ゴールドがしっかり、今年も中銀需要に期待 原油は反転上昇基調
2024/06/21 11:37
<金は下値切り上げる展開>
今週(6/17─)の米ドル建て金先物はしっかりした展開でした。上値はやや重いものの、2,300ドル台で下値を切り上げています。市場予想を下回った5月米小売売上高など弱めの経済指標を背景に、米金利の低下傾向が続いているほか、中央銀行による購入継続期待も下支え要因となっています。
米ドル建て金先物価格の1週間予想レンジ:2,250─2,450ドル
円建て金先物価格の1週間予想レンジ:11,200─12,600円
*金購入に積極的な中銀が増加
中国人民銀行(中央銀行)の金購入が5月、約1年半ぶりにストップしたことが明らかになり、金価格が急落(6月7日)しました。しかし、市場では人民銀の購入停止は一時的との見方が多いほか、世界の中央銀行全体でみれば金購入は今年も続くとの見通しが依然として大勢のようです。
ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)が今月18日に公表した調査によると、中央銀行(回答70)の29%が今後12カ月で金準備を増やす意向を示しています。変化なしが68%と過半を占めているものの、増加方針は19年の8%から上昇傾向が続いています。
一方、世界の中央銀行が今後12カ月間で金の保有量はどのように変化すると予想するかという質問に対しては、81%が増加と回答。19%が変化なしで減少はゼロでした。自分のところはあまり変わらないが、自分以外の中銀が金準備を増やしそうだとみている中銀が多いということになります。
金保有の決定要因としては、新興国の中銀は23年とあまり変わりませんが、先進国の中銀では変化がみられました。「Long-term store of value/Inflation hedge(長期的資産価値/インフレヘッジ)」が27%から83%に、「Performance during times of crisis(危機時のパフォーマンス)」が64%から83%に上昇しています。「No default risk」も45%から67%に上がっており、インフレや金融危機への警戒感が高まってきたことがうかがわれます。
WGCのデータによると、世界の中銀による金購入は過去最高だった2022年の1,082トンに続き、23年も1,037トンと過去2番目の高水準でした。24年も米ドル建て金先物価格は年初から約13%上昇しており、その要因の1つには中銀の金購入継続が挙げられています。
*米ドル建て金先物の日足(期間:2023/10/10~2024/6/20)、青:25日移動平均線、黄:200日移動平均線

(出所:TradingView)
<原油は反転上昇基調継続>
今週のWTI原油先物価格は反転上昇基調が続いています。20日は1バレル81ドル台まで上昇。5月1日以来、約1カ月半ぶりの高値水準を回復してきました。需給改善期待に加え、中東やウクライナでの緊張感が強まる中、地政学リスクが再び意識されてきており、200日移動平均線を突破し、上値追いの様相となっています。
WTI原油先物価格の1週間予想レンジ:1バレル77─84ドル
*米在庫減少、地政学リスクも
米エネルギー情報局(EIA)が20日に発表した14日時点の週間石油在庫統計で、原油在庫は前週比254.7万バレル減少しました。3週ぶりの減少で、市場予想以上の減少です。ガソリンは4週ぶり、留出油は5週ぶりに在庫が減少。夏のレジャーシーズンに向けて石油関連の需給がタイトになるとの期待が高まっています。

地政学リスクに対する緊張感も再び高まってきました。イスラエル軍は、隣国レバノンに拠点を置くイスラム教シーア派組織ヒズボラに対する軍事作戦計画を承認したと伝えられています。パレスチナ以外にも紛争が拡大する可能性が出てきたことで、マーケットは警戒心を一段上に引き上げた格好です。
イスラエルでは戦時内閣が解散したとされており、対パレスチナで強硬姿勢を示す極右勢力の発言力が高まる可能性があるとみられています。
一方、ロシアでも、ロシアの南部ロストフ州アゾフで18日にドローンによる攻撃があり、石油貯蔵タンク数基に火災が発生したと報じられました。ロシアの原油輸出に対する影響が懸念されています。
*WTI原油先物の日足(期間:2023/10/9~2024/6/20)、青:25日移動平均線、黄:200日移動平均線

