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トルコリラ、南アフリカランド:中銀会合が材料になるか

2023/11/23 09:05

【ポイント】
・トルコ中銀はどの程度利上げするか、タカ派的な姿勢が変化するか
・市場の南アフリカ中銀の金融政策見通しが変化するか

(欧米市場レビュー)

22日の欧米時間の外為市場では、米ドルが堅調に推移。一時、米ドル/円は149.711円へと上昇し、ユーロ/米ドルは1.08533ドル、英ポンド/米ドルは1.24479ドルへと下落しました。米国の前週分の新規失業保険申請件数が20.9万件と、市場予想の22.6万件よりも良好な結果だったことが、米ドルの支援材料となりました。

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マックレムBOC(カナダ中銀)総裁は22日に講演し、ハト派的な内容でした。

マックレム総裁は「高インフレが続くなら、BOCは政策金利をさらに引き上げる用意がある」としつつも、「(BOCの)政策金利は、物価の安定を取り戻すのに十分に(景気)抑制的となっている可能性がある」と指摘。また、「物価の上昇をあまりにも容易にしていた過剰な需要はもはや解消した」「今後数四半期は景気の低迷が続くと予想しており、これはインフレの下押し圧力が一段と強まることを意味する」などと語り、22年3月に開始したBOCの利上げサイクルの終了を示唆しました。

マックレム総裁は利下げについて、「インフレ率が(目標の)2%に戻るまで待つ必要はないが、2%に到達する軌道に乗っていることが明確になるまで待つ必要がある」とし、「今は利下げについて考える時ではない」と述べました。カナダの10月CPI(消費者物価指数)は前年比3.1%と、上昇率は9月の3.8%から鈍化しました。

BOCの現在の政策金利は5.00%。市場では、“政策金利は24年3月まで据え置かれて、4月に利下げが行われる”との観測があります。マックレム総裁の講演は、この観測を補強する内容と言えそうです。

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ブロックRBA(豪中銀)総裁の講演は、タカ派的な内容でした。

ブロック総裁は「豪州のインフレの課題は国内の要因が大きく、需要が主導していることだ」とし、「より大幅な金融政策の引き締めが需要主導型のインフレへの正しい対応だ」と述べました。

ブロック総裁はまた、「サプライチェーンのインフレは鈍化しており、この傾向はさらに続く」と分析。一方で、「需要主導型のインフレは、CPI(消費者物価指数)上昇率がRBAの目標(2~3%)に戻るには時間がかかることを意味する」と述べ、「豪州のインフレは広範囲に及んでおり、CPIのトリム平均値は依然として高過ぎる」と語りました。

豪州の23年7-9月期のCPIは前年比5.4%と、上昇率は4-6月期の6.0%から鈍化したものの、RBAの目標を引き続き大きく上回りました。RBAがコアインフレ指標として注視するトリム平均値は前年比5.2%でした(4-6月期は5.9%)。

RBAは前回11月7日の政策会合で0.25%利上げすることを決定し、政策金利を4.10%から4.35%へと引き上げました。市場では、24年前半に追加利上げが行われるとの観測があります(次回12月5日の会合は据え置き)。ブロック総裁の発言によって利上げ観測が高まる可能性があります。

(本日の相場見通し)

本日は、ドイツやユーロ圏の11月製造業PMI(購買担当者景気指数)速報値が発表されます(ドイツは日本時間17:30、ユーロ圏は同18:00)。

PMIの市場予想は、ドイツが41.2、ユーロ圏が43.4と、依然として製造業景況判断の分れ目である50は下回るものの、10月改定値の40.8と43.1から改善するとみられています。PMIが市場予想を上回る結果になれば、ユーロ/円やユーロ/米ドル、ユーロ/英ポンドが堅調に推移しそうです。ユーロ/英ポンドは、0.87599ポンド11/16高値)が上値メドです。

米国はサンクスギビングデーの祝日です。外為市場では参加者が減少して流動性が低下するため、材料次第では値動きが増幅される可能性があります。米株式市場や債券市場は休場です。

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本日、TCMB(トルコ中銀)の政策会合が開かれます。会合の結果は、日本時間20時に発表されます。

TCMBはエルカン総裁が就任した6月以降、5会合連続で利上げを行っており、現在の政策金利は35.00%です。トルコの10月CPI(消費者物価指数)は前年比61.36%と、上昇率は9月の61.53%から若干鈍化したものの、依然として高く、TCMBは本日の会合で政策金利をさらに引き上げると考えられます。

TCMB会合における注目点は、「利上げ幅」や「TCMBのタカ派的な姿勢が変化するか」になりそうです。10月の会合時の声明では、「金融引き締めは、インフレ見通しの大幅な改善が達成されるまで、タイムリーかつ段階的な方法で必要なだけさらに強化される」としていました。利上げ幅が市場予想の2.50%を下回る、あるいは声明でTCMBのタカ派的な姿勢が弱まったと市場が受け止めれば、利上げが行われたとしても、トルコリラは軟調に推移しそうです。

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SARB(南アフリカ中銀)の政策会合もあります。会合の結果は、日本時間22時過ぎに発表されます。

SARBは7月と9月の2会合連続で政策金利を8.25%に据え置いており、市場では政策金利は今回も据え置かれるとの見方が大勢です。SARBの次の一手は利下げとなり、早ければ24年5月に利下げが行われるとの見方もあります。会合後に行われるクガニャゴSARB総裁の会見が利下げ観測を後退させるような内容になれば、
南アフリカランドが堅調に推移する可能性があります。

八代和也

執筆者プロフィール

八代和也(ヤシロカズヤ)

シニアアナリスト

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