FOMC議事録:利下げペースを遅らせる段階に。「トランプ2.0」も考慮!?
2025/01/09 06:55
【ポイント】
・昨年12月の利下げは際どい判断。据え置きのメリットも指摘
・政策金利は中立水準に接近との判断
・インフレのリスクは上振れ、目標達成まで時間がかかる可能性も
・トランプ次期政権の政策変更の影響も一部で考慮
米FOMC議事録(12/17-18開催分)によれば、当該FOMCでの0.25%利下げは際どい判断であり、先行きの利下げについて、それまで以上に慎重に判断すべきとの見方が支配的でした。それらの点はFOMC後の会見でパウエル議長が明らかにしていましたが、議事録で改めて確認されました。
FOMCでは「インフレの上振れリスクが増えた」との判断が示されており、10日の12月雇用統計を含めて今後のデータ次第では利下げ観測が一段と後退する可能性があります。
8日時点のOIS(翌日物金利スワップ)が織り込む0.25%利下げの確率(当該FOMCまで)は以下の通り。
1月29日5%、3月19日41%、5月7日59%、6月18日98%
ここもと米長期金利(10年物国債利回り)は上昇基調にあり、議事録公表前には昨年4月のピークにほぼ並ぶ4.73%をつけました。23年10月につけた5.00%も視野に入りつつあり、長期金利が上昇を続けるならば、米ドルにとってプラス材料になりそうです。
■12月19日付け「米FOMCはタカ派的利下げ、米ドル/円と長期金利は上昇」をご覧ください。
なお、9日に発表された昨年12月のADP雇用統計は前月比12.2万人増と、市場予想(14.0万人増)を下回りました。一方で、先週の新規失業保険申請件数は20.1万件と市場予想(21.5万件)を下回り、昨年2月中旬以来の低水準でした。
もっとも、月々のADPと(米労働省の)雇用統計は大きくかい離することもあります。また、新規失業保険申請件数は雇用統計の調査期間(主に12月6-18日)より後のデータです。10日発表の雇用統計(NFPの市場予想は16.5万人増)の参考にはあまりならないでしょう。
*******
議事録のなかで、注目されたのは以下の通り。
インフレの上振れリスクが増えたと判断されました。足もとのインフレについては、FRBが重視するコアサービス(住居費を除く)も含めて「物価安定」に近づいていると指摘されました。ただし、先行きについては、ほぼ全ての参加者が上振れリスクが増えたと判断。その根拠として、個人消費の強さ、金融情勢の緩和(主に株高のこと)、足もとのインフレ率鈍化の足踏み、通商や移民政策の影響、地政学リスクの高まりに伴うサプライチェーン障害の可能性などが挙げられました。
利下げは際どい判断でした。「過半数」の参加者は微妙な判断だと指摘。「数人」は据え置きにもメリットがあると述べました。そのうち「何人か」は金融情勢を適切に保つ(過度な株高を抑制する)必要があると指摘しました。当該FOMCでは、12人の投票メンバーのうちハマック・クリーブランド連銀総裁が据え置きを主張して利下げに反対しました。また、「ドット・プロット」によれば、FOMC参加者全19人のうち4人が据え置きに賛成だったことが明らかになっています。
利下げのペースを落とす時期に来たか、少なくともその時期に近づいていると判断されました。9月以降の100bp(ベーシスポイント=1/100%)の利下げによって、政策金利は中立水準に「かなり接近した」との見方がありました。そして、大部分の参加者はこれまでの利下げの効果を見極める時間的余裕があると考えたようです。
「トランプ2.0」の影響も一部で考慮されました。インフレの上振れリスクに関して、通商政策と移民政策の「潜在的な変更」が、従来の想定以上に物価目標実現のプロセスが長引く一因となり得ると指摘されました。
一部のFOMC参加者は、トランプ次期政権の政策を見通しの「仮の前提」としていました。また、規制緩和や減税の可能性によって企業の見通しが総じて楽観的になったとの指摘や、一方で潜在的な政策変更が見通しの不透明性を高めているとの指摘もありました。
・昨年12月の利下げは際どい判断。据え置きのメリットも指摘
