FRB議長の議会証言に注目、米大統領は鉄鋼・アルミに関税を課す大統領令に署名
2025/02/11 09:10
【ポイント】
・FRB議長の証言では金融政策の先行きについて新たなヒントが示されるか
・トランプ政権による関税についての報道には引き続き要注意
・日本の祝日で流動性が低下、値動きが増幅される可能性も
(欧米市場レビュー)
10日、欧米時間の外為市場では、米ドルが底堅く推移。一時、米ドル/円は152.491円へと上昇し、ユーロ/米ドルは1.03000ドル台、英ポンド/米ドルは1.23600ドル台へと下落しました。米国のトランプ大統領が9日に「米国に輸入する全ての鉄鋼・アルミに25%の関税を課す」と表明したことが、米ドルの支援材料となりました。市場では、関税によって米国内のインフレ圧力が強まるとの見方があります。
ノルウェークローネ/スウェーデンクローナは一時0.97465スウェーデンクローナへと上昇しました。ノルウェーの1月CPI(消費者物価指数)の強い結果がノルウェークローネの支援材料となりました。
CPIの結果は総合指数が前年比2.3%、CPI-ATE(※)が同2.8%。いずれも市場予想(2.2%と2.6%)を上回り、前月の2.2%と2.7%から上昇率が高まりました。
(※)税制改革の影響やエネルギー製品を除いた基礎。コアインフレ率。
中国は予定通り米国からの輸入品の一部に最大15%の追加関税を課す措置を発動しました。
(本日の相場見通し)
本日は、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長が米上院銀行委員会で経済や金融政策について半期に一度の証言を行います(日本時間12日午前0時)。パウエル議長の証言に市場が反応しそうです。
パウエル議長の証言では、FRBの金融政策の先行きについて新たなヒントが示されるかどうかに注目です。
パウエル議長は政策金利を据え置くことを決定した1月28-29日のFOMC(米連邦公開市場委員会)後の会見で「政策金利は以前ほど(景気)抑制的ではないものの、中立水準を明確に上回っている」、「利下げを急ぐ必要はない」などと述べました。
※FOMC後のパウエル議長の会見について詳しくは、1月30日の『ファンダメ・ポイント』[米FOMCは据え置き、タカ派の声明文とハト派の議長会見!?]をご覧ください。
市場では、FRBは6月のFOMCで追加利下げを行うとの観測があります(次回3月と次々回5月のFOMCについては政策金利の据え置きを予想)。本日のパウエル議長の証言によって利下げ観測が市場で後退すれば、米ドルが堅調に推移しそう。米ドル/円や米ドル/カナダドルには上昇圧力が、ユーロ/米ドルや英ポンド/米ドルには下落圧力が加わると考えられます。英ポンド/米ドルは、1月13日安値の1.20983ポンドが下値メドです。
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トランプ米大統領は米東部時間10日、米国に輸入される鉄鋼やアルミに25%の関税を課す大統領令に署名しました。関税は例外なしとされ、カナダやメキシコ・ブラジルなど主要な輸入国に設けられている関税の適用除外措置や無関税枠は廃止されます。
トランプ大統領はまた、「自動車・半導体・医薬品に対する追加関税も検討する」と述べ、貿易相手国が米国製品に課している関税と同じ税率の関税を課す相互関税について「今後2日間に発表する」としました。
トランプ政権による関税についての報道には引き続き要注意です。市場では関税によって米国内のインフレ圧力が強まるとの見方があります。追加報道によってこの見方が一段と強まる場合、米ドル高材料になりそうです。
一方で、世界的な貿易戦争に発展するとの懸念が市場で強まる可能性もあります。その場合、リスクオフ(リスク回避)が強まるとともに、ユーロ/円や豪ドル/円などのクロス円が軟調に推移するかもしれません。
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BOE(英中銀)のベイリー総裁やマン政策委員が本日講演します。
BOEは6日の政策会合で0.25%の利下げを行うことを7対2の賛成多数で決定。決定に反対したマン委員とディングラ委員の2人は、より大幅な0.50%利下げすることを主張しました。
※BOE会合については、7日の『ファンダメ・ポイント』[英中銀の利下げは25年中にあと2回? それとも3回?]にて詳しく解説していますので、ご覧ください。
市場では、BOEは次々回5月の会合で追加利下げを行うとの観測があります(次回3月の会合については政策金利の据え置きを予想)。本日のベイリー総裁やマン委員の講演で追加利下げ観測が市場で後退する場合、英ポンドが堅調に推移しそう。ユーロ/英ポンドの下値メドとして、24年12月19日安値の0.82180ポンドが挙げられます。
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本日は日本が祝日のため、外為市場では参加者が減少して流動性が低下します。突発的なニュースや仕掛け的な動きが出てきた場合には値動きが増幅する可能性があり、注意は必要です。
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