原油100ドル台の世界!?
2026/03/09 12:30
【今週のポイント】
・原油価格急騰で株価に大きな下落圧力。リスクオフが強まれば円売りの解消も?
・原油高を受けてノルウェークローネ/スウェーデンクローナは一段上昇も
・RBAの早期利上げ観測が高まる
米国とイスラエルがイランを攻撃する直前2月27日から3月6日の期間で、Bloombergが集計する17通貨の騰落率をみれば、強い通貨から「カナダドル>米ドル>英ポンド>ノルウェークローネ>スイスフラン>シンガポールドル>円・・・・・」の順でした。リスクオフにより米ドルやスイスフラン、円が買われ、原油高がカナダドル、英ポンド、ノルウェークローネを後押ししました。
騰落率下位は、「・・>ユーロ>NZドル>ブラジルレアル>メキシコペソ>韓国ウォン>南アフリカランド」となっており、リスクオフにより新興国通貨が敬遠されました。ユーロは通常、安全通貨としてリスクオフで上昇しやすいですが、米ドル高の裏返しであり、かつユーロ圏経済がエネルギー価格上昇に打撃を受けやすい面を反映して下位に沈みました。
引き続きイラン情勢や原油価格が大きな相場材料となりそうです。
トランプ大統領はイラン攻撃の初期成果に自信を深めており、イランに対して無条件降伏を要求しています。イランの最高指導者にハメネイ師の息子モジタバ師が就任したようです。しかし、トランプ大統領は、モジタバ師は相応しくない、自身が後継者選びに関与するなどと発言しています。目的達成まで戦争の長期化も辞さない構えをみせていますが、目的が不透明なこともあって(無条件降伏?)、終わりの見えない戦争になりつつあります。
WTI原油先物価格は日本時間9日午前に一時1バレル=118.88ドルをつけました。原油価格が一段と上昇する可能性も否定できません。その場合、インフレ圧力の高まりに対して利下げ観測が後退、あるいは利上げ観測が浮上。また、景気に強い下押し圧力が加わることで、世界的にスタグフレーション懸念が強まりそうです。逆に、可能性は低いかもしれませんが、イラン戦争の早期終結期待が高まれば、原油価格が下落するなどして市場のリスクオフの地合いは後退しそうです。
今週は、米国の2月CPIや1月PCEデフレーターなどの物価指標が発表されます。6日発表の2月雇用統計でNFP(非農業部門雇用者数)が前月比9.2万人減となるなど非常に弱い内容だったため、仮にインフレの落ち着きが示されれば、利下げ観測が高まるかもしれません。
ただ、重要なのは、上述した通り、イラン情勢であり、原油価格の動向でしょう。直接関係はなさそうですが、今週は、米韓軍事演習、NATOの北極圏軍事演習, EU防衛相非公式会合など軍事関連のイベントが予定されており、イラン情勢に影響する材料が出るかもしれません。<西田>
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2月28日に米国とイスラエルがイランへの攻撃を開始したことを受け、先週(3/2- )はリスクオフ(リスク回避)が強まりました。その結果、米ドルが堅調に推移する一方で、投資家のリスク意識の変化を反映しやすい豪ドルやNZドルには下押し圧力が加わりました。また、原油価格の上昇に支えられて産油国の通貨であるカナダドルやノルウェークローネなどは底堅い展開でした。
今週は引き続き中東情勢をめぐるニュースに反応しやすい状況となりそう。新たなニュースによって中東情勢が一段と緊迫化する場合、リスクオフはさらに強まり、原油高がさらに進むと考えられます。
13日にはカナダの2月雇用統計が発表されます。市場では、BOC(カナダ中銀)は政策金利を当面据え置くとの見方が優勢です。同国の雇用統計の結果を受けて、その見方がどのように変化するのか注目されます。
TCMB(トルコ中銀)が12日に政策会合を開きます。TCMBは前回1月まで5会合連続で利下げを実施し、前回会合の声明では25年10月と12月と同じく「(政策)措置の規模は、インフレ見通しを重視しつつ会合ごとに慎重に見直す」と表明。追加利下げに含みを持たせました。
トルコの2月CPI(消費者物価視指数)は前年比31.53%と、上昇率は前月の30.65%から高まりました。また、足もとの原油価格上昇の影響によってインフレ圧力は今後さらに強まる可能性があります。今回の会合で政策金利は現行の37.00%に据え置かれそう。そのとおりの結果になれば、TCMBの声明で先行きの金融政策についてどのようなヒントが提供されるのかに注目です。<八代>
今週の注目通貨ペア①:<米ドル/円 予想レンジ:150.000円~160.000円>
日本時間9日に原油価格がさらに高騰し、リスクオフから米ドルが全面高の展開となっています。安全通貨として円も買われており、対米ドル、対カナダドル以外は堅調でした。米ドル/円は上昇して、今年の高値1月14日の159.405円に接近しています。そこを抜ければ160円、あるいは38年ぶりの高値となった24年7月の161.938円が視野に入るかもしれません。
