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欧州財政事情、フランス、ドイツ、英国

2025/12/26 08:35

【ポイント】
・フランスでは緊急予算法が成立
・ドイツは積極財政に転換、長期金利の上昇要因に
・英国では秋季予算案が市場で好感されるも、赤字削減策は先送り

ユーロ圏では26年1月に新年度が始まります。フランスでは本予算が成立せず緊急予算法によりシャットダウンが回避されました。ドイツでは予算が成立しているものの、積極財政に転換したことで、国債発行額増大(財政赤字拡大)の予想から長期金利に上昇圧力が加わっています。英国では、26年4月に始まる新年度の秋季予算が11月に発表されて市場で好感されたものの、必要な財政赤字削減策の大部分は28年以降に先送りされる内容でした。欧州の政治情勢や財政問題が相場材料になる可能性もあり、注意は怠れません。

■12/25付け「米財政事情、オバマケアはどうなる?」もご覧ください。

フランスでは緊急予算法が成立
フランスでは23日、緊急予算法が成立しました。議会で審議中の26年度予算で合意できなかったため。これにより米国型のシャットダウン(政府機能の一部停止)は回避されました。ただ、新年度開始の26年1月以降も継続する予算審議が難航・長期化するようであれば、10月に成立したルコルニュ政権の求心力が一段と低下し、崩壊の危機に立たされるかもしれません。

ドイツは積極に転換、長期金利の上昇要因に
ドイツでは、メルツ政権が債務ブレーキ財政規律)を緩和し、積極財政に転換しました。老朽化したインフラ改修や軍事費強化のため。議会は11月下旬に26年度予算案を承認。ドイツ財務省によれば、26年度の新規借り入れは1,820億ユーロと、25年度の1,430億ユーロから拡大する見通しです。ECBが利下げサイクルを終了した可能性もあってドイツの長期金利は12月に入って上昇が目立っており、ユーロ/米ドルのサポート要因になっているようです。

英国では赤字削減策を先送り!?
英国では、リーブス財務相が11月26日に秋季予算案を発表。財政規律に対する余力が22年3月以来の大きさになったことや所得税率引き上げが含まれなかったことで、市場で好感されて長期金利はいったん低下しました。もっとも、所得税階層の据え置き(インフレ下では事実上の増税)など財政赤字削減策の大半は28年以降に先送りされており、大手格付け会社はその実現を疑問視しているようです。労働党のスターマー政権は低支持率に喘いでおり、財政政策を含めた政権運営の先行きには不透明感が漂っています。
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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