マネースクエア マーケット情報

英国のインフレによりBOEの利下げは難しく?

2025/08/20 07:22

【ポイント】
・BOEの利下げ観測が後退。従来パターンなら11月利下げだが・・
・インフレ圧力根強く、足もとでCPIはジリ高⁉
・本日(20日)発表の7月CPIで金融政策見通しは変化するか

BOE(英中銀)の利下げ観測が後退しています。BOEは24年8月のMPC(金融政策委員会)で利下げを開始し、以後2会合に1回のペースで0.25%の利下げを継続してきました。今年8月の利下げにより政策金利は4.00%になりました。もっとも、8月の決定は5対4の僅差で、4人が据え置きを支持しました。

■8/8付け「英中銀は僅差で利下げ、追加利下げは微妙⁉」をご覧ください。

従来のパターンを踏襲すれば、次々回11月の会合での利下げが視野に入ります。しかし、19日時点のOIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、市場が織り込む11月までの利下げ確率は約3割に過ぎません。年内の利下げ確率はわずかながら5割を切っています(=メインシナリオは年内据え置き)。26年3月までの利下げは確実視されていますが、少なくとも26年7月までを展望しても追加の利下げは完全には織り込まれていません(確率7割弱)。

BOEの利下げ観測が後退している主な理由は、インフレが根強いことです。6月CPI(消費者物価指数)は、総合が前年比3.6%、エネルギー・食料・酒・タバコを除くコアが同3.7%。いずれも昨年終盤をボトムにジリジリと加速しているようにみえます。

英国CPI

英国のインフレが高い背景は・・・

英国では従来から、ブレグジット(EU離脱)に伴う輸入コストの増加や、移民規制強化による労働力不足などインフレ圧力が根強くありました。そして、25年4月の最低賃金引上げ水道料金の値上げ地方税の引き上げなどが追加的に物価を押し上げているようです。

他の先進国と比較しても、CPIコア(食料とエネルギーを除く)は高めです。とくに英国の場合、昨年終盤をボトムにジリジリと伸び率が高まっているようにみえます。

主要国CPIコア

7月CPIはどうか?
8月のMPCで公表された金融政策報告によれば、BOEはCPIが9月に4.0%でピークをつけ、その後は徐々に伸びが鈍化すると予想しています。本日20日(日本時間15:00)発表の7月CPIがそうした予想を裏付ける結果となるのか、そして利下げ観測は高まるのか、大いに注目されます。

英国の7月CPIの市場予想は、総合が前年比3.7%(6月から加速)、コアが同3.7%(高止まり)。
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

  • 当レポートは、情報提供を目的としたものであり、特定の商品の推奨あるいは特定の取引の勧誘を目的としたものではありません。
  • 当レポートに記載する相場見通しや売買戦略は、ファンダメンタルズ分析やテクニカル分析などを用いた執筆者個人の判断に基づくものであり、予告なく変更になる場合があります。また、相場の行方を保証するものではありません。お取引はご自身で判断いただきますようお願いいたします。
  • 当レポートのデータ情報等は信頼できると思われる各種情報源から入手したものですが、当社はその正確性・安全性等を保証するものではありません。
  • 相場の状況により、当社のレートとレポート内のレートが異なる場合があります。
topへ