ゴールドは最高値更新、原油は下げ止まりか 米経済指標に一喜一憂
2024/08/23 11:46
<金は堅調、米金利低下で>
今週(8/19─)の米ドル建て金先物は堅調な展開となりました。20日に一時2,570ドルを付け過去最高値を更新した後も利益確定売りは限定的で上昇基調が続いています。0.5%の米大幅利下げ観測は後退しましたが、米雇用統計の下方修正などで米金利が低下。足元は米金利がやや上昇しているものの、利息の付かない金にはポジティブな環境となっています。
米ドル建て金先物価格の1週間予想レンジ:2,400─2,550ドル
円建て金先物価格の1週間予想レンジ:11,000─12,300円
*米雇用統計の年次改定
今週、市場の注目を集めたのが、米雇用統計の年次改定でした。非農業部門雇用者数がしばしば市場予想から大きく乖離する米雇用統計ですが、後で改定も行われます。詳しい改定方法の説明は省きますが、サンプルからの推計値を州の納税データなどに基づき修正します。
今回、昨年4月から今年3月までの1年間の数字が見直されました。事前に市場では100万人の下方修正があるのではないかとの見方も出ていましたが、結果は81.8万人の下方修正。これにより3月までの1年間の月平均は17.4万人増と改定前の24.2万人増から引き下げられました。
下方修正幅は警戒されていた100万人を下回りましたが、改定後の月平均雇用者数が大きく引き下げられたことで、22日の米国市場では米労働市場悪化への警戒感が強まり、米金利が低下。金にはプラス材料となりました。
ただ、これも暫定値で、確報値が発表されるのは来年2月の1月米雇用統計発表時になります。昨年は23年3月までの1年間分が下方修正されましたが、23年の暦年1年間分は逆に上方修正されました。
市場では、9月の利下げはほぼ確実視されており、利下げ幅や今後の利下げ回数などに焦点が移っています。パウエルFRB(米連邦準備理事会)議長が言うようにデータ次第とみられることから、経済指標への注目度も引き続き高そうです。
*米ドル建て金先物の日足(期間:2023/12/19~2024/8/22)、青:25日移動平均線、黄:200日移動平均線

(出所:TradingView)
<原油は軟調、下げ止まり感も>
今週のWTI原油先物価格は軟調な展開となりました。下げ基調にあった原油市場は地合いが弱く、米雇用統計の下方改定で米景気に対する懸念が台頭。21日に71ドル前半と、約6カ月ぶりの安値を付けました。ただ、その後は値ごろ感からの買いも入り、下げ止まりの様相もみせています。
WTI原油先物価格の1週間予想レンジ:1バレル70─78ドル
*週次の米経済指標に一喜一憂
米新規失業保険申請件数は毎週木曜日に発表されるデータです。失業者が新たに申請した失業保険給付の件数を集計して米労働省が発表する労働市場の先行指標ですが、あくまで週次のデータです。
このため通常はマーケットもそれほど大きくは反応しませんが、最近は過敏とも思える反応が目立ちます。2日に発表された7月米雇用統計が弱く米景気に対する懸念が台頭しましたが、
8日に発表された米新規失業保険申請件数が約11カ月ぶりの大幅な減少となり、株価や原油価格が反発。「令和版ブラックマンデー」で悪化した投資家心理が改善しました。
前日22日の海外市場でも、8月17日までの1週間の新規失業保険申請件数(季節調整済み)が市場予想を上回ったとして材料視されました。米金融緩和の積極化観測からエネルギー需要拡大期待につながり原油価格上昇の一因となりました。引き続き米経済指標に神経質になっている様子がうかがわれ、原油価格はいったん下げ止まっているものの、不安定さも感じさせる展開です。
*地政学リスク、米原油在庫
パレスチナ自治区ガザの停戦を巡る交渉が続いています。インドなど仲介役が停戦を模索し続けていますが、合意に至るかは依然不透明です。米国もイスラエルとガザのイスラム組織ハマスに調停案を示しましたが、ハマス側が難色を示していると伝えられています。
ウクライナ情勢も依然緊張感が高い状態です。ロシアとウクライナは今月、カタールに代表団を派遣して互いのエネルギー関連施設への攻撃を停止する部分的停戦を話し合う予定があったものの、ウクライナ軍によるロシア西部クルスク州への越境攻撃で頓挫したと報じられています。
米エネルギー情報局(EIA)が21日に発表した16日時点の週間石油在庫統計で、原油在庫は前週比464.9万バレルの減少となりました。2週ぶりの減少です。ガソリン在庫と留出油も2週連続で減少。前週は7週ぶりに原油在庫が増加しましたが、今週は再び減少となり、需給タイト化期待が原油価格を支えています。
*WTI原油先物の日足(期間:2023/12/18~2024/8/22)、青:25日移動平均線、黄:200日移動平均線

