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レイバーデー

2024/09/02 11:21

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【今週のポイント】
・米雇用統計は労働市場に関する懸念を強めるか

・9月2日のレイバーデーが明けると米大統領選挙戦は最終ストレッチ
・総裁会見でBOCの追加利下げ時期の手掛かりが提供されるか

8月23日ジャクソンホールでの公演で、パウエルFRB議長は「政策調整の時は来た」と述べ、9月17-18日のFOMCでの利下げを事実上「予告」しました。市場では利下げ幅0.25%が有力視されていますが、0.50%はないのか。さらに9月以降の利下げペースはどうなるか。FRBは労働市場の悪化を懸念しているため、5日の先週分の新規失業保険申請件数や6日の8月雇用統計が大いに注目されます(+5日のADP雇用統計も!?)。

労働市場の悪化が示唆されれば、利下げ観測の高まりは株価にプラスになりそうです。ただし、労働市場、ひいては景気が急速に悪化しているとの見方につながれば、株価にとってマイナスであり、為替市場でもリスクオフの動きが強まるかもしれません。

今週の主要経済指標・イベント

毎年9月第1月曜日は米国のレイバーデーで祝日。「労働者の日」とされるこの日が明けた火曜日(今年は2日)から大統領選挙戦が最後のストレッチに入ります。大統領選挙の投票日は11月の第1月曜日の翌火曜日(2日~8日のいずれか。今年は5日)に決まっているので、残り丸2カ月の勝負となります。

最新のRealClearPoliticsの集計によれば、接戦のペンシルベニア州での支持率で、ハリス氏がトランプ氏を逆転しました。仮にきょう投票が行われたら、ハリス氏が勝利に必要な選挙人の過半数(270人以上)を獲得するとの試算も可能です。

もっとも、大統領選は最後まで予測困難な状況が続くかもしれません。10日のTV討論会等を経て市場では為替相場に関する思惑が錯綜しそうです。<西田>

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今週は、雇用統計など米国の経済指標が多く発表されます。米経済指標の結果を受けて米FRBの大幅な利下げ観測が後退する場合、米ドルが全般的に堅調に推移して、豪ドル/米ドルやNZドル/米ドルには下押し圧力が加わりそうです。

米ドル/カナダドルについては、4日のBOC(カナダ中銀)の政策会合にも注目です。BOCは利下げを行うとみられ、注目点は総裁会見で追加利下げの時期についての手掛かりが示されるかどうかです。

メキシコペソについては、司法制度改革をめぐるメキシコ議会の動きに注意が必要です。司法制度改革によって司法の独立性が脅かされると市場は懸念しており、それが足もとのメキシコペソ軟調の主な要因となっています。司法制度改革案は9月1日に開会した議会で最終審議が行われるとみられます。司法制度改革案が成立に向けて一段と前進する場合、メキシコペソが下押しする可能性があります。

主要国の株価動向も材料になるかもしれません。8月30日の米株式市場ではダウが史上最高値をつけました。米国など主要国の株価が上昇を続ければ、リスクオン(リスク選好)の動きが強まるとともに、クロス円が堅調に推移する可能性があります。<八代>

今週の注目通貨ペア①:<米ドル/円 予想レンジ:141.500円~150.000円>
9月1日時点のCME(シカゴ・マーカンタイル取引所)のFedWatchによれば、市場は9月17-18日のFOMCでの利下げを100%織り込んでいます。利下げ幅の予想は0.25%が67%、0.50%が33%です。6日の8月雇用統計によって利下げ幅の予想がどう変化するか。労働市場の悪化が懸念されれば、0.50%利下げ観測が高まり、米ドルの重石になりそうです。

8月30日時点のOIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、市場は24年中に計0.957%の利下げを織り込んでいます。3回のFOMCで0.25%×4回分の利下げをほぼ織り込んだ形。つまり、いずれか1回は0.50%幅になるとの見方が有力です。また、市場は25年7月までの8回のFOMCで1.964%(≒0.25%×8回)の利下げを織り込んでいます。

8月30日時点のアトランタ連銀のGDPNow(短期予測モデル)によれば、今年7‐9月期のGDPは前期比年率2.5%と堅調が予想されています。PCE(個人消費支出)が同3.8%伸び、GDPを2.6%分押し上げる(=寄与度2.6%)との計算です。今後、景気が大幅に鈍化して、市場が織り込むFRBのアグレッシブな利下げが正当化されるのか。それとも、景気が底堅さを維持することで、市場の観測が修正されるのか。後者の場合は、長期金利の上昇などを伴って米ドル/円の上昇要因となりそうです。<西田>

今週の注目通貨ペア②:<豪ドル/NZドル 予想レンジ:1.08000NZドル~1.09500NZドル>
豪ドル/NZドルは8月16日に一時1.10515NZドルへ上昇した後に反落し、同29日には1.07968NZドルへと下落する場面がありました。

RBA(豪中銀)とRBNZ(NZ中銀)の金融政策面からみれば、豪ドル/NZドルには上昇圧力が加わりやすいと考えられます。それにもかかわらず、豪ドル/NZドルが反落した主な要因としては、(1)豪ドル/米ドルとNZドル/米ドルの変動幅の差、(2)NZの企業信頼感指数(8/29発表)の改善が挙げられます。

(1)豪ドル/NZドルの為替レートは“豪ドル/米ドル÷NZドル/米ドル”で算出されます。市場の関心が米FRBの金融政策へと向かう中で米FRBの利下げ観測から米ドルが全般的に軟調に推移しました。豪ドルとNZドルのいずれも対米ドルで堅調に推移したものの、NZドル/米ドルの上昇幅の方が大きかったことが、豪ドル/NZドルを下押ししたと考えられます。(2)NZの8月企業景況感指数は50.6と、7月の27.1から上昇し、およそ10年ぶりの高い水準となりました。

今週は豪州の4-6月期GDP(国内総生産。4日発表)やブロックRBA総裁の講演(5日)が、豪ドル/NZドルの材料になりそうです。GDPが市場予想の前期比0.2%を上回る結果になるなどしてRBAの利下げ観測が後退する場合、豪ドル/NZドルは反発する可能性があります。<八代>

今週の注目通貨ペア③:<米ドル/カナダドル 予想レンジ:1.34000カナダドル~1.36000カナダドル>
今週の米ドル/カナダドルは、BOC(カナダ中銀)政策会合(4日)や米国の経済指標が材料になりそうです。

BOC会合については、3会合連続で利下げすることが決定されそう。利下げ幅は6月と7月と同じく0.25%になると考えられます。その通りの結果になれば、BOCの声明や会合後に行われるマックレム総裁の会見に注目です。市場では10月と12月の会合でも利下げが行われるとの観測があります(11月は会合なし)。声明や総裁会見がその観測を補強する内容になれば、カナダドル安材料になりそうです。

それに加えて、米国の雇用統計(6日)などを受けて9月17-18日の米FOMCにおける0.50%の利下げ観測が後退する場合(米ドルにとってプラス)、米ドル/カナダドルは200日移動平均線(2日時点で1.35856カナダドル)に向かって上昇しそうです。<八代>

八代和也

執筆者プロフィール

八代和也(ヤシロカズヤ)

シニアアナリスト

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