7月米雇用統計は軟調、利上げ観測は後退⁉
2026/08/08 06:36
【ポイント】
・7月NFPは今年2月以来の減少、5-6月分も下方修正
・失業率は低下も、労働市場からの退出が主因
・FRBの利上げ観測は後退、米ドルに下落圧力
・末尾に事業所調査と家計調査の詳細解説
米国の7月雇用統計は、NFP(非農業部門雇用者数)が前月比マイナスとなるなど、労働市場の軟調が示されました。FRBの利上げ観測は後退して、市場金利は長期・短期ともに低下。米ドルは主要通貨に対して下落。米ドル/円は雇用統計発表直後に156円台まで下落しましたが、その後158円近くまで反発しました。
7日時点のOIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、市場が織り込む次回9月FOMCでの利上げ確率は約4割。10月FOMCまでみれば7割弱。引き続き26年中の利上げが確実視されているものの、追加利上げは27年7月までみても7割程度に低下しました。
FOMCの利上げ観測がさらに後退する、そして利下げ観測が浮上するようなら、米ドル/円には下落圧力が加わりそうです。今後の経済指標が示唆する景気実態が一層重要になりそうです。
*******
7月雇用統計では、事業所調査のNFP(非農業部門雇用者数)が前月比2.3万人減と、今年2月(15.6万人減)以来のマイナスとなりました。業種別では、娯楽・飲食等が4.0万人減、地方政府の教職員が5.0万人減と目立ちました。前者はサッカーW杯、後者は季節調整の歪み(教職員は学年末の7-8月でいったん離職する傾向があるため)が影響している可能性がありそうです。もっとも、5月と6月分は計10.3万人下方修正。NFPの3カ月移動平均は2.0万人増と大きくペースダウンしました。

時間当たり賃金は前年比3.2%増と、コロナ・ショックの影響を受けた21年5月以来の低い伸びとなり、足もとのインフレ率(6月PCEコア前年比3.3%)をわずかながら下回りました。

家計調査に基づく失業率は4.1%と、前月の4.2%から一段と低下しました(厳密には7月4.09%←6月4.19%)。6月FOMCでの経済見通しによれば、(目標とする)失業率は中央値が4.2%、中心レンジが4.0%-4.3%なので、目標レンジに収まっています。

もっとも、それは(家計調査での)雇用が前月から8.7万人減少した一方で、労働力人口が26.4万人減少し、失業者数が17.4万人減少したためでした。6月も労働力人口が前月から72.0万人減少、雇用が50.7万人減少、失業者が21.3万人減少した結果、失業率が低下しました。労働参加率<(雇用者数+失業者数)/生産年齢人口>は61.4%と6月の61.5%から一段と低下。高齢者の退職や労働条件の悪化、移民の減少などにより労働市場から退出する人が増えているのであれば、失業率の低下は米経済にとって好ましいとは言えません。

