米財政赤字倍増、長期金利5%は「悪い金利上昇」も⁉
2023/10/25 08:26
【ポイント】
・23年度の米財政赤字は前年から倍増
・FRBは保有国債を毎月650億ドル削減
・長期金利5%到達には「悪い金利上昇」も
・追記:下院議長選とUAWストライキ
今年9月に終わった米国の23年度財政収支は1兆6,952億ドルと、22年度の1兆3,755億ドルから増加。バイデン政権が導入した学生ローン返済免除プログラムは最高裁に違憲と判断されており、その影響を除くと財政赤字は22年度の1兆ドルから23年度の2兆200億ドルに倍増したとのこと。財政赤字削減を求める共和党からの圧力は一段と強まりそうです。
財政赤字拡大の主な要因は以下の通り。
・22年に株価や債券価格が大きく下落したため、個人の所得が影響を受けて、所得税の税収が大きく減少したこと
・社会保障給付などの政府支出がインフレ調整(COLA)条項によって増加したこと
・金利上昇によって国債の利払いが増加したこと
・長短金利の逆転により、FRBが受け取る金利収入より、市中銀行がFRBに預ける準備預金の支払いが増えたこと(そのため、政府への上納金が減少した)
10月1日に始まった24年度は、支出を抑制した継続(つなぎ)予算が成立しています。ただし、バイデン政権は、ウクライナやイスラエルへの支援、メキシコ国境での警備強化などの約1,000億ドルの緊急予算を議会に要請しており、支出は増加する方向です。
「財政赤字拡大=ネット国債発行増」ですが、加えてFRBが保有国債を毎月600億ドル削減しており(住宅ローン担保証券も350億ドル削減)、市場が消化しなければならない国債の供給は増加しています。23日には長期金利(10年物国債利回り)が16年ぶりの5.02%をつけました。長期金利の上昇は、FRBが政策金利を長期間高い水準で維持するとの観測も一因でしょうが、国債供給の増加による「悪い金利上昇」の要素もありそうです。
難航する下院議長の選出
財政赤字に対する懸念が強まるなか、議会の機能不全が続いています。マッカーシー下院議長解任後の後任選びが難航しています。24日には5回の非公開投票の結果、3人目の後任候補として下院共和党ナンバー3のエマー議員が選出されました。
ただし、エマー議員の得票は共和党222票のうち117票。議長に就任するためには民主党を含めた全下院議員435票のうち過半数を獲得する必要があります。したがって、民主党の協力がなければ、エマー氏の下院議長就任は不可能です。仮に、民主党から必要数の票を得るとすれば、その場合は共和党保守強硬派グループが強く反発することになりそうです。
上述したウクライナやイスラエルの支援、そして11月17日の継続予算失効後の予算措置など、喫緊の課題が山積しているだけに、議会の機能不全は経済や金融市場にとって大きなリスク要因となりうるでしょう。
UAWのストライキは拡大
UAW(全米自動車労組)は、23日にステランティスの工場で6,800人、24日にGMの工場で5,000人がストライキを始めました。9月15日に1.3万人でスタートしたストライキは4.5万人、UAW組合員の30%に増えています。3大メーカーによるレイオフ(一時解雇)を含めると、少なくとも5万人の雇用に影響が出ています。
フォードを含む3大メーカーは、UAWに対して最新のオファーで4年間23%の賃上げを提示していましたが、公式に36%を要求しているUAWはこれを拒否した格好です。
・23年度の米財政赤字は前年から倍増
・FRBは保有国債を毎月650億ドル削減
・長期金利5%到達には「悪い金利上昇」も
・追記:下院議長選とUAWストライキ
今年9月に終わった米国の23年度財政収支は1兆6,952億ドルと、22年度の1兆3,755億ドルから増加。バイデン政権が導入した学生ローン返済免除プログラムは最高裁に違憲と判断されており、その影響を除くと財政赤字は22年度の1兆ドルから23年度の2兆200億ドルに倍増したとのこと。財政赤字削減を求める共和党からの圧力は一段と強まりそうです。
財政赤字拡大の主な要因は以下の通り。
・22年に株価や債券価格が大きく下落したため、個人の所得が影響を受けて、所得税の税収が大きく減少したこと
・社会保障給付などの政府支出がインフレ調整(COLA)条項によって増加したこと
・金利上昇によって国債の利払いが増加したこと
・長短金利の逆転により、FRBが受け取る金利収入より、市中銀行がFRBに預ける準備預金の支払いが増えたこと(そのため、政府への上納金が減少した)
10月1日に始まった24年度は、支出を抑制した継続(つなぎ)予算が成立しています。ただし、バイデン政権は、ウクライナやイスラエルへの支援、メキシコ国境での警備強化などの約1,000億ドルの緊急予算を議会に要請しており、支出は増加する方向です。
「財政赤字拡大=ネット国債発行増」ですが、加えてFRBが保有国債を毎月600億ドル削減しており(住宅ローン担保証券も350億ドル削減)、市場が消化しなければならない国債の供給は増加しています。23日には長期金利(10年物国債利回り)が16年ぶりの5.02%をつけました。長期金利の上昇は、FRBが政策金利を長期間高い水準で維持するとの観測も一因でしょうが、国債供給の増加による「悪い金利上昇」の要素もありそうです。
難航する下院議長の選出
財政赤字に対する懸念が強まるなか、議会の機能不全が続いています。マッカーシー下院議長解任後の後任選びが難航しています。24日には5回の非公開投票の結果、3人目の後任候補として下院共和党ナンバー3のエマー議員が選出されました。
ただし、エマー議員の得票は共和党222票のうち117票。議長に就任するためには民主党を含めた全下院議員435票のうち過半数を獲得する必要があります。したがって、民主党の協力がなければ、エマー氏の下院議長就任は不可能です。仮に、民主党から必要数の票を得るとすれば、その場合は共和党保守強硬派グループが強く反発することになりそうです。
上述したウクライナやイスラエルの支援、そして11月17日の継続予算失効後の予算措置など、喫緊の課題が山積しているだけに、議会の機能不全は経済や金融市場にとって大きなリスク要因となりうるでしょう。
UAWのストライキは拡大
UAW(全米自動車労組)は、23日にステランティスの工場で6,800人、24日にGMの工場で5,000人がストライキを始めました。9月15日に1.3万人でスタートしたストライキは4.5万人、UAW組合員の30%に増えています。3大メーカーによるレイオフ(一時解雇)を含めると、少なくとも5万人の雇用に影響が出ています。
フォードを含む3大メーカーは、UAWに対して最新のオファーで4年間23%の賃上げを提示していましたが、公式に36%を要求しているUAWはこれを拒否した格好です。
- 当レポートは、情報提供を目的としたものであり、特定の商品の推奨あるいは特定の取引の勧誘を目的としたものではありません。
- 当レポートに記載する相場見通しや売買戦略は、ファンダメンタルズ分析やテクニカル分析などを用いた執筆者個人の判断に基づくものであり、予告なく変更になる場合があります。また、相場の行方を保証するものではありません。お取引はご自身で判断いただきますようお願いいたします。
- 当レポートのデータ情報等は信頼できると思われる各種情報源から入手したものですが、当社はその正確性・安全性等を保証するものではありません。
- 相場の状況により、当社のレートとレポート内のレートが異なる場合があります。