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ゴールドは底堅い、原油は伸び悩み 「新札発行でタンス預金は動くか」

2024/06/28 12:13

<金は押し目買いでしっかり>
今週(6/24─)の米ドル建て金先物は底堅く推移しています。米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ開始が遅くなるとの見方から米長期金利が一時上昇。利息の付かない金には逆風となりました。ただ、5月以降の下値抵抗ラインである2,300ドル付近に下落すると押し目買いが入り、下げ渋る展開となっています。

米ドル建て金先物価格の1週間予想レンジ:2,250─2,400ドル
円建て金先物価格の1週間予想レンジ:11,200─12,400円

*FRB、利下げの見方分かれる
6月11─12日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で示されたドットチャート(金利・経済見通し)によると、政策当局者が2024年は1回の利下げを想定していることが示されました。前回3月は3回予想でした。

ただ、あくまでこれは大勢見通し。19人の政策当局者の回答における中央値(端から数えてちょうど真ん中の数値)にすぎません。中央値は年1回の利下げでしたが、最頻値(最も多かった回答)は年2回予想でした。

実際、最近の幹部の発言をみても、利下げに関してはFRB内で見方がかなり分かれているようです。

ボウマンFRB理事は25日、インフレ見通しに関していくつかの上振れリスクがみられると指摘し、政策金利をしばらくの間、高水準に維持する必要があるとの考えを示しました。従来の主張の繰り返しでしたが、米債売りの一因となりました。

一方、クックFRB理事は25日に、FRBの現在の金融政策は「引き締め的」との見方を示し、「ある時点で政策の制約的な度合いを引き下げることが適切になる」と述べています。

次回FOMCは7月30─31日。まだ1カ月以上あります。経済指標や要人発言に米金利が左右され、それに伴い金価格も振れる展開がしばらく続きそうです。

*米ドル建て金先物の日足(期間:2023/10/20~2024/6/27)、青:25日移動平均線、黄:200日移動平均線
米ドル建て金先物の日足チャート
(出所:TradingView)


<原油は上値重い展開>
今週のWTI原油先物価格は上値が重い展開となりました。27日に一時82.04ドルと4月30日以来の高値を付けましたが、82ドル付近では伸び悩む傾向が続いています。地政学リスクは依然高いものの、米原油在庫の増加で需給軟化が意識されており、節目付近では利益確定売りが出やすくなっています。

WTI原油先物価格の1週間予想レンジ:1バレル78─84ドル

*米原油在庫が増加
米エネルギー情報局(EIA)が26日に発表した21日時点の週間石油在庫統計で、原油在庫は前週比359.1万バレルの増加。減少の市場予想に反して2週ぶりの増加となりました。ガソリンも2週ぶり増加。留出油は2週連続で在庫が減少しましたが小幅でした。

米原油在庫は直近3週で増減を繰り返しており、均してみれば横ばいとみることもできます。夏のレジャーシーズンに向けて石油関連の需給がタイトになるとの期待が後退したわけではありませんが、原油価格の上値を押さえる材料となりました。

一方、地政学リスクへの警戒感が原油価格の下支え要因となっています。イスラエルとレバノンのイスラム教シーア派勢力ヒズボラの戦闘が激化する懸念が強まるなど、中東情勢は依然予断を許しません。

*WTI原油先物の日足(期間:2023/10/2~2024/6/27)、青:25日移動平均線、黄:200日移動平均線
WTI原油先物の日足チャート
(出所:TradingView)


<今週のトピック:新札発行と金需要、タンス預金の行方は>

7月3日から新紙幣が発行されます。1万円札には渋沢栄一、5千円札には津田梅子、千円札には北里柴三郎の肖像が載ります。紙面には10000といった洋数字が大きく記されているのが特徴であり、いまや7兆円にも達したインバウンド需要を担う訪日外国人も判別しやすい作りになっています。

経済効果は1.6兆円になるとの試算も出ています。新紙幣導入に伴い両替機などを新しく買い替えなくてはいけないので、それらを作っているメーカーには経済効果が発生します。最近はコンビニやスーパーなどのレジ自動化が進んでいることから更新需要は以前より大きなものになりそうです。

一方、レジなどを購入する方としてはコストになります。結構な負担ですが、新札発行の第一の目的は偽造防止。約20年に1度のペースで行われているのは、偽造技術のレベルも年々上がってくるので、紙幣の偽造防止技術もそれに合わせて向上させていかなければならないのです。

今回の新札には、偽造防止技術として肖像が3次元に見えて回転する「ホログラム」などが使われています。銀行券への採用は世界初だそうです。

新札発行で「タンス預金」が動き出すことも期待されています。家庭内に保管されている現金は、総額30─80兆円にのぼるとも言われ、そのうち一部でも消費や投資に回れば経済に対しプラスに働きます。

ただ、やはり家に一定の資産を置いておくニーズはなくならないでしょう。

家庭内に保管する資産としては金(ゴールド)も有力です。「タンス預金」も金も利息を生みませんが、現状でみれば、インフレで減価懸念がある現金よりも、値上がり期待のある金の方が魅力的と感じる方も少なくないかもしれません。

場所をとらないことも金の魅力です。1億円を札束で保管しようとすれば、38cm×32cm×10cm(約10㎏)のスペースが必要ですが、金の延べ棒(ラージバー)なら25cm×6.4cm×4cm(約12.5㎏)で約1億5000万円になります。約19分の1のサイズですね。

もちろん小さければ、それだけ盗難リスクも高まります(かなり重いですが)が、タンス預金の代替先として金需要が高まるかも新札発行で注目されるポイントです。


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伊賀大記

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伊賀大記(イガダイキ)

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