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米ISM、ADPは景気・雇用の減速を示唆、雇用統計はどうか

2024/09/06 08:06

【ポイント】
・ISM非製造業指数は51.5と前月からほぼ横ばい、0%台のGDPと整合的
・ADP(雇用)統計は前月比9.9万人増、21年初め以来の低い伸び
・重要なカギを握る雇用統計はどうなる?

5日発表の8月ADP雇用統計(以下、ADP統計)や同ISM非製造業景況指数は、前日のJOLTS(労働動態調査)やベージュブック(地区連銀経済報告)などと同様に、労働市場の悪化と景気の鈍化を示唆しました。

■5日付け「JOLTS、ベージュブック、イールドカーブと景気後退!?」もご覧ください。

5日時点のFedWatchによれば、9月17-18日のFOMCについて、市場が織り込む0.25%利下げの確率は59%、0.50%利下げの確率は41%。大幅利下げとの見方が強まっているようです。6日の8月雇用統計や11日の同CPIなどによっては0.50%利下げがメインシナリオ(確率50%超)になるかもしれません。その場合は米ドルに一段と下押し圧力が加わりそうです。

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8月のISM非製造業景況指数は51.5と、前月(51.4)からほぼ横ばい。同指数は4月と6月に50を下回り、サービス業の縮小を示唆しましたが、それらに比べれば堅調でした。ただ、ISMによれば、8月の水準(51.5)が続くとGDP成長率0.8%と整合的とのこと。

先に発表された8月のISM製造業景況指数は47.2と、前月(46.8)とわずかに改善したものの、5カ月連続の50割れで製造業の縮小を示唆。ISMによれば、8月の水準はGDP1.3%と整合的とのこと。製造業・非製造業指数ともにGDPの低い伸びを示唆しました。

ISM景況指数

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8月のADP統計は前月比9.9万人増と、21年1月(0.9万人増)以来の低い伸びとなりました(※)。ADPは民間の給与処理サービスを提供しており、商務省の雇用統計とほぼ同じ方式のデータを公表しています(ただし、民間部門に限る)。雇用統計の1~2日前に発表されるため参考になりますが、月々で見る限り両者の差が大きいケースも散見されます。

※ADPはデータの改定が大きいことで知られています。当初発表ベースだと23年9月が8.9万人増(13.7万人増に改定)でした。また、22年7月から新しい手法を採用しており、それ以前のデータとの連続性はないようです。

ADPと雇用統計

ADP統計と雇用統計の差が比較的小さい23年8月からの1年間でみると、両者の差は平均2.3万人(ADP<雇用)で、標準偏差は5.5万人です。したがって、8月ADP統計に基づく8月雇用統計(NFP民間)の予想は12.2万人増で、68%の確率(±1標準偏差)で6.6万人増~17.7万人増、95%の確率(±2標準偏差)で1.1万人増~23.2万人増の範囲に収まると考えることが可能です。

なお、Bloombergによれば、8月雇用統計のNFP民間の市場予想は14.0万人増なので、市場予想を下回る結果となる可能性がやや高いのかもしれません。
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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