マネースクエア マーケット情報

26年12月までの為替相場展望(アップデート)

2026/08/03 13:23

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本レポートは、26年6月29日配信の「マネースクエア四季報」で提示した26年12月までの為替相場見通しをアップデートしたものです。

7月は、米国とイランとの攻撃の応酬が続き、原油価格が反発。ノルウェークローネ、カナダドル、メキシコペソなど産油国通貨が比較的堅調でした。AI投資への疑念からAI・半導体関連株を中心に株価が軟調に推移しましたが、市場のリスクオフ的地合いはさほど強まらず、豪ドルやNZドルなども底堅く推移しました。

高市政権による「骨太の改革2026」が円売り材料とされ、本邦当局による介入警戒感もあるなかで、米ドル/円は約40年ぶりの高値を更新。英国では、労働党の党首交代によりバーナム政権が誕生、政治不安がやや後退したことが、株式・債券・英ポンドの「プチ・トリプル高」を招きました。

26年12月までの予想レンジ

26年12月までの予想レンジ


7月30日に本邦当局により、31日には日米協調で円買い介入が実施されました(米財務省はユーロ売り・円買い)。8月3日に発表された大臣談話で片山財務相は、「今後、更なる協調介入を実施することも躊躇しない」と明言しました。

8月3日時点で、日米共同で円安を阻止する姿勢だという以外にハッキリしていることはあまりありません。日米当局にどこまで協調する用意があるのか、追撃介入はあるのか。両国が単に円相場の安定を望むのか、それとも(ベッセント長官の言う)「著しく過小評価されている」円の反転上昇までも目指すのか。金融政策や財政政策などの経済政策でも協調する用意があるのか。様々な疑問への答えはこれから徐々に明らかになるのかもしれません。

【補論】円安の再開か、円高への反転か
日米協調介入は円高をもたらしましたが、その持続性には疑問が残ります。日米金利差、金融政策見通しの差、日本の財政悪化懸念(悪い金利上昇)、米国の景気堅調などのファンダメンタルズは引き続き円安の方向性を示唆しています。さすがに当局の腰の入った動きをみれば、すぐに164円に向けて円安が進行するとは考えにくいでしょう。

ただし、円相場が反転して円高に向かうとすれば、以下のような状況が示現した場合でしょう。

1.とにかく日本や米国その他の国が断続的に介入を続け、円売りの投機筋が音(ね)を上げる、そして円キャリートレードが大きく巻き戻されるケースです。もっとも、巨額の為替介入は日本もやりたくないでしょうし、米国からも国際社会からも容認される可能性は低そうです。

2.日銀が積極的な利上げ姿勢を見せるケース。植田総裁も金融政策の正常化を進める意向を鮮明にしています。ベッセント財務長官や市場からビハインド・ザ・カーブとの批判を受け続けるのは避けたいところでしょう。もっとも、日本の中立金利は概ね1.0%~2.5%と推計されており、すでにほぼ到達したか、そうでなくても米国よりもかなり低いとみられます。日銀が短期間で大幅な利上げを実施する、あるいはその意向を明確にするとは考えにくいところでしょう。

3.米景気が急に失速して、利下げ観測が浮上するケース。4-6月期GDPは前期比年率1.5%と弱めでしたが、景気の強さをよく示す民間国内最終需要(個人消費+設備投資+住宅投資)はGDPを3.3%分押し上げました。これは少なくとも24年以降の最大寄与です。ただし、AI・半導体株に変調の兆しがみられるように、AI関連設備投資の採算性に疑念が生じています。株価が大幅に下落すれば、逆資産効果が個人消費を冷やすかもしれません。また、足もとの長期金利の上昇は個人消費や住宅投資にとってマイナスでしょう。<西田>

【注目のイベント】
8月27日    米ジャクソンホール会議(~29日)「金融革新:決済と政策への示唆」
8月31日    G7・G20財務大臣・中央銀行総裁会議(~9月1日、米アッシュビル)
9月7日      米レーバーデー(中間選挙戦本格化)
9月13日    スウェーデン総選挙
11月3日    米中間選挙投票日
11月7日    ニュージーランド総選挙
12月14日  G20サミット(~15日、米マイアミ)