(出所:TradingView)
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今週(8/19─)の米ドル建て金先物は堅調な展開となりました。20日に一時2,570ドルを付け過去最高値を更新した後も利益確定売りは限定的で上昇基調が続いています。0.5%の米大幅利下げ観測は後退しましたが、米雇用統計の下方修正などで米金利が低下。足元は米金利がやや上昇しているものの、利息の付かない金にはポジティブな環境となっています。
米ドル建て金先物価格の1週間予想レンジ:2,400─2,550ドル
円建て金先物価格の1週間予想レンジ:11,000─12,300円
*米雇用統計の年次改定
今週、市場の注目を集めたのが、米雇用統計の年次改定でした。非農業部門雇用者数がしばしば市場予想から大きく乖離する米雇用統計ですが、後で改定も行われます。詳しい改定方法の説明は省きますが、サンプルからの推計値を州の納税データなどに基づき修正します。
今回、昨年4月から今年3月までの1年間の数字が見直されました。事前に市場では100万人の下方修正があるのではないかとの見方も出ていましたが、結果は81.8万人の下方修正。これにより3月までの1年間の月平均は17.4万人増と改定前の24.2万人増から引き下げられました。
下方修正幅は警戒されていた100万人を下回りましたが、改定後の月平均雇用者数が大きく引き下げられたことで、22日の米国市場では米労働市場悪化への警戒感が強まり、米金利が低下。金にはプラス材料となりました。
ただ、これも暫定値で、確報値が発表されるのは来年2月の1月米雇用統計発表時になります。昨年は23年3月までの1年間分が下方修正されましたが、23年の暦年1年間分は逆に上方修正されました。
市場では、9月の利下げはほぼ確実視されており、利下げ幅や今後の利下げ回数などに焦点が移っています。パウエルFRB(米連邦準備理事会)議長が言うようにデータ次第とみられることから、経済指標への注目度も引き続き高そうです。
*米ドル建て金先物の日足(期間:2023/12/19~2024/8/22)、青:25日移動平均線、黄:200日移動平均線

(出所:TradingView)
<原油は軟調、下げ止まり感も>
今週のWTI原油先物価格は軟調な展開となりました。下げ基調にあった原油市場は地合いが弱く、米雇用統計の下方改定で米景気に対する懸念が台頭。21日に71ドル前半と、約6カ月ぶりの安値を付けました。ただ、その後は値ごろ感からの買いも入り、下げ止まりの様相もみせています。
WTI原油先物価格の1週間予想レンジ:1バレル70─78ドル
*週次の米経済指標に一喜一憂
米新規失業保険申請件数は毎週木曜日に発表されるデータです。失業者が新たに申請した失業保険給付の件数を集計して米労働省が発表する労働市場の先行指標ですが、あくまで週次のデータです。
このため通常はマーケットもそれほど大きくは反応しませんが、最近は過敏とも思える反応が目立ちます。2日に発表された7月米雇用統計が弱く米景気に対する懸念が台頭しましたが、
8日に発表された米新規失業保険申請件数が約11カ月ぶりの大幅な減少となり、株価や原油価格が反発。「令和版ブラックマンデー」で悪化した投資家心理が改善しました。
前日22日の海外市場でも、8月17日までの1週間の新規失業保険申請件数(季節調整済み)が市場予想を上回ったとして材料視されました。米金融緩和の積極化観測からエネルギー需要拡大期待につながり原油価格上昇の一因となりました。引き続き米経済指標に神経質になっている様子がうかがわれ、原油価格はいったん下げ止まっているものの、不安定さも感じさせる展開です。
*地政学リスク、米原油在庫
パレスチナ自治区ガザの停戦を巡る交渉が続いています。インドなど仲介役が停戦を模索し続けていますが、合意に至るかは依然不透明です。米国もイスラエルとガザのイスラム組織ハマスに調停案を示しましたが、ハマス側が難色を示していると伝えられています。
ウクライナ情勢も依然緊張感が高い状態です。ロシアとウクライナは今月、カタールに代表団を派遣して互いのエネルギー関連施設への攻撃を停止する部分的停戦を話し合う予定があったものの、ウクライナ軍によるロシア西部クルスク州への越境攻撃で頓挫したと報じられています。
米エネルギー情報局(EIA)が21日に発表した16日時点の週間石油在庫統計で、原油在庫は前週比464.9万バレルの減少となりました。2週ぶりの減少です。ガソリン在庫と留出油も2週連続で減少。前週は7週ぶりに原油在庫が増加しましたが、今週は再び減少となり、需給タイト化期待が原油価格を支えています。
*WTI原油先物の日足(期間:2023/12/18~2024/8/22)、青:25日移動平均線、黄:200日移動平均線

(出所:TradingView)
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