マネースクエア マーケット情報

ゴールドは最高値更新、3Qに投資需要が増加 原油は底堅さも

2024/11/01 10:55

<金は堅調、過去最高値を更新>
今週(10/28─)の米ドル建て金先物は堅調な展開となりました。10月30日に一時2,801ドルを付けて取引時間中の過去最高値を更新。米金利は上昇傾向が続いていますが、米大統領選を前に、大型の景気刺激策などに期待が集まる強気相場が続いています。31日は利益確定売りに押され反落したものの、引き続き金ETF(上場投資信託)などの投資需要が支えるとみられています。

米ドル建て金先物価格の1週間予想レンジ:2,650─2,850ドル
円建て金先物価格の1週間予想レンジ:12,500─14,100円

*第3四半期、金投資需要が大幅増加
今年の7─9月における金総需要は大きく伸びました。世界の中央銀行による金購入が減速したほか、金価格の高騰で宝飾品需要が引き続き減少したものの、金ETFなどの投資需要が大幅に増加。欧米の利下げや、地政学リスクの高まりが背景とみられています。

ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)によると、第3四半期は金の総需要は前年同期比5%増の1,313トンと、第3四半期として過去最高となりました。需要増に押し上げられ、金価格はこの間、過去最高値を更新し続けています。

投資需要は前年同期比132%増の364トン。金ETFが2022年第1四半期以来の資金流入となったことが大幅増の大きな要因です。供給と総需要の差額分から推計されるOTC(店頭取引)投資も同97%増の136トンとなりました。富裕層による購入が続いているとみられています。

一方、世界の中央銀行による金購入は49%減の186トンと減速。年初からの累計では693トンと、年間で1081トンを記録した2022年と同じペースではあるものの、このまま中国などの需要が回復しなければ、3年ぶりに1,000トンの大台を割り込む可能性もあります。

米大統領選(11月5日)が接近してきました。期待されている景気刺激策は金利上昇要因でもあるので、金にとってのマイナス面と表裏一体なのですが、第3四半期でみられたような旺盛な投資需要が続けば、イベント通過後に利益確定売りが出たとしても、「押し目」はまた小さめになるかもしれません。

主体別の金の総需要(2024年7~9月)

*米ドル建て金先物の日足(期間:2023/12/29~2024/10/31)、青:25日移動平均線、黄:200日移動平均線
米ドル建て金先物の日足チャート
(出所:TradingView)


<原油は底堅い展開>
今週のWTI原油先物価格は底堅い展開となりました。週前半は60ドル台後半の推移が続いていましたが、10月31日に70ドルの大台を回復。中東情勢の緊迫化による原油供給減少懸念はやや和らいだものの、産油国の減産縮小延期観測や米在庫減少など需給引き締まり材料が下支えとなりました。

WTI原油先物価格の1週間予想レンジ:1バレル65─74ドル

*需給材料が交錯
地政学リスクへの警戒感がやや和らぎました。中東情勢は依然として緊張感が高いものの、イスラエルによるイランへの報復攻撃が石油関連施設を標的にしなかったことで、原油市場においては供給懸念が後退、価格下落要因となりました。

一方、石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアなどの非加盟国で構成する「OPECプラス」が、12月から予定されている自主減産の縮小を1カ月以上延期する可能性があると、一部で報じられました。「減産の縮小を延期」というのがわかりにくいですが、要は減産が続くので需給は緩まず、価格上昇要因になるということです。

また米国の戦略石油備蓄(SPR)補充計画も原油価格の下支え材料となりました。米エネルギー省(DOE)は28日、戦略石油備蓄(SPR)へ来年5月までに原油最大300万バレルを補充すると発表。2022年、ロシアのウクライナ侵攻で原油価格が高騰したことを受け、備蓄が放出されましたが、その後補充に転じています。

米エネルギー情報局(EIA)が30日に発表した10月25日時点の週間石油在庫統計では、原油在庫が前週比51.5万バレル減少しました。ガソリン在庫は270.7万バレルの減少、留出油も97.7万バレルの減少となりました。需給が引き締まる可能性を意識させるため、こちらも価格上昇要因です。

米大統領選の石油価格への影響は予想しにくいですが、化石燃料(業界)に肩入れするトランプ氏が勝利すれば上昇要因、環境問題を重視するハリス氏が勝利すれば下落要因とみる声が市場では多いようです。

*WTI原油先物の日足(期間:2023/12/27~2024/10/31)、青:25日移動平均線、黄:200日移動平均線
WTI原油先物の日足チャート
(出所:TradingView)


◆本レポートは、執筆者が信頼に値すると判断した情報に基づいて作成されたものです。あくまで情報提供が目的であり、投資に関しましては、投資家ご自身の判断に基づき決定してください。
◆本レポート内の予想やその他の見解は、出所を明記しているものを除き、執筆者個人のものであり、当社のものではありません。したがって、その内容等について当社は責任を負いかねます。また、当社はこれに関するお問い合わせにはお応えいたしかねますのでご了承ください。
◆相場の状況により、当社のレートとレポート内のレートが異なる場合があります。
◆本レポートの内容は予告なく変更される場合があります。
◆本サイトに掲載された内容の著作権は、当社または執筆者(またはその提供元)に帰属します。したがって、無断で使用、複製、改変することを禁じます。

伊賀大記

執筆者プロフィール

伊賀大記(イガダイキ)

  • 当レポートは、情報提供を目的としたものであり、特定の商品の推奨あるいは特定の取引の勧誘を目的としたものではありません。
  • 当レポートに記載する相場見通しや売買戦略は、ファンダメンタルズ分析やテクニカル分析などを用いた執筆者個人の判断に基づくものであり、予告なく変更になる場合があります。また、相場の行方を保証するものではありません。お取引はご自身で判断いただきますようお願いいたします。
  • 当レポートのデータ情報等は信頼できると思われる各種情報源から入手したものですが、当社はその正確性・安全性等を保証するものではありません。
  • 相場の状況により、当社のレートとレポート内のレートが異なる場合があります。
topへ