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米雇用統計は軟調も、年内0.5%×2回利下げは織り込みすぎ!?

2024/08/03 07:29

【ポイント】
・7月NFPは市場予想を下回り、失業率は0.2ポイント上昇
・市場の利下げ観測が強まり、年内0.5%×2回利下げとの予想も
・長期金利は3.7%台まで大幅低下、米ドル/円は146円台半ばまで下落
・雇用統計はハリケーンの影響もあり、そこまで悪くない!?

米国の7月雇用統計は軟調。7月30-31日のFOMCでは、声明文に雇用軟化のリスクが明示されていたこともあって()、米長期金利(10年物国債利回り)は大幅に低下して、年初来最低の3.7%台で週を終えました。米ドル/円は146円台半ばまで下落しました。

■1日付け「タカ派日銀会合+ハト派FOMC=150円割れ」をご覧ください。今回の声明文では、フォワードガイダンスの一部に「(雇用最大化と物価安定という)二大使命の両方のリスクに注意する」とあり、前回までの「インフレのリスクに十分注意する」から変化していました。

米長期金利 日足

米長期金利 ティック

2日時点のOIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、市場が織り込むFOMCでの利下げ幅は「9月に-0.406%、11月までに-0.834%、12月までに-1.109%、25年1月までに-1.358%」。0.25%刻みの利下げ幅を前提とすれば、いくつかの組み合わせが考えられます。例えば、「少なくとも、9月に-0.25%、11月に-0.50%、12月に-0.25%・・」など。市場では、「年内に0.50%×2回利下げ」との予想も浮上しています。

もっとも、7月雇用統計を受けて、労働市場に急ブレーキがかかったと判断するのは時期尚早でしょう。コロナ禍からの回復期を除けば、10万人超の雇用増加ペースは悪くないと言えます。一時的にハリケーンの影響を受けた可能性も指摘されています。その場合、反動もあって8月雇用統計(9/6発表)は比較的良好な結果になるかもしれません。

9月17-18日のFOMCまでによほどのサプライズがない限り、そこでの利下げはかなり確率が高いとみられますが、それが0.25%なのか、それとも0.50%か。今後の材料次第で思惑が錯綜しそうです。

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7月雇用統計は8日にテキサス州湾岸部に上陸したハリケーン・ベリルの影響を受けた可能性があります。労働省は「判別可能な影響はなかった」としています。ただ、家計調査では、悪天候のために職場に行けなかったとの回答が7月として過去最多の43.6万人に達したとのこと。NFPの押し下げや失業率の押し上げ、週平均労働時間の短縮につながった可能性はあるでしょう。

事業所調査のNFP(非農業部門雇用者数)は前月比11.4万人増と、市場予想(17.5万人増)を下回りました。過去3カ月の平均は16.8万人増/月で、これは21年1月以来の弱い伸びとなった前月に次ぐ弱さでした。ただし、コロナ・ショック前の17-19年の雇用増加ペース17.7万人増/月と大差はありません。

非農業部門雇用者数

時間当たり賃金は前年比3.6%増で、ジリジリと鈍化していますが、インフレ率(6月PCEコアは前年比2.6%)を上回っています(=実質賃金の伸びはプラス)。また、<雇用者数×週平均労働時間×時間当たり賃金>で求められる総賃金指数は前月から横ばいで、前年比4.8%。ただ、週平均労働時間が0.3%減少したのはハリケーンの影響かもしれません。

米雇用統計 時間当たり賃金

米雇用統計 総賃金

家計調査に基づく失業率は4.3%と前月の4.1%から0.2%上昇。ただし、7月の失業率は厳密には4.25%。失業者が約5,000人少なければ(ハリケーンの影響がなければ?)、失業率の悪化は0.1%にとどまっていたはずです。労働参加率<(雇用者数+失業者数)/生産年齢人口>は62.7%と、小幅に上昇しました。労働参加率は昨年後半以降ほぼ横ばいで推移しており、ピークは62.8%です。コロナ・ショック後の回復(上昇)段階は終了したのかもしれません。

米雇用統計 失業率

米雇用統計 労働参加率

■8月21日に全数調査の暫定結果発表
通常の事業所調査は給与記録に基づくサンプル調査ですが、年に1度3月に失業保険支払い記録に基づく全数調査が行われます。今年は8月21日に暫定結果が公表されるようです。最終的には25年2月に発表される1月雇用統計に反映されます。結果次第では労働市場に対する認識に影響が出る可能性があります。
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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