※南アフリカランド/円、ノルウェークローネ/スウェーデンクローナ、米ドル/シンガポールドルについては、デイリーやウィークリーのレポートをご覧ください。

米ドル/円:149.000円~165.000円
BIS(国際決済銀行)の発表する円の実質実効レートでは、95年4月のピークから今年6月のボトムまで年率2.5%で下落するトレンド(直線)を確認することができます。今年6月時点で円の実質実効レートはそのトレンドから7.9%割安でした。仮に、今年6月の米ドル/円(平均160.83円)がトレンドから同じく7.9%割安だとすると(以下も円実効レートを米ドル/円に置き換えています)、トレンドの値は148.17円。その辺りが本邦当局にとって居心地の良い水準なのかもしれません。

円実質実効レートは平均すれば8~9年周期で循環しています。トレンドからのかい離は概ね±15%です。直近で円が割高に振れたのがコロナ・ショック直後の20年5月。そこから9年後、すなわち現在から3年後のトレンドの値は159.57円。その時に円が最も割高(+15%)になっているとすれば、米ドル/円は135.63円と試算できます。

あくまで机上の試算ですが、長めの時間軸で米ドル/円相場を考える際の参考にしていただければ幸いです。<西田>

米ドル/円(週足、2023/7- )

ユーロ/円:175.000円~188.000円
ユーロ/米ドル:1.11000米ドル~1.21000米ドル
ユーロ/英ポンド:0.83000ポンド~0.88000ポンド
ユーロ/円は、4月中旬に187.947円と、99年ユーロ導入以来の高値をつけ、その後も高値圏で推移していました。しかし、7月30-31日に本邦当局が米ドル売り・円買い介入を実施、同31日に米財務省がユーロ売り・円買い介入を実施したことで、一時180円を割り込みました。それでも24年7月のピークを大きく上回っており、ユーロ導入以来の高値圏にある点は大きく変わりません。

ユーロ圏の7月CPIは総合が前年比2.9%、コアが同2.5%と前月(それぞれ2.8%、2.4%)からやや伸びが高まりました。ECBでは、ドイツなどユーロ圏内の中・北部の国出身のメンバーを中心にインフレ抑制を最優先にすべきとの声が根強くあります。ウォーシュFRB議長も同様のコメントを発信していますが、現時点では市場からの信認の差は大きいと言えそうです(ウォーシュFRBは一度も利上げしていない)。

米財務省がユーロ売り・円買いの介入を実施したため、ユーロは対円では下落しましたが、対米ドルでは上昇。「介入による円高=米ドル安」であり、ユーロ/米ドルがそれを反映したためでしょう。ユーロ/米ドルは今後も米ドルの材料を中心に動くかもしれません。

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ユーロ/英ポンドは7月中旬以降に反発していましたが、日米の協調介入を受けて小幅に下落しました。とりわけ、米財務省によるユーロ売り・円買いの介入に素直に反応した可能性があります。英国サイドの材料については、「英ポンド/円 英ポンド/米ドル」の項をご覧ください。<西田>

ユーロ/円(週足、2023/7- )

ユーロ/米ドル(週足、2023/7- )

ユーロ/英ポンド(週足、2023/7- )

英ポンド/円:205.000円~220.000円
英ポンド/米ドル:1.30000米ドル~1.40000米ドル

英ポンド/円はリーマン・ショック前の08年1月以来となる220円の手前まで上昇しましたが、日米協調介入を受けて一時210円近辺まで下落しました。米ドル/円が一段と下落するようであれば、英ポンド/円もそれに引っ張られる可能性があります。

英ポンド/米ドルは、25年春以降に1.30000ドル~1.37500ドルを中心とした比較的狭いレンジで推移しています。6月中旬にスターマー首相が辞意を表明する前後から政治の不透明感を背景に英ポンド/米ドルは下押ししました。その後、政治の空白が長期化することなく、バーナム氏が労働党党首選の勝利(=首相就任)を確実にしたことから新政権への期待が英ポンド/米ドルの上昇要因となったようです。

ただし、7月20日に首相に就任したバーナム氏がサプライズで財務相にヒーリー元国防相を指名したことから、市場は財政赤字拡大への懸念を強めているようです。22年9月に就任したばかりのトラス首相が財源の明確でない大規模減税を発表したことが、株・債券・英ポンドのトリプル安を招いた苦い経験があるからです。バーナム首相は財政規律の順守を標ぼうしていますが、市場が納得する経済運営ができるかどうか、要注目でしょう。<西田>

