8月米雇用統計は堅調、FOMCの利上げは?
2026/09/05 06:42
【ポイント】
・8月NFPは大幅に増加。7月分はマイナスからプラスに改定
・市場では、9月FOMCで利上げとの見方がやや優勢に
・FOMCの判断は11日発表のCPI次第か
・トランプ大統領は利下げを要求
・末尾に、「年次改定」と「事業所調査と家計調査」の詳細解説
米国の8月雇用統計は、NFP(非農業部門雇用者数)が大幅に増加して労働市場の持ち直しを示唆しました。FRBの利上げ観測はやや高まりましたが、9月15-16日のFOMCで利上げが決定されるかどうかは、11日に発表される8月CPIが重要なカギを握っていそうです。
4日時点のOIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、市場が織り込む次回9月FOMCでの利上げ確率は約6割。雇用統計発表前はほぼ五分五分でした。メインシナリオは「利上げ」になりましたが、確実と言えるほどではありません。

雇用統計発表後に、トランプ大統領はFRBに利下げを求める強いメッセージを発表しました。トランプ大統領はSNSで「利下げせよ。さもなければ対米貿易黒字国との貿易を停止する」と表明しました。また、「偉大な新しいリーダー(ウォーシュ議長のこと)を得たFRBは賢くなれ、愛国者であれ。高い金利は米国を不公平に不利な状況に置く。私はそれを許さない」とも。果たして、FOMCの判断はどうでしょうか。
*******
8月雇用統計では、事業所調査のNFP(非農業部門雇用者数)が前月比16.2万人増と、4カ月ぶりに10万人をこえる増加となりました。7月はマイナス(2.3万人減)からプラス(2.1万人増)へ、6月は2.0万人増から3.1万人増へと改定されました。

業種別では、娯楽・飲食等が前月の2.1万人減から8月は6.2万人増へ、地方政府の教職員が同じく5.8万人減から4.2万人増へと盛り返しました。後者は季節調整の歪み(教職員数は学年が変わる夏休みを挟んで大きく変動する傾向があるため)が影響している可能性がありそうです。
時間当たり賃金は前年比3.1%増と、ジリジリと伸びが鈍化しており、足もとのインフレ率(7月PCEコア前年比3.3%)を下回りました。雇用者数や週平均労働時間も反映した総賃金は前年比4.3%と比較的高い伸びを維持しています。


家計調査に基づく失業率は4.1%と前月同じでした(厳密には8月4.14%←7月4.09%)。6月FOMCでの経済見通しによれば、(目標とする)失業率は中央値が4.2%、中心レンジが4.0%-4.3%なので、目標レンジに収まっています。(家計調査での)労働力人口は前月から68.3万人増(7月は26.4万人減)、雇用は56.9万人増加(同8.7万人減)、失業者は11.5万人増(同17.4万人減)でした。

労働参加率<(雇用者数+失業者数)/生産年齢人口>は61.6%と7月の61.4%から反発。ただ、高齢者の退職や移民の減少などにより労働参加率は低下する傾向にあります。

<参考1>年次改定
米労働省は8月28日にNFP(非農業部門雇用者数)の年次改定(暫定値)を発表。26年3月時点の全数カウントの結果、当初発表の推計値より雇用数が7.9万人少なかったことが判明。毎月のNFPはサンプル調査を基にしているが(↓)、年に1度、州に納付される失業保険料の数を全数調査する。今回の年次改定は27年2月に発表される1月分から反映される。昨年の年次改定では25年3月のNFPが89.8万人下方修正された。
<参考2>事業所調査と家計調査
事業所調査(establishment survey)は約40万カ所の事業所を対象としたサンプル調査。給料のデータをもとに、雇用者数、労働時間、賃金などが発表される。NFP(non-farm payroll)のpayrollは給与支払いデータのこと。記録に基づくため、正確性は高い。ただし、複数の職を持つ人はその数だけ雇用とカウントされる、自営業者が捕捉しづらい、起業や廃業による雇用変化を推計するモデルの信頼性が低いなどの問題点はある。毎年3月に失業保険料の支払い記録を基に全数調査が実施され、翌年2月にそれを反映した改定値が公表される。
家計調査(household survey)は、約6万世帯の家計を対象にしたアンケート調査。当該月の一定期間に「仕事をしたか」「(しなかった場合に)職探しをしたか」、回答者の属性(年齢や人種など)を尋ねるもの。失業率や労働参加率などが発表される。聞き取り調査(=記憶に基づく)かつサンプルが小さいため、データの信頼性は事業所調査に比べて劣る。
いずれの調査も、対象期間は当該月の12日を含む1週間。その間に1時間でも働けば「雇用」とカウントされる。事業所調査は支払った給料の数を雇用としてカウントするため、重複を避ける目的がある(週給制が多いから)。事業所調査と家計調査は全く異なる調査なので月々の結果が違った方向を示す場合もあるが、やや長い期間を通してみれば同じ方向を指す。
・8月NFPは大幅に増加。7月分はマイナスからプラスに改定
・市場では、9月FOMCで利上げとの見方がやや優勢に
・FOMCの判断は11日発表のCPI次第か
・トランプ大統領は利下げを要求
・末尾に、「年次改定」と「事業所調査と家計調査」の詳細解説
米国の8月雇用統計は、NFP(非農業部門雇用者数)が大幅に増加して労働市場の持ち直しを示唆しました。FRBの利上げ観測はやや高まりましたが、9月15-16日のFOMCで利上げが決定されるかどうかは、11日に発表される8月CPIが重要なカギを握っていそうです。
4日時点のOIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、市場が織り込む次回9月FOMCでの利上げ確率は約6割。雇用統計発表前はほぼ五分五分でした。メインシナリオは「利上げ」になりましたが、確実と言えるほどではありません。