(出所:TradingView)
◆本レポートは、執筆者が信頼に値すると判断した情報に基づいて作成されたものです。あくまで情報提供が目的であり、投資に関しましては、投資家ご自身の判断に基づき決定してください。
◆本レポート内の予想やその他の見解は、出所を明記しているものを除き、執筆者個人のものであり、当社のものではありません。したがって、その内容等について当社は責任を負いかねます。また、当社はこれに関するお問い合わせにはお応えいたしかねますのでご了承ください。
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今週(6/17─)の米ドル建て金先物はしっかりした展開でした。上値はやや重いものの、2,300ドル台で下値を切り上げています。市場予想を下回った5月米小売売上高など弱めの経済指標を背景に、米金利の低下傾向が続いているほか、中央銀行による購入継続期待も下支え要因となっています。
米ドル建て金先物価格の1週間予想レンジ:2,250─2,450ドル
円建て金先物価格の1週間予想レンジ:11,200─12,600円
*金購入に積極的な中銀が増加
中国人民銀行(中央銀行)の金購入が5月、約1年半ぶりにストップしたことが明らかになり、金価格が急落(6月7日)しました。しかし、市場では人民銀の購入停止は一時的との見方が多いほか、世界の中央銀行全体でみれば金購入は今年も続くとの見通しが依然として大勢のようです。
ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)が今月18日に公表した調査によると、中央銀行(回答70)の29%が今後12カ月で金準備を増やす意向を示しています。変化なしが68%と過半を占めているものの、増加方針は19年の8%から上昇傾向が続いています。
一方、世界の中央銀行が今後12カ月間で金の保有量はどのように変化すると予想するかという質問に対しては、81%が増加と回答。19%が変化なしで減少はゼロでした。自分のところはあまり変わらないが、自分以外の中銀が金準備を増やしそうだとみている中銀が多いということになります。
金保有の決定要因としては、新興国の中銀は23年とあまり変わりませんが、先進国の中銀では変化がみられました。「Long-term store of value/Inflation hedge(長期的資産価値/インフレヘッジ)」が27%から83%に、「Performance during times of crisis(危機時のパフォーマンス)」が64%から83%に上昇しています。「No default risk」も45%から67%に上がっており、インフレや金融危機への警戒感が高まってきたことがうかがわれます。
WGCのデータによると、世界の中銀による金購入は過去最高だった2022年の1,082トンに続き、23年も1,037トンと過去2番目の高水準でした。24年も米ドル建て金先物価格は年初から約13%上昇しており、その要因の1つには中銀の金購入継続が挙げられています。
*米ドル建て金先物の日足(期間:2023/10/10~2024/6/20)、青:25日移動平均線、黄:200日移動平均線

(出所:TradingView)
<原油は反転上昇基調継続>
今週のWTI原油先物価格は反転上昇基調が続いています。20日は1バレル81ドル台まで上昇。5月1日以来、約1カ月半ぶりの高値水準を回復してきました。需給改善期待に加え、中東やウクライナでの緊張感が強まる中、地政学リスクが再び意識されてきており、200日移動平均線を突破し、上値追いの様相となっています。
WTI原油先物価格の1週間予想レンジ:1バレル77─84ドル
*米在庫減少、地政学リスクも
米エネルギー情報局(EIA)が20日に発表した14日時点の週間石油在庫統計で、原油在庫は前週比254.7万バレル減少しました。3週ぶりの減少で、市場予想以上の減少です。ガソリンは4週ぶり、留出油は5週ぶりに在庫が減少。夏のレジャーシーズンに向けて石油関連の需給がタイトになるとの期待が高まっています。

地政学リスクに対する緊張感も再び高まってきました。イスラエル軍は、隣国レバノンに拠点を置くイスラム教シーア派組織ヒズボラに対する軍事作戦計画を承認したと伝えられています。パレスチナ以外にも紛争が拡大する可能性が出てきたことで、マーケットは警戒心を一段上に引き上げた格好です。
イスラエルでは戦時内閣が解散したとされており、対パレスチナで強硬姿勢を示す極右勢力の発言力が高まる可能性があるとみられています。
一方、ロシアでも、ロシアの南部ロストフ州アゾフで18日にドローンによる攻撃があり、石油貯蔵タンク数基に火災が発生したと報じられました。ロシアの原油輸出に対する影響が懸念されています。
*WTI原油先物の日足(期間:2023/10/9~2024/6/20)、青:25日移動平均線、黄:200日移動平均線

(出所:TradingView)
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