マネースクエア マーケット情報

ベッセント長官の金利抑制作戦は成功するか

2026/08/25 07:54

【ポイント】
・ベッセント財務長官は長期金利抑制策を相次いで打ち出す
・いずれも対症療法であり、効果は一時的か
・根本原因である財政赤字に対処する必要があるものの・・・
   11月に中間選挙を控えて抜本策は難しい

長期金利の上昇に対して、米国のベッセント財務長官が金利抑制策を相次いで打ち出しています。

8月18日付け「世界的な長期金利上昇の背景」をご覧ください。

まず、7月31日に米国が日本との協調介入に参加したのも、日本が介入資金を米国債売却で調達するのを少しでも小さくするためでしょう。そして、日本が今後は米国債売却でなくFRBのFIMAレポファシリティを活用すると発表したのも、おそらく米国サイドからの提案ではないでしょうか。ベッセント財務長官は8月3日に、FRBはFIMAレポファシリティの規模を現在の600億ドル/日から拡充するのが合理的とも発言しています。

8月5日には四半期借り換え(クォータリー・リファンディング)の発表に際して、財務省は国債買い戻しを前期並みにすると発表。しかし、その2週間後19日には長期国債の買い戻し額を20億ドルから40億ドルに倍増させると発表しました。直後には市場が好感して長期金利は低下しましたが、すぐに反発しています。

ベッセント財務長官は24日のイラン制裁の記者会見で、国債発行を減額する可能性を問われて、「通常の発行計画を継続する」と回答しました。ただ、これに先立って、ニュースメディアが、財務省高官2人の話として、長期国債買い戻し増額の原資に財務省がFRBに保有する一般勘定(TGA、8/20の残高9,350億ドル)の利用(≒短期国債の発行を増やさない)が検討されていると報じました。債券市場はこれを好感したようです。

米長期金利

もっとも、上記の措置はいずれも対症療法にすぎません。結局は、財政赤字という根本原因に対処する必要があるでしょう。米国の財政赤字は今年7月までの1年間で1兆9,457億ドル。これはGDP比で約6%。日本の24年度実績(1.6%)や、ユーロ圏の基準(3%以内)と比べてかなり大きいといえます。

米財政赤字

とりわけ、足もとでは違法とされた相互関税の返金イラン戦費など赤字拡大要因が散見されます。長期金利を低位で安定させるためには、国債発行額(≒財政赤字)を持続的に抑制する必要があるでしょう。ただ、11月に中間選挙を控えていることもあり、痛みの伴う財政政策の変更はすぐにはできそうにありません。
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

  • 当レポートは、情報提供を目的としたものであり、特定の商品の推奨あるいは特定の取引の勧誘を目的としたものではありません。
  • 当レポートに記載する相場見通しや売買戦略は、ファンダメンタルズ分析やテクニカル分析などを用いた執筆者個人の判断に基づくものであり、予告なく変更になる場合があります。また、相場の行方を保証するものではありません。お取引はご自身で判断いただきますようお願いいたします。
  • 当レポートのデータ情報等は信頼できると思われる各種情報源から入手したものですが、当社はその正確性・安全性等を保証するものではありません。
  • 相場の状況により、当社のレートとレポート内のレートが異なる場合があります。
topへ