もっとも、米ドル/円が堅調に推移すれば、本邦当局からけん制発言や日銀のレートチェック、さらには実弾介入の動きも出てきそうです。また、今年1月の例に倣えば、米財務省主導でFRBがレートチェックを行うかもしれません。
NYダウ先物は日本時間9日11:30現在で前週末から2.4%程度下落しています(同じ時間に日経平均は約7%下落)。欧米時間に入って株価が大きく下落すれば、投資家のリスクオフが一段と強まるかもしれません。通常レベルのリスクオフでは現在のように安全資産として米ドルが選好されるケースもあるでしょう。ただ、非常に強いショックが生じると、ポジションの解消、例えば円キャリートレードの巻き戻しによって米ドル/円に下落圧力が加わる可能性にも注意すべきでしょう。<西田>
今週の注目通貨ペア②:<ノルウェークローネ/スウェーデンクローナ 予想レンジ:0.95000Sクローナ~0.98000Sクローナ>
原油価格の上昇は、産油国であるノルウェーの通貨クローネにとってプラス材料でしょう。ノルウェークローネ/スウェーデンクローナ(NOK/SEK、以下同じ)は、21年~24年は0.95000Sクローナを下限としていました。しかし、25年3月から約1年間は同水準を下回って推移する時間が増えました。それでも、25年末に20年コロナ・ショック以来の低水準近辺まで下落した後は、反発しています。リクスバンク(スウェーデン中銀)の利下げ観測が台頭する一方で、ノルゲバンク(ノルウェー中銀)の利下げ観測が大きく後退したためです。
そして、米国とイスラエルによるイラン攻撃を契機に原油価格が上昇すると、NOK/SEKは0.95000Sクローナを明確に超えてきました。このままNOK/SEKが24年の変動レンジ(0.95000Sクローナ~1.00000Sクローナ)に回帰するのかどうか。原油価格の動向に要注意でしょう。
なお、3月6日時点のOIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、市場はリクスバンクが6月までに利上げする確率を1割程度織り込んでいます(5日まではわずかながら利下げ予想)。一方、ノルゲバンクの利上げ確率は約4割。相場材料としての金融政策見通しの違いはイラン戦争開始以前に比べると小さくなっています。<西田>
今週の注目通貨ペア③:<豪ドル/NZドル 予想レンジ:1.17500NZドル~1.20000NZドル>
豪ドル/NZドルは3日に一時1.19749NZドルへと上昇し、13年6月以来の高値をさらに更新しました。RBA(豪中銀)のブロック総裁が同日の講演で「必ずしも(4月29日発表の豪州の)1-3月期CPI(消費者物価指数)を待つ必要はない」 、「毎回の会合がライブ(政策変更の可能性がある)、「より迅速な対応が必要かどうかを検討する」と発言。それを受けてRBAによる早期の追加利上げ観測が市場で高まったことが、豪ドル/NZドルの上昇要因となりました。
市場では、RBAは次回3月16-17日の政策会合で政策金利を3.85%に据え置いて、次々回5月の会合で0.25%の追加利上げを行うとの見方が引き続き優勢。ただし、足もとで原油価格が上昇していることで、3月の追加利上げ観測が高まっています。OIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、市場が織り込む3月会合の確率は据え置きが6割強、利上げが4割弱です(日本時間9日10:40時点)。一方、同じくOISに基づけば、RBNZ(NZ中銀)の政策金利は当面据え置かれて、26年9月に利上げが行われるとの見方が優勢です。
RBAとRBNZの金融政策に対する市場の見方を踏まえると、豪ドル/NZドルは引き続き底堅く推移しそうです。<八代>
今週の注目通貨ペア④:<米ドル/カナダドル 予想レンジ:1.35000カナダドル~1.38000カナダドル>
先週(3/2- )は、リスクオフ(リスク回避)によって米ドルが対円や対ユーロなどで堅調に推移するなか、米ドル/カナダドルは1.36カナダドル台を中心とした値動きとなり方向感が乏しい展開でした。原油価格の上昇がカナダドルにとってのプラス材料となったと考えられます。
今週は13日にカナダの2月雇用統計が発表されるものの、市場の注目は引き続き中東情勢に向かうとみられます。仮に中東情勢が一段と緊迫化してリスクオフがさらに強まったとしても、原油高も進むようであれば、米ドル/カナダドルは方向感が乏しい状況が続くかもしれません。<八代>
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