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米雇用統計はやや弱めで、米ドル/円に下押し圧力!?

2024/09/07 06:49

【ポイント】
・8月NFPが市場予想を下回る一方、失業率は0.1ポイント低下
・ウォラーFRB理事は9月利下げを「予告」、0.50%も検討?
・次なる注目は11日発表の8月CPI

米国の8月雇用統計はやや弱め。雇用統計を受けてFRBのウォラー理事が9月利下げを「予告」したこともあって、米ドル/円は一時141.709円まで下落。ただ、その後は過度な利下げ期待が後退し、米ドル/円は142円台に戻りました。

■6日付けM2TVグローバルView(YouTube)「米国は景気後退? 金利と米ドル/円」もぜひご覧ください。

9月の0.50%利下げの確率が5割になったとの報道もありましたが、(日本時間7日06:00時点の)FedWatchによれば0.50%の利下げ確率は31%と前日の40%から低下しました。

9月の利下げ幅やその後の利下げペースに関する観測(※)は、今後もデータ次第で変化するでしょう。目先は11日発表の8月CPIに注目です。

※上述のように、9月の0.50%利下げの観測はやや後退しました。一方で、OIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、6日時点で市場が織り込む25年7月までの利下げ幅は2.33%と、前日の2.17%から拡大しました。

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8月雇用統計では、事業所調査のNFP(非農業部門雇用者数)は前月比14.2万人増と、市場予想(16.5万人増)を下回りました。また、6-7月分は計8.6万人下方修正されました。7月分は11.4万人増から8.9万人増に修正されましたが、雇用の伸びが10万人を下回ったのはコロナ禍の20年12月以来初めてでした。過去3カ月の平均は11.6万人増/月で、これは20年6月以来の低い伸びでした。コロナ・ショック前の17-19年の雇用増加ペース17.7万人増/月も下回りました。

NFP

時間当たり賃金は前年比3.8%増で前月(3.6%)から加速、引き続きインフレ率(7月PCEコアは前年比2.6%)を上回りました(=実質賃金の伸びはプラス)。また、<雇用者数×週平均労働時間×時間当たり賃金>で求められる総賃金指数は前年比5.0%増で前月(4.8%)から加速しました。週平均労働時間が0.3%伸びたことが影響しました(7月のハリケーンの反動?)。

時間賃金

総賃金

家計調査に基づく失業率は4.2%と前月の4.3%から低下。ただし、少数点以下2ケタまでみると、8月の失業率は4.22%で、7月の4.25%と大差はありません。労働参加率<(雇用者数+失業者数)/生産年齢人口>は62.7%で前月と同じ。労働参加率は昨年後半以降ほぼ横ばいで推移しており、ピークは62.8%です。コロナ・ショック後の回復(上昇)段階は終了したのかもしれません。

失業率

労働参加率

■24年3月の雇用水準は81.8万人の下方修正
8月21日に発表された米雇用統計の改定(暫定値)によれば、24年3月時点のNFP(非農業部門雇用者数)の水準が81.8万人下方修正されました。24年3月まで1年間の雇用増加幅は改定前で290万人でしたが、改定後はそれが200万人近くまで修正されることになります。月平均24.2万人増⇒約17万人増。それでも悪いペースではありませんが、当初のデータが示すほど力強いペースではなかったということ。

ただし、今回8月のデータに改定の結果は反映されません。全体像が明らかになるには、25年2月の年次改定まで待つ必要があります。昨年の改定(暫定値)では23年3月のNFP水準が30.6万人下方修正されましたが、年次改定では26.6万人の下方修正となっており、23年1年間の雇用増加幅は逆に269.7万人⇒305.6万人に上方修正されました。

詳細は以下をご覧ください。
■8月21日付け「米雇用統計改定レビュー:雇用はそんなに強くなかった??
■8月22日付け「FOMC議事録と雇用統計改定、パウエル議長は何を語る??

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ウォラーFRB理事は雇用統計発表後の講演で、労働市場が一段と軟化するリスクが高まっているとして、「足もとの一連の経済指標は、(利下げを我慢する)忍耐ではなく、行動を求めている」と述べました。そのうえで理事は、「次の会合(9月17-18日のFOMC)で利下げのプロセスを開始するのが重要だ」と明言しました。

また、ウォラー理事は「一連の利下げ」が適切となる可能性が高いとし、利下げ幅やペースに関して幅広く検討する姿勢を示しました。次回FOMCで0.50%幅の利下げを支持するかもしれません。
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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