英ポンド/円(週足、2023/7- )

英ポンド/米ドル(週足、2023/7- )

豪ドル/円:106.000円~115.000円
豪ドル/米ドル:0.65000米ドル~0.73000米ドル
豪ドル/NZドル:1.17000NZドル~1.23000NZドル
RBA(豪中銀)は26年2月・3月・5月と3会合連続でそれぞれ0.25%の利上げを実施。その後、6月の会合では政策金利を4.35%に据え置きました。

RBAは6月の会合以降、「必要なら追加利上げを行う用意がある」と繰り返し表明しています。ただ、RBAは4.35%の政策金利の水準はやや景気抑制的との認識を示しているほか、ブロック総裁は7月28日の講演で、「豪経済は(RBAの)予想どおり減速しており、住宅市場の弱含みは予測以上だ」と述べました。また、「今年実施した3回の利上げの影響が完全にあらわれるまでには、まだ時間がかかる」とも語りました。市場では、RBAの利上げサイクルは終了したとの観測もあります。

OIS(翌日物金利スワップ)に基づくと、7月31日時点で市場が織り込むRBAが追加利上げを行う確率は26年12月末まででほぼ五分五分です。

日銀やECB(欧州中銀)は6月に利上げをしており、今後さらに利上げを行うとみられます。また、FRBやBOE(英中銀)は26年12月末までに利上げを実施するとの見方が市場では優勢です。金融政策面からの豪ドルの優位性は低下する可能性があります。今後RBAによる追加利上げ観測が一段と後退すれば、豪ドル/米ドルや豪ドル/円は軟調に推移しそうです。

豪ドル/円については、日米の為替市場への対応にも注目です。日米当局による為替介入によって米ドル/円が下落すれば、豪ドル/円も引きずられそうです。
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【豪ドル/NZドル】
RBAとRBNZ(NZ中銀)の先行きの金融政策に関する市場の見方を踏まえると、豪ドル/NZドルには下押し圧力が加わりやすいと考えられます(*RBNZの金融政策の詳細はNZドルの項をご参照ください)。<八代>

豪ドル/円(週足、2023/7- )

豪ドル/米ドル(週足、2023/7- )

豪ドル/NZドル(週足、2023/7- )

NZドル/円:88.000円~97.000円
NZドル/米ドル:0.52000米ドル~0.60000米ドル
RBNZ(NZ中銀)は26年7月8日の会合で0.25%の利上げを行うことを決定。政策金利を2.25%から2.50%へと引き上げました。RBNZによる利上げは23年5月以来3年2カ月ぶりです。

RBNZは7月会合での声明で「インフレ率を目標中間値の2%に戻すためには、金融緩和策のさらなる縮小が必要になる可能性が高い」と表明。追加利上げを示唆しました。

OIS(翌日物金利スワップ)に基づくと、市場ではRBNZは次回9月2日の会合で0.25%の追加利上げを行い、10月か12月のいずれかの会合でさらに0.25%の利上げをするとの見方が有力です(7/31時点)。

RBNZが今後、市場の見通しどおりに、あるいはそれ以上に利上げを行えば、金融政策面からNZドルはサポートされやすいと考えられます。ただし、NZドル/米ドルについては、FRBが利上げを実施し、先行きの追加利上げ観測が強まるようであれば、伸び悩む可能性があります。

NZドル/円については、日米の為替市場への対応にも注目です。日米当局による為替介入によって米ドル/円が下落すれば、NZドル/円も引きずられそうです。

NZでは11月7日に総選挙が行われる予定です。ラクソン首相が率いる連立政権(国民党・ACT党・NZファースト党)が引き続き政権を維持できるかが焦点になりそうです。総選挙の結果次第では相場材料になる可能性があります。<八代>

NZドル/円(週足、2023/7- )

NZドル/米ドル(週足、2023/7- )

カナダドル/円:108.000円~118.000円
米ドル/カナダドル:1.37000カナダドル~1.45000カナダドル
BOC(カナダ中銀)は25年10月に利上げを実施し、その後26年7月まで6会合連続で政策金利を2.25%に据え置いています。

