CPIで米ドルが全面高、米ドル/円は34年ぶり高値
2024/04/11 09:20
【ポイント】
・PPIなどの米経済指標でFRBの利下げ観測がさらに後退するか
・米ドル/円が上昇する場合の本邦当局の対応
・ECBの声明や総裁会見で6月の利下げ観測が補強されるか
(欧米市場レビュー)
10日の欧米時間の外為市場では、米ドルが全面高の展開。米ドル/円は一時153.191円へと上昇して90年6月以来およそ34年ぶりの高値を記録。米ドル/カナダドルは1.36983カナダドルへと上昇し、ユーロ/米ドルは1.07273ドル、英ポンド/米ドルは1.25182ドルへと下落しました。米国の3月CPI(消費者物価指数)が市場予想を上回る結果になったことでFRB(米連邦準備制度理事会)の利下げ観測が後退し、米ドル高材料となりました。CPIの結果は、総合指数が前年比3.5%、変動の大きい食品やエネルギーを除いたコア指数が同3.8%。市場予想はそれぞれ3.4%と3.7%でした。
※米CPIについては、10日の『ファンダメ・ポイント』[【速報】米CPIは上振れ、7月FOMCの利下げも微妙に⁉]にて解説していますので、ご覧ください。
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BOC(カナダ中銀)は政策金利を5.00%に据え置くことを決定しました。据え置きは6会合連続です。
BOCは声明で、「(カナダの)インフレ率は依然として高過ぎ、リスクは残っている」としつつも、「(総合の)CPI上昇率とコアインフレ率はここ数カ月間でさらに鈍化している」と指摘。「理事会はこの鈍化のモメンタムが持続していることを示す証拠を探している」としました。
マックレムBOC総裁は会合後の会見で、「会合では、いつ利下げするかについて議論したが、(今回の会合で)政策金利を据え置くことについて明確なコンセンサスがあった」と述べました。「1月以降の経済指標に理事会は勇気づけられているが、物価安定に向けた進展が持続すると確信するためには、さらに時間が必要だ」と指摘。そのうえで、「インフレ率が(目標の)2%に確実に向かっていると確信できれば、利下げを行うのが適切だ」と語りました。6月の会合について質問されると、マックレム総裁は「利下げする可能性はある」と答えました。
BOCの次回政策会合は6月5日。それまでにカナダのCPIは2回発表されます(4/16に3月分、5/21に4月分)。それらの結果が会合における重要な政策判断材料になりそうです。
(本日の相場見通し)
米国のCPIの強い結果を受けて市場ではFRB(米連邦準備制度理事会)の利下げ観測が後退しました。CMEのFedWatchツールによると、本稿執筆時点で市場が織り込む利下げの確率は、次回4月30日-5月1日のFOMC(米連邦公開市場委員会)で3.1%、6月11-12日までで19%、7月30-31日までで44%程度。9日時点の確率はそれぞれ、2.3%、57%程度、75%程度でした。
本日は、米国の3月PPI(生産者物価指数)や先週分の新規失業保険申請件数が発表されます。
市場予想は以下の通り。( )は前回の実績です。
・PPI:前年比2.2%(1.6%)
・コアPPI:前年比2.3%(2.0%)
・新規失業保険申請件数:21.5万件(22.1万件)
PPIや新規失業保険申請件数が市場予想よりも強い結果になれば、FRBの利下げ観測は一段と後退しそうです。その場合には米ドルが堅調に推移して、米ドル/円や米ドル/カナダドルには上昇圧力が、ユーロ/米ドルや英ポンド/米ドルには下落圧力が加わると考えられます。米ドル/カナダドルは、1.37714カナダドル(23/11/16高値)が目先の上値メドです。
神田財務官は本日午前8時過ぎ、足もとの円安(米ドル/円の上昇)について「過度な為替変動は国民経済に悪影響を与える」、「行き過ぎた動きにはあらゆる手段を排除せず適切な対応をとる」と述べ、市場をけん制しました。神田財務官は一方で、「(為替介入について)特定の水準を念頭に判断していない」とし、現在の為替変動は過度か?との質問には「総合的に判断しているので申し上げられない」と答えました。
米ドル/円が上昇する場合の本邦当局の対応(為替介入を実施するかどうか)に注目です。
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ECB(欧州中銀)理事会が本日開かれます。理事会の結果は日本時間21時15分に発表され、同21時45分からラガルド総裁が会見します。
ECBは23年9月に利上げを行った後、前回24年3月まで5会合連続で政策金利を据え置きました。政策金利は今回も据え置かれそうです。
ECBの声明やラガルド総裁の会見にも注目です。市場ではECBは6月6日の理事会で利下げを行うとの見方が有力です(5月は理事会なし)。声明やラガルド総裁の会見がその見方を補強する内容になれば、ユーロが軟調に推移しそうです。ユーロ/英ポンドは、0.84932ポンド(2/13安値)が下値メドです。
※ユーロ/円のテクニカル分析は、本日の『テクニカル・ポイント』[ユーロ/円、ラガルド総裁会見内容が相場動意となるか]をご覧ください(マイページへのログインが必要です)。
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