雇用統計発表後に、トランプ大統領はFRBに利下げを求める強いメッセージを発表しました。トランプ大統領はSNSで「利下げせよ。さもなければ対米貿易黒字国との貿易を停止する」と表明しました。また、「偉大な新しいリーダー(ウォーシュ議長のこと)を得たFRBは賢くなれ、愛国者であれ。高い金利は米国を不公平に不利な状況に置く。私はそれを許さない」とも。果たして、FOMCの判断はどうでしょうか。
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8月雇用統計では、事業所調査のNFP(非農業部門雇用者数)が前月比16.2万人増と、4カ月ぶりに10万人をこえる増加となりました。7月はマイナス(2.3万人減)からプラス(2.1万人増)へ、6月は2.0万人増から3.1万人増へと改定されました。

業種別では、娯楽・飲食等が前月の2.1万人減から8月は6.2万人増へ、地方政府の教職員が同じく5.8万人減から4.2万人増へと盛り返しました。後者は季節調整の歪み(教職員数は学年が変わる夏休みを挟んで大きく変動する傾向があるため)が影響している可能性がありそうです。
時間当たり賃金は前年比3.1%増と、ジリジリと伸びが鈍化しており、足もとのインフレ率(7月PCEコア前年比3.3%)を下回りました。雇用者数や週平均労働時間も反映した総賃金は前年比4.3%と比較的高い伸びを維持しています。


家計調査に基づく失業率は4.1%と前月同じでした(厳密には8月4.14%←7月4.09%)。6月FOMCでの経済見通しによれば、(目標とする)失業率は中央値が4.2%、中心レンジが4.0%-4.3%なので、目標レンジに収まっています。(家計調査での)労働力人口は前月から68.3万人増(7月は26.4万人減)、雇用は56.9万人増加(同8.7万人減)、失業者は11.5万人増(同17.4万人減)でした。

労働参加率<(雇用者数+失業者数)/生産年齢人口>は61.6%と7月の61.4%から反発。ただ、高齢者の退職や移民の減少などにより労働参加率は低下する傾向にあります。

<参考1>年次改定
米労働省は8月28日にNFP(非農業部門雇用者数)の年次改定(暫定値)を発表。26年3月時点の全数カウントの結果、当初発表の推計値より雇用数が7.9万人少なかったことが判明。毎月のNFPはサンプル調査を基にしているが(↓)、年に1度、州に納付される失業保険料の数を全数調査する。今回の年次改定は27年2月に発表される1月分から反映される。昨年の年次改定では25年3月のNFPが89.8万人下方修正された。
<参考2>事業所調査と家計調査
事業所調査(establishment survey)は約40万カ所の事業所を対象としたサンプル調査。給料のデータをもとに、雇用者数、労働時間、賃金などが発表される。NFP(non-farm payroll)のpayrollは給与支払いデータのこと。記録に基づくため、正確性は高い。ただし、複数の職を持つ人はその数だけ雇用とカウントされる、自営業者が捕捉しづらい、起業や廃業による雇用変化を推計するモデルの信頼性が低いなどの問題点はある。毎年3月に失業保険料の支払い記録を基に全数調査が実施され、翌年2月にそれを反映した改定値が公表される。
家計調査(household survey)は、約6万世帯の家計を対象にしたアンケート調査。当該月の一定期間に「仕事をしたか」「(しなかった場合に)職探しをしたか」、回答者の属性(年齢や人種など)を尋ねるもの。失業率や労働参加率などが発表される。聞き取り調査(=記憶に基づく)かつサンプルが小さいため、データの信頼性は事業所調査に比べて劣る。
いずれの調査も、対象期間は当該月の12日を含む1週間。その間に1時間でも働けば「雇用」とカウントされる。事業所調査は支払った給料の数を雇用としてカウントするため、重複を避ける目的がある(週給制が多いから)。事業所調査と家計調査は全く異なる調査なので月々の結果が違った方向を示す場合もあるが、やや長い期間を通してみれば同じ方向を指す。
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