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市場の注目は日銀会合へ

2023/09/22 09:10

【ポイント】
・日銀は政策修正に向けての地ならしをするか
・トルコ中銀は利上げを行い、追加利上げを示唆
・南アフリカ中銀は政策金利を据え置き。追加利上げに含み

(欧米市場レビュー)

21日の欧米時間の外為市場では、英ポンドが軟調に推移。一時、英ポンド/円は180.702円、英ポンド/米ドルは1.22227ドルへと下落し、ユーロ/英ポンドは0.86852ポンドへと上昇。英ポンド/米ドルは3月27日以来、約6カ月ぶりの安値をつけました。BOE(英中銀)が政策金利を5.25%に据え置いたことが、英ポンドに対する下押し圧力となりました。

※BOEの政策会合については、本日22日の『ファンダメ・ポイント』[英中銀は利上げを打ち止め?]で詳しく解説しています。

は堅調。一時、米ドル/円は147.307円、ユーロ/円は156.990円、豪ドル/円は94.401円、カナダドル/円は109.226円へと下落しました。日銀の金融政策決定会合を前にしたポジション調整が中心と考えられます。

SARB(南アフリカ中銀)は政策金利を8.25%に据え置くことを決定。TCMB(トルコ中銀)は政策金利を25.00%から30.00%へと引き上げました。

(本日の相場見通し)

本日は、日銀の金融政策決定会合があります。会合の結果は通常、日本時間正午頃に発表され、植田日銀総裁が15時30分から会見する予定です。

日銀は前回7月の会合でYCC(イールドカーブ・コントロール。長短金利操作)の運用を柔軟化したばかりのため、本日の会合では金融政策の現状維持が決定されそうです。

※YCCの運用柔軟化については、7月31日の『ファンダメ・ポイント』[中銀ウィークのレビューと注目ポイント]をご覧ください。

日銀はYCCの修正・撤廃やマイナス金利の解除に向けての地ならしをするかにも注目です。日銀の声明や植田総裁の会見がマイナス金利の解除などの政策修正の観測を後退させるような内容になれば、円安が進んで米ドル/円やクロス円が上昇しそうです。

***

TCMB(トルコ中銀)は21日に政策会合を開き、5.00%の利上げを行うことを決定。政策金利を25.00%から30.00%へと引き上げました。利上げは4会合連続です。

TCMBの声明はタカ派的でした。

声明は利上げする理由について、過去3会合と同様に「可能な限り早期にディスインフレの軌道を確立し、インフレ期待を安定させ、価格設定行動の悪化を制御するため」と説明しました。

声明はまた、「内需の堅調な推移とサービス価格のインフレの粘着性が持続する中、原油価格の上昇とインフレ期待の悪化(上昇)がインフレのさらなる上振れリスクをもたらしている」と指摘。「(TCMBの)政策委員会は24年にディスインフレの軌道を確立することを“決意している”」とし、前回8月会合時の「24年にはディスインフレの軌道が確立されると“予想している”」から表現が強まりました。

声明は先行きの金融政策について、「金融引き締めは、インフレ見通しの大幅な改善が達成されるまで、タイムリーかつ段階的な方法で必要なだけさらに強化される」と表明。追加利上げを示唆しました。

トルコの8月CPI(消費者物価指数)は前年比58.94%でした。今回の利上げを受けても、トルコの実質金利(政策金利からCPI上昇率を引いたもの)が大幅なマイナスであることに変わりはありません(マイナス28.94%)。

それでも、TCMBがインフレの抑制に向けて利上げを行ったうえに追加利上げを示唆したことは、トルコリラを下支えしそうです。トルコの9月CPIは10月3日に発表され、TCMBの次回政策会合は10月26日です。

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SARB(南アフリカ中銀)は21日の政策会合で、政策金利を8.25%に据え置くことを決定しました。据え置きは2会合連続です。会合では5人の政策メンバーのうち3人が据え置きを支持し、2人が0.25%利上げすることを主張し、据え置きの決定は僅差でした。

クガニャゴSARB総裁は会合後の会見で、「インフレ見通しに対するリスクは上向きだ」と指摘。「食品価格は24年に上昇が加速するリスクがあり、またエネルギーの供給が持続的に増加しない限り、電力価格は引き続きインフレリスクをもたらす」との見方を示しました。

クガニャゴ総裁はまた、「現在の政策金利の水準は(景気)抑制的であり、インフレ見通しとインフレ期待の上昇に対応したものだ」との認識を示したものの、「インフレ見通しに対する上振れリスクは残っている」と指摘。「(政策)委員会は引き続き警戒しており、リスクが顕在化し始めれば行動する用意がある」とし、追加利上げに含みをもたせました。

南アフリカの8月CPI(消費者物価指数)は前年比4.8%と、上昇率は7月の4.7%から若干高まったものの、SARBのインフレ目標(3~6%)内に3カ月連続で収まりました。市場では「SARBの利上げはすでに終了し、早ければ24年前半に利下げに転じる」との観測があります。

ただ、今回の会合で利上げを主張した政策メンバーがいたことやクガニャゴ総裁のタカ派的な発言を受けて、早期の利下げ観測は後退する可能性があります。その場合、南アフリカランドの支援材料になりそうです。

八代和也

執筆者プロフィール

八代和也(ヤシロカズヤ)

シニアアナリスト

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