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ADPの減少と雇用統計発表の遅れ

2025/10/02 08:04

【ポイント】
・9月ADP民間雇用者数は前月比3.2万人減
・9月雇用統計も弱ければ、利下げ観測が一段と強まりそう
・ただし、シャットダウンの影響で政府の経済指標は延期へ
・FRBは材料が少ない(歪んだ)なかで判断を迫られるかも

1日に発表された9月ADP雇用統計の民間雇用者数(以下、ADP)は前月比3.2万人減。8月分も前月比5.4万人増から0.3万人減へと改定されました。ADP速報値が前月比マイナスとなったのは、22年7月に統計手法が変更されてからでは、今年6月に次いで2度目です。

市場では米労働市場に対する懸念が強まりました。労働省が発表する雇用統計ではNFP(非農業部門雇用者数)が5月以降大きく軟化しており、9月分でも雇用軟調が確認されるならば利下げ観測は一段と強まりそうです。

ADPと民間雇用

24年以降のADPとNFPの関係を基にすれば、9月のNFP民間は前月比3.1万人減68%の確率で11.8万人減~5.7万人増のレンジに収まると予想できます(詳細は割愛)。

ただし、3日に予定されていた9月雇用統計の発表は延期される公算大です。10月1日からシャットダウン(連邦政府機能の一部停止)に入っているためです。労働省統計局のHPには、シャットダウンが解消されるまでアップデートされない旨が記載されています。

過去のシャットダウンと雇用統計
過去のシャットダウンでも経済指標の発表が遅れた例はあります。18-19年のシャットダウン(35日間)では労働省の予算は成立していたため、経済指標は当初の予定通り発表されました。しかし、13年のシャットダウン(10月1日~16日)では、同年9月分の雇用統計は約2週間遅れて10月22日に発表されました。また、10月分の雇用統計はデータ収集・分析に遅れが生じたため1週間遅れの11月15日に発表されました。

今回も労働省統計局の雇用統計やCPI、商務省経済分析局のGDPなど、政府発表の経済指標は、シャットダウン中に発表予定のものだけでなく、その後のものについても影響を受けるかもしれません。

FRBの判断は?
FRBは9月17日のFOMCで今年初めての利下げに踏み切りました。市場では年内2回のFOMCそれぞれで0.25%利下げ、26年は7月までにさらに2回の利下げをほぼ織り込んでいます。今回のADPはそうした見方を一段と補強したとみられます。

ただし、FRBは重要な経済指標の発表を欠いたまま判断を迫られることになるかもしれません。それはあたかも夜間にヘッドライトを点灯せずに運転するようなものでしょう。
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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