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中央銀行ウィーク!

2025/09/16 11:28

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【今週のポイント】
・米FOMCでは、ドット・プロットが示唆する金融政策見通しに注目
・ノルウェー中銀の利下げは微妙⁉ 金融政策差はいずれNOK/SEKの重石に
・BOC会合では、10月以降の金融政策についてどのようなヒントが示されるか
・SARBは利下げを見送るか

今週は中央銀行ウィークで、週後半に多くの中銀の政策会合が予定されています。それぞれの市場予想と、< >は15日時点のOIS(翌日物金利スワップ)が織り込む確率。

今週の主要経済指標・イベント

17日   BOC(カナダ中銀):利下げ(2.75%⇒2.50%) <89%>
          米FOMC:利下げ(4.25~4.50%⇒4.00~4.25%) <105.9%=わずかに0.50%利下げもアリ>
18日  ノルゲバンク(ノルウェー中銀):利下げ(4.25%⇒4.00%) <58%>
   BOE(英中銀):据え置き(4.00%) <98%>
     SARB(南アフリカ中銀):わずかに据え置き優勢?(7.00%) <データなし>
19日   日銀:据え置き(0.50%) <98%>

ノルゲバンクとSARBは微妙ですが、それ以外の中銀会合の結果について市場はかなり自信を持っているようです。FOMCの注目ポイントは以下の通り。

利下げは0.25%か、0.50%か
市場では0.25%利下げとの見方が支配的ですが、わずかに0.50%利下げとの見方もあるようです。0.50%利下げならかなりのサプライズでしょう。また、トランプ大統領が大幅な利下げを望んでいるため、0.50%利下げなら政権の圧力に屈したと市場に判断されるかもしれません。

FOMC参加者と票決は?
15日に上院が指名を承認したミラン理事と、解任を巡って訴訟中のクック理事の参加の有無は不透明です(理事には投票権があります)。多数が「0.25%利下げ」を支持するとみられますが、「0.50%利下げ」や「据え置き」を支持する反対票があるかもしれません。

最大の注目は「ドット・プロット」か
9月15日時点のOIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、市場は26年7月までに0.25%×5.2回分の利下げを予想しています(25年末までに2.7回)。前回6月18日の「ドット・プロット(中央値)」によれば、25年後半に0.25%×2回、26年中に同1回、27年中に同1回の利下げが予想されていました。その後の経済指標が弱めだったことで、新しい「ドット・プロット」は下方にシフトしている可能性が高そうです。それでも、市場の大幅な利下げ観測をサポートするのか、それともけん制するのか、大いに注目されます。

労働市場に対する判断は?
「ドット・プロット」と同時に発表されるFOMCの経済見通しも気になります。また、パウエル議長は記者会見で足もとの軟調な労働市場に対してどのような判断を示すのか。議長が重視する失業率は依然として低水準にあるだけに興味深いところでしょう。<西田>

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今週の豪ドル/米ドルやNZドル/米ドルは、16-17日のFOMC(米連邦公開市場委員会)の結果に大きく影響を受けそうです。FOMCの結果を受けてFRBによる積極的な利下げ観測が市場で後退する場合、米ドルが全般的に堅調に推移するとともに、豪ドル/米ドルやNZドル/米ドルには下落圧力が生じると考えられます。

BOC(カナダ中銀)の政策会合が17日に開かれます。市場では0.25%の利下げがほぼ確実視されており、BOCの声明やマックレム総裁の会見が材料になりそうです。米ドル/カナダドルについては、FOMCとともにBOC会合にも注目です。

主要国の株価動向も材料になるかもしれません。FRBによる積極的な利下げ観測が後退する場合、主要国株価には下落圧力が生じそうです。株価が大きく下落するようなら、リスクオン(リスク選好)が後退して、対円の通貨ペアは軟化する可能性があります。

18日には、SARB(南アフリカ中銀)の政策会合が開かれます。市場では政策金利は7.00%に据え置かれるとの見方が有力です。ただ、一部に0.25%利下げするとの見方もあるため、仮に政策金利が据え置かれれば、南アフリカランドにとってのプラス材料になるかもしれません。<八代>

今週の注目通貨ペア①:<米ドル/円 予想レンジ:145.000円~150.000円>
米国の7月雇用統計が非常に弱かったことで、米ドル実効レートは8月以降ジリジリと下落しています。これに対して、米ドル/円は8月1日に大きく下落したものの、その後は147.000-148.000円を中心とした狭いレンジで推移しています。米ドル実効レートが米FRBの利下げ観測の高まりを比較的素直に反映している一方で、米ドル/円は金融政策以外の要因、主に日本の政治不安にも影響を受けているようにみえます。