BOCのマックレム総裁は26年7月1日の会合後の会見で、「現在の政策金利(の水準)は、景気回復を持続し、インフレ率を目標の2%に戻すのに適切だ」との認識を示す一方、不確実性は依然として高いとし、「必要に応じて金融政策を調整する用意がある」と述べました。

市場では、BOCの次の一手は利上げになると予想されており、早ければ26年12月に利上げが行われるとの観測があります。FRBについては、12月末までに1~2回の利上げを実施すると予想されています。中銀の先行きの金融政策に関する市場の見方を踏まえると、米ドル/カナダドルは底堅い展開になりそうです。

原油価格が大きく変動するようであれば、その動向も相場材料になるかもしれません。カナダドルにとって原油価格の上昇はプラス、下落はマイナスです。

トランプ米政権は7月20日、カナダからの輸入品に対して50%の追加関税を課すと表明しました。新たな関税は8月19日に発動される予定。USTR(米通商代表部)によると、約200億米ドル相当が新たな関税の対象となるとのこと(カナダからの輸入総額の約5%に相当)。実際に関税が発動されるのか注目されます。発動が見送られるようであれば、カナダドルにとってのプラス材料になる可能性があります。

カナダドル/円に関しては、他の対円の通貨ペアと同様、日米当局による為替介入によって米ドル/円が下落すれば、カナダドル/円も引きずられると考えられます。<八代>

カナダドル/円(週足、2023/7- )

米ドル/カナダドル(週足、2023/7- )

トルコリラ/円:3.000円~4.000円
トルコリラは対米ドルで最安値(米ドル/トルコリラは最高値)を更新し続けています。トルコリラ安の背景には、トルコのインフレ率が依然として高いことなどが挙げられます。同国の26年6月CPI(消費者物価指数)は前年比32.11%でした。

一方、対円に関しては対米ドルと比べれば比較的落ち着いた値動きになっていました。その主な要因として、米ドル/円が堅調に推移していたことが挙げられます。トルコリラ/円のレートは、「米ドル/円÷米ドル/トルコリラ」で算出されます。

ただ、本邦当局は7月30日に米ドル売り・円買い介入を実施したとみられ、翌31日には日米の当局が協調して円買い介入を行ったことが明らかになりました。米ドル/円が今後軟調に推移すれば、トルコリラ/円も軟調に推移すると考えられます。

トルコリラが対米ドルで下げ止まる条件として、トルコのインフレ率が持続的に低下していくことが挙げられます。 TCMB(トルコ中銀)は25年12月に利下げを実施し、その後は26年7月まで4会合連続で政策金利を37.00%に据え置いています。TCMBは26年7月会合の声明で「ディスインフレの道筋に必要な引き締め度合いを確保するように政策金利を決定する」、「インフレ見通しが顕著かつ持続的に悪化した場合、金融政策スタンスを引き締める」との方針を改めて示しました。<八代>

トルコリラ/円(週足、2023/7- )

メキシコペソ/円:8.500円~10.000円
BOM(メキシコ中銀)は26年6月の会合で政策金利を6.50%に据え置くことを決定。その会合の声明では「政策金利は今後も現行水準を維持することが適切だ」と改めて表明され、24年3月に開始された利下げサイクルの終了が示唆されました。

市場では、BOMの政策金利は少なくとも26年12月末まで据え置かれるとの見方が有力です。日銀は12月末までに0.25%の追加利上げを実施すると市場は予想しています。ただ、日銀が追加利上げを行ったとしても、BOMとの政策金利の差は依然として大きく、メキシコペソ/円は金融政策面からサポートされやすいとみられます。

原油価格に大きな変動があれば、それにメキシコペソ/円が反応する可能性があります。メキシコペソにとって原油価格の上昇はプラス、下落はマイナスになると考えられます。

他の対円の通貨ペアと同様、日米の当局による為替介入によって米ドル/円が下落すれば、メキシコペソ/円も引きずられそうです。<八代>

メキシコペソ/円(週足、2023/7- )


今週の主要経済指標・イベント

西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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  • 当レポートに記載する相場見通しや売買戦略は、ファンダメンタルズ分析やテクニカル分析などを用いた執筆者個人の判断に基づくものであり、予告なく変更になる場合があります。また、相場の行方を保証するものではありません。お取引はご自身で判断いただきますようお願いいたします。
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