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米FOMCはタカ派的据え置き。年内あと1回の利上げを想定、24年の利下げペースは後ろ倒し!?

2023/09/21 06:51

【ポイント】
・FOMCは大方の市場予想通り「据え置き」
・ドット・プロットは年内1回の追加利上げを示唆
・24年利下げは4回⇒2回へ?

米FOMCは大方の市場予想通り、FFレート目標水準(政策金利)を5.25~5.50%に据え置きました。参加者の政策金利見通しを集計した「ドット・プロット」は年内1回の利上げを示唆。パウエル議長の記者会見もややタカ派寄りでした。今回の決定は「タカ派的据え置き」と言えそうです。

前回(7/26)は「ハト派的利上げ」、前々回(6/14)は「タカ派的据え置き」であり、FOMCは経済情勢やこれまでの利上げの効果を慎重に見極めて利上げ打ち止めを視野に入れつつも、次の一手として利上げを意識しているのでしょう。パウエル議長は、「経済は予想以上に強い」、「中立金利は上昇している可能性が高い」とも述べており、今後のデータ次第では追加利上げが決定される可能性があります。

20日時点のOIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、市場は11月1日のFOMCで利上げが行われる確率を31%12月13日までの利上げ確率を53%とみています。

FOMCの結果とパウエル議長の記者会見を受けて、米ドル/円は一時148.269円まで上昇。長期金利(10年物国債利回り)は4.41%に上昇し、07年11月以降の高値を更新しました。NYダウは前日終値比77ドル安。

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FOMCの票決は全会一致(12対0)。

声明文では、今回の政策決定は据え置き、前回(7/26)は利上げとの違いを除けば、全く同じ文言でした。前回の「適切となるかもしれない追加的な引き締めの程度を見極めるために、累積的な利上げの効果や政策効果のラグを考慮する」との一文も残されており、スタンスが引き続き利上げ方向に傾いていることを示しました。

冒頭の景況判断については、「経済活動は堅調(solid)」とされ、前回の「緩やか(moderate)」から上方修正されました。一方で、雇用については「ここ数カ月鈍化したが、引き続いて強い」とされ、「力強い」からやや下方修正された印象でした。

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FOMCの経済・金融見通しと「ドット・プロット」(新たに26年が追加)は以下の通り。

前回6月分と比較して・・
経済見通しでは、23年と24年のGDP(国内総生産)が上方修正、とりわけ23年の上方修正が目立ちました。失業率は下方修正され、24年以降もFOMCが完全雇用とみる4.0%近辺の推移が予想されました。FOMCが物価指標として重視するPCE(個人消費支出)コアデフレーターはやや下方修正されましたが、目標である2.0%を達成するのは26年との見通しです。

FOMC経済見通し

政策変更は1回0.25%を前提として「ドット・プロット」をみると、23年末の政策金利予想(中央値)は6月と同じく5.625%となり、FOMC参加者19人のうち12人が年内あと1回の利上げを予想しました(さすがに年内2回以上の利上げ予想はなくなりました)。大多数が24年中に利下げに転じるとみていますが、利下げ回数の中央値は2回で、前回の4回から半減しました。また、利下げ回数は最大でも5回とみられており、こちらも前回の8回から減少しました。25-26年も利下げが続くとの見通しで、26年末の中央値は2.875%です。

ドットプロット

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パウエル議長は記者会見で、「実質金利は明確なプラスになった」、「データをみながら慎重に進みたい」と述べ、政策金利がターミナルレート(最高到達水準)に接近しているとの認識を示しました。ただ、「今回の据え置きは目指す水準への到達を意味しない」、「適切な水準に達したとの十分な証拠をみたい」とも述べました。

パウエル議長は、「実質金利は明確にプラスになった」とし、「しばらくはプラスである必要がある」としており、結果的に7月の利上げで打ち止めになる可能性は残しました。ただ、「経済活動は予想以上に強い」と述べており、その結果として中立金利が上昇している可能性にも言及しているので、状況次第では追加利上げに躊躇しないのかもしれません。

なお、UAWのストライキの影響については「期間と規模次第」とだけ述べ、それ以上はコメントしませんでした。また、10月からの学生ローンの返済開始については認識しているとしましたが、シャットダウン(政府機能の一部停止)の可能性については「コメントしない」と述べました。
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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