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ECB理事会は6回目の利下げ、休止も視野に?

2025/03/07 07:54

【ポイント】
・ECBは利下げを決定したが、追加利下げは微妙になっている模様
・通商政策(関税)や国防費増の影響に不透明感があるため
・ECBとFRBの25年末までの金融政策見通しに大差なし?

ECBは6日の理事会で0.25%の利下げを決定。ただ、これまでの利下げの効果、関税や防衛費の不透明感もあって利下げ休止を求める声も高まっている模様。

6日のOIS(翌日物スワップ)に基づけば、市場が織り込む利下げ回数は、ECBが今回も含めて3.10回、FRBは2.97回とほぼ同じ。ここもとのユーロ/米ドルの上昇はドイツの長期金利上昇が主因ですが、ECBとFRBの金融政策見通しの差からユーロ/米ドルが反落する可能性は低下しているかもしれません。
ECBとFRB金融政策見通し

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ECB6日の理事会において5会合連続で利下げを決定(昨年6月の利下げ開始から6回目)。中銀預金金利を2.75%から2.50%に引き下げました。

声明では、「インフレ鈍化のプロセスは軌道に乗っている。インフレはスタッフの予測通りに進展しており、最新の予測は以前のインフレ見通しとほぼ同じだ」として、予測値を示しました(下表のHICP)。前回は、スタッフ予測がなかったので、「今年のうちにECBの中期目標である2%に回帰する見込みだ」とだけ述べられていました。

ECB経済見通し

声明はまた、「金融政策は有意に抑制的ではなくなっており、新規の借り入れコストは低下し、新規融資は増えている」と指摘。前回の「金融政策は徐々に新規の借り入れコストを下げている」からさらに進んだ表現になりました。

経済見通しでは、25年と26年のGDPが下方修正されました(上表)。背景は、輸出の下方修正と足もとの投資の弱さだとし、一因として通商政策(関税)やその他の政策の不透明さが指摘されました。

フォワードガイダンスは「会合ごとにデータを分析して適切な金融政策を決定する」「特定の政策金利の軌道にコミットしているわけではない」とあり、前回までと同様でした。

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ラガルド総裁は会見で、2%のインフレ目標達成までの時間がやや長くなるとの見解を示しました。そして、ECBは「より漸進的なアプローチ」に移行すると表明。状況が「劇的に」変化しているため、特定の金利の道筋を約束しないと強調しました。

匿名のECB関係者によると、次回4月の理事会では、利下げ継続か休止かを巡ってハト派とタカ派の間で激しい議論になりそうだとのこと。タカ派は、地政学的リスク防衛費増大の影響を見極める必要があると考えているようです。
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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