<参考>事業所調査と家計調査
事業所調査(establishment survey)は約40万カ所の事業所を対象としたサンプル調査。給料のデータをもとに、雇用者数、労働時間、賃金などが発表される。NFP(non-farm payroll)のpayrollは給与支払いデータのこと。記録に基づくため、正確性は高い。ただし、複数の職を持つ人はその数だけ雇用とカウントされる、自営業者が捕捉しづらい、起業や廃業による雇用変化を推計するモデルの信頼性が低いなどの問題点はある。毎年3月に失業保険料の支払い記録を基に全数調査が実施され、翌年2月にそれを反映した改定値が公表される。
家計調査(household survey)は、約6万世帯の家計を対象にしたアンケート調査。当該月の一定期間に「仕事をしたか」「(しなかった場合に)職探しをしたか」、回答者の属性(年齢や人種など)を尋ねるもの。失業率や労働参加率などが発表される。聞き取り調査(=記憶に基づく)かつサンプルが小さいため、データの信頼性は事業所調査に比べて劣る。
いずれの調査も、対象期間は当該月の12日を含む1週間。その間に1時間でも働けば「雇用」とカウントされる。事業所調査は支払った給料の数を雇用としてカウントするため、重複を避ける目的がある(週給制が多いから)。事業所調査と家計調査は全く異なる調査なので月々の結果が違った方向を示す場合もあるが、やや長い期間を通してみれば同じ方向を指す。
・7月NFPは今年2月以来の減少、5-6月分も下方修正
・失業率は低下も、労働市場からの退出が主因
・FRBの利上げ観測は後退、米ドルに下落圧力
・末尾に事業所調査と家計調査の詳細解説
米国の7月雇用統計は、NFP(非農業部門雇用者数)が前月比マイナスとなるなど、労働市場の軟調が示されました。FRBの利上げ観測は後退して、市場金利は長期・短期ともに低下。米ドルは主要通貨に対して下落。米ドル/円は雇用統計発表直後に156円台まで下落しましたが、その後158円近くまで反発しました。
7日時点のOIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、市場が織り込む次回9月FOMCでの利上げ確率は約4割。10月FOMCまでみれば7割弱。引き続き26年中の利上げが確実視されているものの、追加利上げは27年7月までみても7割程度に低下しました。
FOMCの利上げ観測がさらに後退する、そして利下げ観測が浮上するようなら、米ドル/円には下落圧力が加わりそうです。今後の経済指標が示唆する景気実態が一層重要になりそうです。
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7月雇用統計では、事業所調査のNFP(非農業部門雇用者数)が前月比2.3万人減と、今年2月(15.6万人減)以来のマイナスとなりました。業種別では、娯楽・飲食等が4.0万人減、地方政府の教職員が5.0万人減と目立ちました。前者はサッカーW杯、後者は季節調整の歪み(教職員は学年末の7-8月でいったん離職する傾向があるため)が影響している可能性がありそうです。もっとも、5月と6月分は計10.3万人下方修正。NFPの3カ月移動平均は2.0万人増と大きくペースダウンしました。

時間当たり賃金は前年比3.2%増と、コロナ・ショックの影響を受けた21年5月以来の低い伸びとなり、足もとのインフレ率(6月PCEコア前年比3.3%)をわずかながら下回りました。

家計調査に基づく失業率は4.1%と、前月の4.2%から一段と低下しました(厳密には7月4.09%←6月4.19%)。6月FOMCでの経済見通しによれば、(目標とする)失業率は中央値が4.2%、中心レンジが4.0%-4.3%なので、目標レンジに収まっています。

もっとも、それは(家計調査での)雇用が前月から8.7万人減少した一方で、労働力人口が26.4万人減少し、失業者数が17.4万人減少したためでした。6月も労働力人口が前月から72.0万人減少、雇用が50.7万人減少、失業者が21.3万人減少した結果、失業率が低下しました。労働参加率<(雇用者数+失業者数)/生産年齢人口>は61.4%と6月の61.5%から一段と低下。高齢者の退職や労働条件の悪化、移民の減少などにより労働市場から退出する人が増えているのであれば、失業率の低下は米経済にとって好ましいとは言えません。

<参考>事業所調査と家計調査
事業所調査(establishment survey)は約40万カ所の事業所を対象としたサンプル調査。給料のデータをもとに、雇用者数、労働時間、賃金などが発表される。NFP(non-farm payroll)のpayrollは給与支払いデータのこと。記録に基づくため、正確性は高い。ただし、複数の職を持つ人はその数だけ雇用とカウントされる、自営業者が捕捉しづらい、起業や廃業による雇用変化を推計するモデルの信頼性が低いなどの問題点はある。毎年3月に失業保険料の支払い記録を基に全数調査が実施され、翌年2月にそれを反映した改定値が公表される。
家計調査(household survey)は、約6万世帯の家計を対象にしたアンケート調査。当該月の一定期間に「仕事をしたか」「(しなかった場合に)職探しをしたか」、回答者の属性(年齢や人種など)を尋ねるもの。失業率や労働参加率などが発表される。聞き取り調査(=記憶に基づく)かつサンプルが小さいため、データの信頼性は事業所調査に比べて劣る。
いずれの調査も、対象期間は当該月の12日を含む1週間。その間に1時間でも働けば「雇用」とカウントされる。事業所調査は支払った給料の数を雇用としてカウントするため、重複を避ける目的がある(週給制が多いから)。事業所調査と家計調査は全く異なる調査なので月々の結果が違った方向を示す場合もあるが、やや長い期間を通してみれば同じ方向を指す。
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