英国財政事情、トラス・ショックの悪夢再び??
2025/01/14 07:56
【ポイント】
・英国で株安・国債安・ポンド安の「トリプル安」が示現
・22年秋のトラス・ショックほどの規模には達していないものの・・
・英労働党政権に対する市場の信任が低下すれば、一段の「トリプル安」も
25年に入って英ポンドが主要通貨に対して全面安になっています。背景は、英労働党スターマー政権の財政政策に関する懸念です。
米国をはじめ主要国の長期金利(10年物国債利回り)が上昇するなか、英長期金利の上昇が目立っています。財政収支の悪化を懸念した「悪い金利上昇」の部分もあり、先週10日と13日には株価も下落する「トリプル安」の症状をみせています。
足もとで英米長期金利差(英-米)は拡大・・・・

現在の状況は22年秋の「トラス・ショック」ほど深刻ではありませんが、英ポンドや国債、株式の更なる下落を懸念する声も聞かれます。
以下では、BloombergのQuickTakeを参考にトラス・ショックと現状を比較し考察します。
*******
トラス・ショックとは
保守党ジョンソン首相の後を継いだトラス首相は、22年9月にミニ予算を発表しました。それが450億ポンドの財源不明の減税を含んでいたこと、さらに当時のクワーテング財務相が追加的な減税を示唆したことで、株安・国債安(金利高)・英ポンド安のトリプル安を招きました。そして、トラス首相は在任期間49日の史上最短で辞職に追い込まれました。この間、BOE(英中銀)は国債買い支えに動いたようです。
トラス・ショックと現在の違い
今回の長期金利上昇は、米国に引っ張られた面も大きいと言えます。米長期金利の上昇は主に景気の堅調やインフレ改善の遅れ、利下げ観測の後退を反映しています。英長期金利の上昇や英ポンドの下落は当時ほどの規模ではなく、また英財務省は慎重に財政政策を運営すると強調して市場の懸念の沈静化に努めています。
とはいえ・・・
英国の債務は増大傾向にあります(他の先進国も同様かもしれませんが)。長期金利の上昇により国債費(歳出の一項目)が増加すれば、財政赤字は拡大するでしょう。追加的な歳出の削減や増税が必要になる可能性もあるなかで、リーブス財務相は11日に昨年10月の予算で示した財政ルールに「交渉の余地はない」との頑(かたく)なな姿勢を示しました。労働党政権の政策、とりわけ財政政策に対する市場の信任が一段と低下すれば、「トリプル安」が進行する可能性もなくはないでしょう。
・英国で株安・国債安・ポンド安の「トリプル安」が示現
・22年秋のトラス・ショックほどの規模には達していないものの・・
・英労働党政権に対する市場の信任が低下すれば、一段の「トリプル安」も
25年に入って英ポンドが主要通貨に対して全面安になっています。背景は、英労働党スターマー政権の財政政策に関する懸念です。
米国をはじめ主要国の長期金利(10年物国債利回り)が上昇するなか、英長期金利の上昇が目立っています。財政収支の悪化を懸念した「悪い金利上昇」の部分もあり、先週10日と13日には株価も下落する「トリプル安」の症状をみせています。
足もとで英米長期金利差(英-米)は拡大・・・・

現在の状況は22年秋の「トラス・ショック」ほど深刻ではありませんが、英ポンドや国債、株式の更なる下落を懸念する声も聞かれます。
以下では、BloombergのQuickTakeを参考にトラス・ショックと現状を比較し考察します。
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トラス・ショックとは
保守党ジョンソン首相の後を継いだトラス首相は、22年9月にミニ予算を発表しました。それが450億ポンドの財源不明の減税を含んでいたこと、さらに当時のクワーテング財務相が追加的な減税を示唆したことで、株安・国債安(金利高)・英ポンド安のトリプル安を招きました。そして、トラス首相は在任期間49日の史上最短で辞職に追い込まれました。この間、BOE(英中銀)は国債買い支えに動いたようです。
トラス・ショックと現在の違い
今回の長期金利上昇は、米国に引っ張られた面も大きいと言えます。米長期金利の上昇は主に景気の堅調やインフレ改善の遅れ、利下げ観測の後退を反映しています。英長期金利の上昇や英ポンドの下落は当時ほどの規模ではなく、また英財務省は慎重に財政政策を運営すると強調して市場の懸念の沈静化に努めています。
とはいえ・・・
英国の債務は増大傾向にあります(他の先進国も同様かもしれませんが)。長期金利の上昇により国債費(歳出の一項目)が増加すれば、財政赤字は拡大するでしょう。追加的な歳出の削減や増税が必要になる可能性もあるなかで、リーブス財務相は11日に昨年10月の予算で示した財政ルールに「交渉の余地はない」との頑(かたく)なな姿勢を示しました。労働党政権の政策、とりわけ財政政策に対する市場の信任が一段と低下すれば、「トリプル安」が進行する可能性もなくはないでしょう。

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