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米ドル/円のトレンド転換?

2026/09/07 12:34

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【今週のポイント】
・米ドル/円のトレンド転換を促す包括的な対策は打ち出されるか
・NOK/SEKは金融政策見通しに影響する両国のCPIと原油価格に注目
・副総裁や総裁補の発言で市場のRBA追加利上げ観測が強まるかどうか
・カナダは8日に対米報復関税を発動する予定、トランプ政権の対応は?

先週(8/31- )、円が急騰しました。米ドル/円は160円近辺から9月3-4日に一時155円台前半まで下落。2日にNY市場でレートチェックの観測はあったものの、米ドル/円の下落はジリジリと進行したため、為替介入など当局のアクションがあったというより、市場参加者の思惑で米ドル/円が下落したものとみられます。

米ドル/円下落の背景は、ベッセント米財務長官の「強い円」発言(※1)、高田日銀審議委員の「積極利上げ」発言(※2)、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の資産構成見直し観測などです。また、ウォラーFRB理事の利上げに慎重な発言を受けて、米長期金利(10年物国債利回り)が低下したことも米ドル/円の下落要因となりました。

今週の主要経済指標・イベント

(※1)ベッセント長官は、G7、G20財務大臣・中央銀行総裁会議の際に、片山財務相や植田日銀総裁と会談。その後に、「日本政府と日銀がより強い円につながる措置を講じると信じている」、「市場が持っていない情報が私にはある」、「大幅な円安に対応する日本の金融政策や市場の措置を強く支持した」などとコメントしました。

(※2)前回7月の会合で唯1人利上げを主張した高田委員は2日の講演で、「利上げは0.25%幅とは限らない。0.50%や0.75%かもしれない」、「連続利上げの可能性もある」との趣旨の発言をしました。

今週は、7日が米国とカナダのレイバーデーで休場。米国ではこの日から11月3日投票の中間選挙のキャンペーンが本格化します。

米国とイランのタンカー攻撃の応酬により、原油価格に上昇圧力が加わっています。日本時間7日朝の時点でWTI原油価格は1バレル=92ドル前後で推移しており、一段と上昇するようなら世界の長期金利を押し上げそうです(目先的には米ドル/円の上昇要因)。

4日時点のOIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、9月15-16日の米FOMCでの0.25%利上げが6割弱の確率で織り込まれています。市場は、据え置きより利上げの可能性がやや高いとみています。もっとも、11日の8月CPIの結果次第では、市場の見方は変わりそうです。据え置き観測が優勢となれば、長期金利は低下し、逆に利上げ観測が一段と高まれば、長期金利は23年10月にワンタッチした5.00%に接近するかもしれません。

日本では長期金利が3.00%近辺で推移。10日には増日銀審議委員の講演と会見があります(上述したタカ派の高田委員に対して増委員は中立とみられています)。また、米CPIや米長期金利の動向次第で、長期金利は3.00%を超えてさらに上昇する可能性があります。17-18日の日銀金融政策決定会合では0.25%の利上げがほぼ確実視されています。ただ、ベッセント長官が言及した「より強い円につながる措置」や「市場が持っていない情報」に関する憶測が、長期金利や為替相場にも影響する可能性はあるでしょう。

10日にはECB理事会の結果が判明します。ユーロ圏の8月CPIが前年比3.3%と前月(2.9%)から上振れたこともあり、0.25%の利上げが確実視されています。注目は10月以降の金融政策について、声明やラガルド総裁の会見でヒントがだされるか。4日時点のOIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、市場のメインシナリオ(確率5割超)は「9月、12月、27年3月に0.25%ずつの利上げ」です。

経済指標では、スウェーデン、トルコ、メキシコ、ドイツ、ノルウェー、米国のCPIが発表になり、市場の金融政策見通しに影響を与えるかもしれません。<西田>

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豪ドルは先週(8/31- )、対米ドルで5月15日以来、対NZドルで5月27日以来の高値をそれぞれつけました。その主な要因として、RBA(豪中銀)による追加利上げ観測が強まったことが挙げられます。今週8日にRBAのハウザー副総裁とハンター総裁補の発言機会がそれぞれあります。両名の発言を受けて同中銀の追加利上げ観測が強まるのかどうかに注目です。

