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米大統領選挙ガイド3:トランプ・ラリーの本質とは?

2024/01/19 08:06

【ポイント】
・16年トランプ氏当選後に株価・長期金利・米ドルが上昇
・17年は株価の上昇が継続、金利も高めながら米ドルは下落
・17年は「悪い金利上昇」と「米ドル忌避」が背景か

15日のアイオワ州の共和党党員集会では、トランプ氏が51.0%の支持を獲得し、2位デサンティス氏(21.2%)、3位ヘイリー氏(19.1%)に圧勝しました。トランプ氏が共和党の指名獲得に一段と接近しました。次の舞台は23日のニューハンプシャー州予備選

11日付け「米大統領選挙ガイド2:トランプノミクス再び!?」では、トランプ候補が提唱する経済政策は16年の選挙公約や大統領就任後にとった政策をほぼ踏襲していると指摘しました。そこで、当時の「トランプノミクス」に対して市場がどのように反応したのか、みておきましょう。

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トランプ氏は、16年の選挙キャンペーンでTPP(環太平洋経済連携協定)やNAFTA(北米自由貿易協定)への反対、移民規制の強化、同盟国の駐留米軍の費用負担要求、対中貿易での強硬姿勢などを公言していました。市場では、トランプ氏が当選すれば、政治や経済、市場の混乱は不可避であり、米ドル安要因になるとの見方が多かったようです。

トランプ氏の当選が決まると、株価・長期金利・米ドルは直後から上昇し、「トランプ・ラリー」と呼べる状況となりました。大規模減税やインフラ投資により景気が刺激されるとの観測が、株価・長期金利・米ドルを押し上げました。80年代のレーガノミクス(※)が想起されたのでしょう。

※80年の選挙で現職のカーター大統領を破った共和党レーガン氏の打ち出した政策。「強いアメリカ」を標ぼうし、大幅な減税や規制緩和を行うとともにソ連との連戦下で軍備拡張を行いました。歳出削減が議会の反対で実現しなかったこともあって財政赤字が大幅に拡大、長期金利や米ドルの上昇要因となりました。

トランプ氏が実際に大統領に就任すると、米企業の利益を優先する政策もあって株価は堅調を持続。長期金利は高止まりしましたが、これは景気の堅調だけでなく、財政赤字の拡大を懸念する「悪い金利の上昇」の面もあったのでしょう。

トランプラリー 株価

トランプラリー 長期金利

為替市場では潮目が変化しました。米ドルの基調が転換し、米ドル安が進行しました。トランプ大統領が制裁関税を連発して保護貿易主義を打ち出したことや、国際的枠組みを軽視し、二国間交渉で強硬姿勢をみせたことが「米ドル忌避」につながった可能性があります(後講釈ですが)。

トランプラリー 米ドル

大統領選挙の投開票日は11月5日。次の大統領の就任は25年1月20日です。それまでには紆余曲折がありそうですが、早めにイメージトレーニングをしても良いかもしれません。
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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