自民党総裁選は10月4日に予定されています。それまで、誰が新しい総裁となり、どの政党と協力してどのような政策を打ち出すかは非常に不透明です。不透明感が払しょくされるまで、円が買われる(米ドル/円が下落する)展開は想定しにくそうです。

米ドル側の要因としては、FRBの金融政策がカギを握るでしょう。上述した17日のFOMCの結果が市場の大幅利下げ観測に寄せたものとなるならば、米ドルに下落圧力が加わりそう。また、そうならなくても、トランプ政権が圧力を強めてFRBの独立性が脅かされていると市場が判断すれば、米ドルや米ドル建て資産が売られる展開もありそうです。<西田>

今週の注目通貨ペア②:<ノルウェークローネ/スウェーデンクローナ 予想レンジ:0.93000Sクローナ~0.96000Sクローナ>
ノルゲバンク(ノルウェー中銀)は、今年6月に23年12月の利上げ以降で初めての利下げを実施、政策金利を4.50%から4.25%へ引き下げました。8月は据え置き。9月18日の政策会合では追加利下げの可能性が高そうです。ただ、15日時点のOIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、市場が織り込む利下げ確率は6割弱。据え置きの可能性も相応にあるため、どちらの結果が出てもノルウェークローネ/スウェーデンクローナ(以下、NOK/SEK)は反応するかもしれません。

リクスバンク(スウェーデン中銀)は、6月の会合で政策金利を2.00%に引き下げ、8月の会合では据え置きました。8月の声明文は追加利下げの可能性に言及したものの、政策金利は4.00%から2.00%まで引き下げられており、利下げ余地は限定的でしょう(ただし、15日時点のOISに基づけば、次回9月23日の会合での0.25%利下げの確率を市場は4割弱織り込んでいます)。

ノルゲバンクが18日に利下げを実施し、さらに/あるいは先行きに利下げを続けるとのサインを発すれば、金融政策見通しの差は徐々にNOK/SEKの重石となりそうです。<西田>

今週の注目通貨ペア③:<豪ドル/NZドル 予想レンジ:1.10500NZドル~1.13000NZドル>
8月20日に開かれたRBNZ(NZ中銀)の政策会合以降、豪ドル/NZドルは上昇傾向になっています。9月15日には一時1.11736NZドルへと上昇し、24年11月下旬以来およそ10カ月ぶりの高値をつけました。

RBNZは8月の会合で0.25%利下げすることを決定しました。その結果は市場予想どおりだったものの、会合では、より大幅な0.50%の利下げを行うことも検討されたほか、6人の政策メンバーの意見がまとまらずに投票が実施されて2人が0.50%の利下げを支持しました。また、RBNZによる政策金利見通しでは、今回の利下げサイクルの最終到達点が5月時点の2.85%から2.55%へと0.30%下方修正されました。それらが足もとの豪ドル/NZドル上昇の主な要因になっていると考えられます。

OIS(翌日物金利スワップ)によると、市場ではRBNZは次回10月8日と次々回11月26日の会合でそれぞれ0.25%の追加利下げを行うとの見方が有力です。

9月18日にNZの4-6月期GDP(国内総生産)が発表されます。その結果を受けてRBNZによる追加利下げ観測が後退すれば、豪ドル/NZドルは軟調に転じる可能性があります。<八代>

今週の注目通貨ペア④:<米ドル/カナダドル 予想レンジ:1.35000カナダドル~1.40000カナダドル>
今週の米ドル/カナダドルは、16-17日のFOMCと17日のBOC政策会合の結果が材料になりそうです。

BOC会合については、市場では0.25%の利下げが行われると予想されています。会合における注目点は、BOCの声明や会合後のマックレム総裁の会見で、10月以降の金融政策についてどのようなヒントが示されるか。市場では10月の会合でも0.25%の利下げが行われるとの観測があります。

マックレム総裁の会見などがその観測を高める内容になれば、カナダドルにとってのマイナス材料になりそう。その一方でFOMCの結果を受けて米ドル高圧力が全般的に強まる場合、米ドル/カナダドルは200日移動平均線(9/15時点で1.40133カナダドル)に向かって上昇しそうです。<八代>

西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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