CPIなど米国の経済指標の結果を受け、FRBによる利上げ観測がどのように変化するのかにも注目です。利上げ観測が後退するようであれば、米ドル/カナダドルは軟調に推移し、豪ドル/米ドルやNZドル/米ドルは堅調に推移すると考えられます。

原油価格の動向にも目を向ける必要がありそうです。米国とイランが攻撃の応酬を続けていることで原油価格は堅調に推移しており、WTI原油先物価格は9月3日に一時1バレル=93ドル台と7月23日以来の高値をつけました。原油価格が一段と上昇した場合、ノルウェークローネやカナダドル、メキシコペソにとってプラスになる可能性があります。

カナダ政府は9月8日に対米報復関税を発動する予定です。関税が発動された場合、トランプ政権の対応が注目されます。

10日にはTCMB(トルコ中銀)の政策会合が開かれます。政策金利は現行の37.00%に据え置かれると予想されています。TCMBの声明における先行きの金融政策に関する文言に変化がなければ、トルコリラに大きな反応はみられないかもしれません。前回7月会合時は、「物価安定が達成されるまで引き締め的な金融政策スタンスを維持する」、「実際のインフレ率やインフレ期待、およびそれらの基調を踏まえ、中間目標に沿ったディスインフレの道筋に必要な引き締め度合いを確保するように政策金利を決定する」、「金融政策の決定は、インフレ見通しを重視しつつ会合ごとに慎重に行う」、「インフレ見通しが顕著かつ持続的に悪化した場合、金融政策スタンスを引き締める」でした。<八代>

今週の注目通貨ペア①:<米ドル/円 予想レンジ:152.000円~161.000円>
25年4月に約140円からスタートした米ドル/円の上昇トレンドが転換するとしたら、どんなケースが想定できるでしょうか。以下に考察してみます。

為替介入だけでは一時的に米ドル/円を押し下げることはできても、トレンド転換は難しいでしょう。相当な規模で断続的な協調介入があれば可能かもしれませんが、現時点で主要国の承認や、ましてや協力は得られないでしょう。当面のチェックポイントは、FRBが(日本が米国債を売却せずに介入資金を調達できる)FIMAレポ・ファシリティを現行の600億ドル/日から大幅に拡大するかどうかかもしれません。

日銀の積極的な利上げはどうでしょうか。4日時点のOIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、市場は27年4月までの6回の政策会合で0.25%×3回の利上げをほぼ完全に織り込んでおり、同年7月までに4回目の利上げを約7割の確率で織り込んでいます。日銀が市場予想通りにアグレッシブな利上げを続ければ、日米短期金利差が縮小して、米ドル/円のトレンド転換を促すかもしれません。日銀にそれができるでしょうか。

外貨建て資産から国内資産への資金シフトを促す政策はどうでしょうか。効果が大きそうなのが、26年6月末で運用資産が300兆円を超えるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の資産構成見直しでしょう。GPIFが動けば、他の本邦金融機関もある程度追随するかもしれません。もっとも、GPIFはこれまで資産構成を「円建て資産⇒外貨建て資産」、「債券⇒株式」へとシフトしてきました(現在のベンチマークは、日本債券、日本株式、外国債券、外国株式がそれぞれ25%)。受益者の利益を最優先した場合に資産構成比率を逆行させる判断に至るのでしょうか。

95年の米ドル安の「秩序ある反転」には、(結果的に)国際協調介入に加えて、強い意思表示(G7共同声明)、金融政策(日銀の利下げ)、資本政策(日本の外貨規制の緩和)などが必要でした。現時点でそれらの要素が整いつつあるようにはみえません。それとも、ベッセント長官が言及した、「市場が知らない、より強い円につながる措置」には上記が含まれるのでしょうか。<西田>

今週の注目通貨ペア②:<ノルウェークローネ/スウェーデンクローナ 予想レンジ:0.98000Sクローナ~1.02000Sクローナ>
ノルウェークローネ/スウェーデンクローナ(以下、NOK/SEK)は8月上旬から上昇を続け、9月2日に約3年ぶりとなる1.03445Sクローナをつけました。原油価格が上昇基調にあって、産油国ノルウェーの通貨クローネにプラスに働いてきました。そして、政策金利がリクスバンク(スウェーデン中銀)の1.75%に対して、ノルゲバンク(ノルウェー中銀)が4.25%と、政策金利差もNクローネに有利になっています。

