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「150円、5.0%の壁」を超えた。これからどうなる?

2023/10/26 07:27

【ポイント】
・米ドル/円は150円台、米長期金利は5%台を示現
・「過度の変動」はなく、本邦当局による円買い介入はなさそう
・米長期金利は国債需給の悪化から上昇圧力を受けそう

23日配信のウィークリー・アウトルックのタイトルは「150円、5.0%の壁!?」でした。米ドル/円は日本時間26日午前5時30分ごろに150.274円をつけた後も150円台で推移しています(同7時30分現在)。米長期金利(10年物国債利回り)は一足早く23日のロンドン時間に5.02%をつけた後に4.80%近辺まで低下したものの、25日には4.96%と再び5%に接近しています。

米ドル/円も米長期金利も大台目前で足踏みしていたので、それを超えてくるのは時間の問題だったかもしれません。では今後どうなるでしょうか。

本邦当局の円買い介入はない!?
10月3日に米ドル/円が150円を超えた時はすぐに147円台ミドルまで反落。実際の円買い介入があったかどうかは不明ですが(※)、市場の介入警戒感は根強くあります。

(※)財務省が10月31日午後7時に公表する「外国為替平衡操作の実施状況」の10月分で実施の有無が明らかになります。

もっとも、鈴木財務相や神田財務官は「水準」ではなく「過度の変動」が問題だと繰り返しています。単に150円台に乗ったというだけでは介入に踏み切らないでしょう。円の対米ドルでの過去1カ月のヒストリカル・ボラティリティ(実現変動率)は過去1年間で最低水準にあり、Bloombergの「主要16通貨」のなかで、米ドルとの連動性が高いと考えられるシンガポールドル、台湾ドルに次いで下から3番目でした。また、過去1週間のヒストリカル・ボラティリティは16通貨中で最低でした。さすがに「過度の変動」とは言えないでしょう。

日本の長期金利は23日に0.88%をつけ、7月末のYCC(イールドカーブ・コントロール)修正から0.43%上昇しました。一方で、米長期金利は同じ期間に4%近辺から5%近辺まで約1%上昇しています。日米長期金利差(日<米)は拡大しています。また、日米政策金利差は5%超あり、今後その差は拡大しないとしてもすぐに縮小する状況ではありません。したがって、米ドル/円の上昇、そして150円台示現はあくまでファンダメンタルズを反映していると判断できます。仮に、米ドル/円が一気に151円、あるいは152円を目指すような展開となれば、その時こそ本邦当局による円買い介入が現実味を帯びそうです。

米長期金利は「悪い金利上昇」もあり⁉
25日に実施された米5年物国債入札は不調に終わり、その結果を受けて長期金利が上昇しました。ここのところ、国債入札が不調に終わるケースが増えています。23年度の財政赤字が前年から倍増するなど、国債需給の悪化が意識されています。いわゆる「悪い金利上昇」の要素が強まっています。FRBがQT(量的引き締め)を粛々と続けていることも需給悪化要因です。

「悪い金利上昇」は中長期的にみれば、財政規律への信認低下を通じた通貨安要因です。ただ、米長期金利が5%を超えて上昇を続ければ、短期的には金利面に着目した米ドル買い材料となりそうです。

■25日付け「米財政赤字倍増、長期金利5%は悪い金利上昇も⁉」をご参照ください。なお、25日に下院議長にトランプ派のジョンソン議長が選出されました。ただ、議会、とりわけ下院は、共和党対民主党、あるいは共和党内の穏健派対保守強硬派の対立が続きそうです。
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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