中東の紛争と原油価格の歴史
2023/10/10 09:01
【ポイント】
・第4次中東戦争とイラン革命が2度の石油ショックを引き起こした
・90年湾岸危機では原油価格急騰も短期間で反落
・11年アラブの春ではリビアなどの生産減で原油価格高止まり
・イスラエルとハマスの戦闘がイランなど産油国に波及しないか要注意
原油価格は中東情勢に大きく影響されてきました。先週からイスラエルとハマス(+ヒズボラ)の激しい戦闘が続いており、原油価格に上昇圧力が加わっています。今のところ、イランの関与が疑われるものの、産油国に直接影響が及んでいるわけではありません。
また、近年の原油価格は、かつてのように実需(≒世界経済)と産油国の供給のバランスだけでなく、投資対象として世界的な金融緩和によるマネーフローの影響を大きく受けているとの印象です。主要中銀がアグレッシブな利上げを実施し高金利を維持している現状において、原油価格が急騰する姿は想像しにくいところです。
ただし、イスラエル政府が米シェブロンの操業する東地中海の大型ガス田の生産停止を指示するなど、エネルギー関連で影響は出てくるかもしれません。今後、戦闘がイランなど産油国に波及しないか注意は必要でしょう。
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以下では中東の紛争と原油価格の歴史を振り返っておきます。
73年10月に勃発した第4次中東戦争ではOPEC(石油輸出国機構)がイスラエル支援国に対して禁輸措置を採り、原油価格はそれまでの1バレル=2-3ドルから同10-12ドルまで上昇、第1次石油ショックを引き起こしました。79年にはイラン革命が起こり、80年にイラン・イラク戦争もあったため、原油価格は30-40ドルまで上昇、第2次石油ショックを招きました。

86年にはサウジアラビアが市場シェア拡大を狙って原油を増産したため(いわゆるオイル・グラット)、原油価格は急落しました。
90年8月にはイラクがクウェートに侵攻して湾岸危機が発生。原油価格は約2倍(20ドル⇒40ドル)に急騰しました。ただ、米国がリセッション(景気後退)入りしたこともあって、多国籍軍によるイラク攻撃(湾岸戦争)が開始された91年1月には危機前の水準である20ドル前後まで下落しました。
01年のIT株バブル崩壊を受けて、米FRBが積極的な金融緩和を進めたため、住宅バブルが発生。過剰な流動性は原油市場にも流入、産油国の生産設備の老朽化による供給能力の低下もあって、原油価格は08年7月に一時147ドル台をつけました。その後はリーマン・ショックにより急落。
09年後半に世界経済が回復すると原油価格も上昇に転じました。そして、11年には「アラブの春」が起き、リビアの原油生産が減少。リーマン・ショック後の世界的な金融緩和の継続もあって2010年代前半の原油価格は100ドル前後で推移しました。
14年後半以降、世界経済が減速する一方で、非OPECが原油を増産したことで、原油価格は大幅に下落。20年春にはコロナ・ショックで一時急落しました。その後は世界的な金融緩和のもとで原油価格が100ドルを超える場面もありましたが、22年春ごろからの主要中銀のアグレッシブな利上げにより60ドル台まで下落。足もとでは80ドル台で推移しています。
・第4次中東戦争とイラン革命が2度の石油ショックを引き起こした
・90年湾岸危機では原油価格急騰も短期間で反落
・11年アラブの春ではリビアなどの生産減で原油価格高止まり
・イスラエルとハマスの戦闘がイランなど産油国に波及しないか要注意
原油価格は中東情勢に大きく影響されてきました。先週からイスラエルとハマス(+ヒズボラ)の激しい戦闘が続いており、原油価格に上昇圧力が加わっています。今のところ、イランの関与が疑われるものの、産油国に直接影響が及んでいるわけではありません。
また、近年の原油価格は、かつてのように実需(≒世界経済)と産油国の供給のバランスだけでなく、投資対象として世界的な金融緩和によるマネーフローの影響を大きく受けているとの印象です。主要中銀がアグレッシブな利上げを実施し高金利を維持している現状において、原油価格が急騰する姿は想像しにくいところです。
ただし、イスラエル政府が米シェブロンの操業する東地中海の大型ガス田の生産停止を指示するなど、エネルギー関連で影響は出てくるかもしれません。今後、戦闘がイランなど産油国に波及しないか注意は必要でしょう。
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以下では中東の紛争と原油価格の歴史を振り返っておきます。
73年10月に勃発した第4次中東戦争ではOPEC(石油輸出国機構)がイスラエル支援国に対して禁輸措置を採り、原油価格はそれまでの1バレル=2-3ドルから同10-12ドルまで上昇、第1次石油ショックを引き起こしました。79年にはイラン革命が起こり、80年にイラン・イラク戦争もあったため、原油価格は30-40ドルまで上昇、第2次石油ショックを招きました。

86年にはサウジアラビアが市場シェア拡大を狙って原油を増産したため(いわゆるオイル・グラット)、原油価格は急落しました。
90年8月にはイラクがクウェートに侵攻して湾岸危機が発生。原油価格は約2倍(20ドル⇒40ドル)に急騰しました。ただ、米国がリセッション(景気後退)入りしたこともあって、多国籍軍によるイラク攻撃(湾岸戦争)が開始された91年1月には危機前の水準である20ドル前後まで下落しました。
01年のIT株バブル崩壊を受けて、米FRBが積極的な金融緩和を進めたため、住宅バブルが発生。過剰な流動性は原油市場にも流入、産油国の生産設備の老朽化による供給能力の低下もあって、原油価格は08年7月に一時147ドル台をつけました。その後はリーマン・ショックにより急落。
09年後半に世界経済が回復すると原油価格も上昇に転じました。そして、11年には「アラブの春」が起き、リビアの原油生産が減少。リーマン・ショック後の世界的な金融緩和の継続もあって2010年代前半の原油価格は100ドル前後で推移しました。
14年後半以降、世界経済が減速する一方で、非OPECが原油を増産したことで、原油価格は大幅に下落。20年春にはコロナ・ショックで一時急落しました。その後は世界的な金融緩和のもとで原油価格が100ドルを超える場面もありましたが、22年春ごろからの主要中銀のアグレッシブな利上げにより60ドル台まで下落。足もとでは80ドル台で推移しています。
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