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UAWはストライキに突入!

2023/09/19 07:34

【ポイント】
・UAWは3大自動車メーカーの回答を拒否、ストライキに突入
・両者の隔たりは依然として大きく、ストライキの拡大・長期化の可能性あり
・その場合は、雇用や工業生産などマクロ経済にも影響が出そう

UAW(全米自動車労組)は15日午前0時をもって3大自動車メーカーに対してストライキに入りました。UAW組合員約15万人のうち1.3万人が以下の3工場でwalkout(職場放棄)を実施しました。GMとフォードは、ストライキの波及効果によって職場放棄をしていない組合員のレイオフ(一時解雇)を発表しています。

 フォード:ミシガン工場(ブロンコSUV=製造車両、以下同じ)
 GM(ゼネラル・モーターズ):ミズーリ工場(シボレーコロラド・ピックアップ)
 ステランティス(旧クライスラーを含む):オハイオ工場(ジープ・ラングラーSUV)

UAWの要求
UAWは3大メーカーに対して4年間で計36%の賃上げ(当初は40%、複利計算で46%)や新旧従業員の待遇格差縮小、確定給付年金や報酬インフレ調整(COLA)の再導入(※)などを求めています。

※08年リーマンショックで破たんした、あるいは破たんの危機に瀕した3大メーカーがコスト削減のために廃止した項目の復活をUAWは求めています。

これに対して、GMとフォードは20%の賃上げ、ステランティスは21%の賃上げを回答しましたが(他の条件は不明)、UAWはそれらを拒否しました。

UAWと3大メーカーとの交渉は続けられていますが、両者の隔たりは依然として大きいようです。UAWは交渉妥結のメドが立たなければ、ストライキの規模を拡大する意向です。

ストライキの影響は・・・
2019年にUAWがGMに対して40日間のストライキを実施した際には、36億ドルの減収要因になったとされています。また、15万人の全組合員がストライキを決行すれば、10日間で経済損失が56億ドルになるとの分析もあるようです。

なお、職場放棄した組合員やレイオフされた組合員には給料は支給されませんが、UAWがストライキファンドから500ドル/週を支給するとのことです。

UAWがストライキを実施した15日にはNYダウが290ドル近く下落しましたが、市場の反応は比較的小さかったようです。GMやフォードの株価は15日に上昇して始まりましたが(ストライキの規模が小さかったため?)、その後に小幅に軟化しています。ただし、GMやフォードの株価はUAWが厳しい要求を突き付けた8月上旬に大きく下落しており、現在もその時の水準を下回ったままです。

今後、ストライキが拡大・長期化すれば、3大メーカーやその周辺企業の収益だけでなく、マクロ経済的にも悪影響が出てくるかもしれません。まず、新規失業保険申請件数や雇用統計(※)、工業生産などに影響が出てきそうです。今後の動向に要注意でしょう。

※雇用統計のNFP(非農業部門雇用者数)は、毎月12日を含む1週間分として支給された給料の数をカウントするため、10月6日に発表される9月分に9月15日開始のストライキやレイオフはほとんど反映されないかもしれません。家計調査の失業率も同様です。ただ、週平均労働時間や時間当たり賃金(自動車業界の時給は他に比べて高い)、とくに製造業のそれらは相応に影響を受けそうです。

以下もご覧ください。

■8月30日付け「米UAWのストライキは賃金インフレを招くか
■9月13日付け「【アップデート】碧桂園、UAWストライキ、米24年度予算
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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