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米FOMCはタカ派的利下げ、長期金利&米ドル上昇!

2025/10/30 06:36

【ポイント】
・FOMCは2会合連続で0.25%利下げ
・票決は10対2で、1名が0.50%を、1名が据え置きを主張
・パウエル議長は「12月利下げは既定路線でない」と明言

米FOMCは前回9月に続いて利下げを実施。ただ、据え置きを主張して反対票を投じたメンバーがいたこと、パウエル総裁が次回12月の利下げを「既定路線ではない」と述べたことなどから、長期金利(10年物国債利回り)は大幅に上昇、米ドルにも上昇圧力が加わりました。

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FOMCは29日、政策金利を0.25%引き下げ、3.75-4.00%としました。票決は10対2ミラン理事が前回同様に0.50%の利下げを主張して反対票を投じました。これは想定内でしたが、サプライズはカンザスシティ連銀シュミッド総裁が据え置きを主張して反対票を投じたこと。シュミッド総裁は23年8月にジョージ総裁の後任として就任。ジョージ元総裁はFOMC内で最もタカ派なメンバーの1人でしたが、シュミッド総裁は「正統な」後継者と言えるかもしれません。

声明文では、冒頭の景況判断で「経済活動は緩やかに拡大している」とされ、前回の「経済活動は今年前半に鈍化した」から修正。ただし、「緩やかに」も「鈍化した」もmoderate(d)が使われており、上方修正されたとは言いにくいところ。

雇用については前回とほぼ同じ「雇用は鈍化」「失業率は小幅上昇も引き続き低水準」と表現されました。ただ、前回は現在完了形haveが使われましたが、今回は雇用統計の発表が延期されているので「8月までは・・鈍化した(上昇した)」と単純な過去形が使われています。同じ理由で、「(雇用の下方リスクは)増大した」と、前回の「増大している」から修正。もっとも、「もっと最近の指標はそうした状況と整合的だ」として、雇用統計の不足を他の雇用関連指標で補完していることを示しました。

今回新たに加わったのは、保有債券の削減、いわゆるQT(量的引き締め)12月1日に停止すること。これは金融緩和方向へのシフトですが、ある程度予想されていたため、市場への影響はほとんどなかったようです。

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市場では次回12月でも利下げが実施されるとの見方が有力です。ただ、29日時点のOIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、市場が織り込む確率は前日28日時点の95%から66%に低下。また、26年9月までの利下げ予想は0.25%×3.0回と、28日時点の同4.3回から低下しました。

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パウエル議長は会見で「12月の利下げは既定路線ではないそれには程遠い」と明言して、市場の利下げ観測(期待)をけん制しました。それ以外に興味深かった点は以下。

・今回の利下げもリスク管理(下方リスクへの備え)の観点から行った
・利用可能なデータに基づけば、見通しはあまり変化していない
シャットダウンは一時的に経済活動の重石になりうる
関税の影響もあって短期的なインフレ期待は上昇している
・労働市場は徐々に冷えている
・先行きについて強い見解の相違があった
・現在の政策金利は緩やかに抑制的と考えるが、幅広い「中立」概念の範囲内にある
・労働力の供給が顕著に減少しており、労働市場に影響を与えている
・金融システムに過度なレバレッジはみられない
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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