今週は、ノルウェーとスウェーデンの8月CPIが発表になります。基調的インフレの指標の1つノルウェーのCPI-ATE(※)は前年比3.0%と、前月(2.7%)から伸びが高まると予想されています。一方で、スウェーデンの同じくCPIF(※)は前年比0.9%と、前月(0.7%)から伸びが高まるものの、リクスバンクの目標である2%を大きく下回ると予想されています。

(※)ノルウェーのCPI-ATEは税制改革の影響やエネルギー製品を除いた基礎CPI
   スウェーデンのCPIFは住宅ローン金利変動の影響を除外したCPI

そうした状況で、4日時点のOIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、24日の政策会合でリクスバンクは約7割の確率で据え置きが予想されています(結果判明は日本時間16:30)。同じ日の政策会合でノルゲバンクは利上げするとの見方がやや優勢です(同17:00)。両国のCPIがそれぞれの金融政策見通しを変化させるでしょうか。

NOK/SEKについては、原油価格の動向も重要です。とりわけ、7月1日~9月4日の期間(日足)で、NOK/SEKとWTI原油先物価格の相関係数は0.67と高くなっています。中東情勢によって原油価格は乱高下する可能性もあり、注意が必要でしょう。<西田>

今週の注目通貨ペア③:<豪ドル/NZドル 予想レンジ:1.21000NZドル~1.23500NZドル>
豪ドル/NZドルは9月2日に一時1.22808NZドルへと上昇し、5月27日以来の高値をつけました。足もとの豪ドル/NZドル堅調の主な要因として、豪州の7月CPI(消費者物価指数)の強い結果を受けてRBA(豪中銀)による追加利上げ観測が強まる一方、RBNZ(NZ中銀)による政策金利見通しによって同中銀の追加利上げ観測が後退したことが挙げられます。

8月26日に発表された豪州の7月CPIは総合が前年比3.5%、コアインフレ率のトリム平均値が同3.6%と、いずれも市場予想(3.3%と3.5%)を上回りました。OIS(翌日物金利スワップ)に基づくと、4日時点で市場が織り込むRBAが次回9月28-29日の会合で利上げを行う確率は約7割。7月CPIが発表される前は、RBAによる利上げサイクルは終了したとの見方も市場には相応にありました。

9月2日のRBNZの会合では0.25%の利上げを行い、政策金利を2.50%から2.75%に引き上げることが決定されました。その結果は市場予想どおりでした。四半期ごとのRBNZによる政策金利見通しは、前回5月時点とほとんど変わらず。政策金利の最高水準は前回よりも上方修正されるとの見方が市場にあるなかで、最高水準は3.28%に据え置かれました。追加利上げのタイミングについて、今回の会合前は10月28日の会合との見方が優勢でしたが、次々回12月9日が有力になりました。

8日にRBAのハウザー副総裁とハンター総裁補(経済担当)の発言機会があります。両名の発言によって同中銀の追加利上げ観測が一段と強まった場合、豪ドル/NZドルは引き続き堅調に推移しそうです。<八代>

今週の注目通貨ペア④:<米ドル/カナダドル 予想レンジ:1.36000カナダドル~1.40000カナダドル>
BOC(カナダ中銀)は9月2日の政策会合で政策金利を2.25%に据え置きました。BOCが政策金利を据え置いたのは7会合連続です。

BOCの声明では、これまでの「現在の政策金利(の水準)は、景気回復を持続し、インフレ率を目標の2%に戻すのに適切だ」が削除されたうえ、「インフレの上振れリスクが高まっている」との認識が示されました。マックレム総裁は会合後の会見で「(カナダの)インフレ率は高すぎる」と述べ、「必要に応じて金融政策を調整する用意がある」と強調。「インフレ率が高止まりすると判断すれば、複数回の利上げが必要になる可能性がある」と語りました。

BOC会合の結果を受け、市場では同中銀は12月末までに利上げを行うとの見方が強まりました。そのことはカナダドルにとってプラスになりそうです。

米ドル/カナダドルに関しては、米国の8月CPI(消費者物価指数、11日発表)などの結果を受けて、FRBによる利上げ観測がどのように変化するのかにも影響を受けそうです。FRBの利上げ観測が後退するようであれば、米ドル/カナダドルは軟調に推移すると考えられます。

カナダ政府は8日に対米報復関税を発動する予定です。トランプ政権の対応次第では、米ドル/カナダドルの動向に影響を与える可能性があります。<八代>

西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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