨基金)のイベントで発言し、物価安定の重要性を改めて強調しました。ただ、10月27-28日のFOMCで利上げする意向かどうかには言及しませんでした。FRBは17日から目先の金融政策について発言しない「ブラックアウト期間」に入りました。市場はFOMCで政策金利が据え置かれる可能性が高いとみており、今週は大きな米経済指標はないため、その見方に変化はなさそうです。

日銀の植田総裁は同じく16日、基調的なインフレ率は「概ね2%に近い」との認識を示し、「それ以上上がることは容認できない」と述べました。ただし、市場は、29-30日の金融政策決定会合で政策金利が据え置かれるのはほぼ確実とみています。23日に9月の全国CPIが発表されますが、よほどのことがない限り据え置き見通しは変わらないでしょう。

16日時点のOIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、市場はFRBの利上げを27年3月までに0.25%×2.0回織り込んでおり、同じく日銀の利上げは1.6回です。そのため、日米の政策金利差や金融政策見通しをベースにすれば、米ドル/円に上昇圧力が加わり、本邦当局(+米当局?)による円安けん制への警戒から米ドル/円が頭を抑えられるという従来の構図が続くかもしれません。

もっとも、米長期金利が景気に対する懸念から低下を続ければ、そして市場の懸念が現実味を帯びれば、FRBの利上げ観測が大きく後退して(利下げ観測が浮上して)、米ドル/円の重石となる展開もありうるでしょう。

ただし、中東での緊張が長期化し、原油価格が一段と上昇するならば、中東原油に対する日本経済の依存度が高いため、米ドル/円には上昇圧力が加わりそうです。<西田>

今週の注目通貨ペア②:<ユーロ/英ポンド 予想レンジ:0.83000ポンド~0.85000ポンド>
ユーロ/英ポンドは14日に一時0.84055ポンドと、25年5月以来の水準に下落しました。ユーロ/英ポンドは9月末から下落基調となっており、それはフランスとドイツの長期金利(10年物国債利回り)の差(仏>独)が大きく拡大したタイミングとほぼ一致しています。

フランスで生活費の高騰などに抗議して大規模なデモが実施され、それが一部で暴動に発展するなど、政治不安が高まっています。フランスの財政赤字が懸念されるなかで、ルコルニュ政権が27年1月に始まる新年度の予算を成立させることができるか、債券市場の参加者は注視しています。

米国でAI関連株主導での株安が進むなか、一部の投資資金は欧州に向かっているようです。なかでも、FTSE100が最高値に接近するなど、ドイツやフランスの株に対する英国株の堅調さが目立ちます。また、原油などエネルギー高はユーロ圏経済により大きなダメージを与えそうです。

もっとも、英国も予算編成は注目されるところです。バーナム政権が28日に初の秋季予算を発表します。財政規律の維持と、社会福祉など支出要請の板挟みになったバーナム政権が財政政策の運営を間違えれば、英ポンド売り圧力が高まる可能性はありそうです。<西田>

今週の注目通貨ペア③:<豪ドル/NZドル 予想レンジ:1.21500NZドル~1.24500NZドル>
10月15日に発表された豪州の9月雇用統計は、失業率が4.7%、雇用者数が前月比3.93万人減となり、いずれも市場予想(4.6%と2.00万人増)と比べて弱い結果でした。また、前月の失業率は4.6%から4.7%へ、雇用者数は3.95万人増から2.93万人増へと修正されました。

それらを受けて市場ではRBA(豪中銀)による追加利上げ観測が後退。豪ドル/NZドルは16日に一時1.22675NZドルへと下落し、9月8日以来約1カ月ぶりの安値をつけました。

ハウザーRBA副総裁が21日に講演します。ハウザー副総裁は前回9月28-29日の政策会合前、8月19日の講演で「豪州のインフレ率は高すぎる」、「インフレ率が低下しなければ、追加利上げが必要になる可能性がある」と述べ、9月8日のインタビューで「9月の会合では利上げについて議論されるだろう」と発言。RBAはその後9月の会合で0.25%の利上げを実施しました。

RBAの次回会合は11月2-3日、その次が12月7-8日です。ハウザー副総裁の講演で、先行きの金融政策についてどのようなヒントが提供されるのか注目されます。

22日にはNZの7-9月期CPI(消費者物価指数)が発表されます。市場では、RBNZは次回10月28日の会合で0.25%の追加利上げを行うとの見方が有力。その次の12月9日の会合でも利上げをするとの観測があります。

ハウザー副総裁の講演でRBAの追加利上げ観測が一段と後退して、NZのCPIでRBNZの追加利上げ観測が強まるようであれば、豪ドル/NZドルは引き続き軟調に推移しそうです。<八代>

今週の注目通貨ペア④:<メキシコペソ/円 予想レンジ:8.200円~8.800円>
メキシコペソ/円は10月15日に一時8.461円へと下落し、25年12月以来の安値をつけました。FRBやECBなど主要中銀が利上げ方向にあるなか、BOM(メキシコ中銀)は前回9月24日の政策会合で政策金利を据え置きました。さらに、10月8日に公表された9月BOM会合の議事要旨では、5人の政策メンバーのうち3人が利下げについて言及していたことが明らかになりました。それらがメキシコペソへの下押し圧力になっています。

今週は22日にメキシコの10月前半のCPI(消費者物価指数)が発表されます。市場予想は、総合が前年比3.60%、食品・エネルギー・農畜産物などを除いたコアが同3.71%(10/16時点)。総合の上昇率は9月前半の3.42%から高まるものの、コアは3.79%から鈍化するとみられています。10月前半のCPIが市場予想を下回れば、メキシコペソ/円の上値は一段と重くなる可能性があります。<八代>

西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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