・政策金利は中立水準に接近との判断
・インフレのリスクは上振れ、目標達成まで時間がかかる可能性も
・トランプ次期政権の政策変更の影響も一部で考慮
米FOMC議事録(12/17-18開催分)によれば、当該FOMCでの0.25%利下げは際どい判断であり、先行きの利下げについて、それまで以上に慎重に判断すべきとの見方が支配的でした。それらの点はFOMC後の会見でパウエル議長が明らかにしていましたが、議事録で改めて確認されました。
FOMCでは「インフレの上振れリスクが増えた」との判断が示されており、10日の12月雇用統計を含めて今後のデータ次第では利下げ観測が一段と後退する可能性があります。
8日時点のOIS(翌日物金利スワップ)が織り込む0.25%利下げの確率(当該FOMCまで)は以下の通り。
1月29日5%、3月19日41%、5月7日59%、6月18日98%
ここもと米長期金利(10年物国債利回り)は上昇基調にあり、議事録公表前には昨年4月のピークにほぼ並ぶ4.73%をつけました。23年10月につけた5.00%も視野に入りつつあり、長期金利が上昇を続けるならば、米ドルにとってプラス材料になりそうです。
■12月19日付け「米FOMCはタカ派的利下げ、米ドル/円と長期金利は上昇」をご覧ください。
なお、9日に発表された昨年12月のADP雇用統計は前月比12.2万人増と、市場予想(14.0万人増)を下回りました。一方で、先週の新規失業保険申請件数は20.1万件と市場予想(21.5万件)を下回り、昨年2月中旬以来の低水準でした。
もっとも、月々のADPと(米労働省の)雇用統計は大きくかい離することもあります。また、新規失業保険申請件数は雇用統計の調査期間(主に12月6-18日)より後のデータです。10日発表の雇用統計(NFPの市場予想は16.5万人増)の参考にはあまりならないでしょう。
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議事録のなかで、注目されたのは以下の通り。
インフレの上振れリスクが増えたと判断されました。足もとのインフレについては、FRBが重視するコアサービス(住居費を除く)も含めて「物価安定」に近づいていると指摘されました。ただし、先行きについては、ほぼ全ての参加者が上振れリスクが増えたと判断。その根拠として、個人消費の強さ、金融情勢の緩和(主に株高のこと)、足もとのインフレ率鈍化の足踏み、通商や移民政策の影響、地政学リスクの高まりに伴うサプライチェーン障害の可能性などが挙げられました。
利下げは際どい判断でした。「過半数」の参加者は微妙な判断だと指摘。「数人」は据え置きにもメリットがあると述べました。そのうち「何人か」は金融情勢を適切に保つ(過度な株高を抑制する)必要があると指摘しました。当該FOMCでは、12人の投票メンバーのうちハマック・クリーブランド連銀総裁が据え置きを主張して利下げに反対しました。また、「ドット・プロット」によれば、FOMC参加者全19人のうち4人が据え置きに賛成だったことが明らかになっています。
利下げのペースを落とす時期に来たか、少なくともその時期に近づいていると判断されました。9月以降の100bp(ベーシスポイント=1/100%)の利下げによって、政策金利は中立水準に「かなり接近した」との見方がありました。そして、大部分の参加者はこれまでの利下げの効果を見極める時間的余裕があると考えたようです。
「トランプ2.0」の影響も一部で考慮されました。インフレの上振れリスクに関して、通商政策と移民政策の「潜在的な変更」が、従来の想定以上に物価目標実現のプロセスが長引く一因となり得ると指摘されました。
一部のFOMC参加者は、トランプ次期政権の政策を見通しの「仮の前提」としていました。また、規制緩和や減税の可能性によって企業の見通しが総じて楽観的になったとの指摘や、一方で潜在的な政策変更が見通しの不透明性を高めているとの指摘もありました。
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