米国中間選挙の結果、相場材料として考察
2026/11/05 08:19
【ポイント】
・トランプ大統領は民主党と協働する姿勢を示したものの、果たして・・
・外交・安全保障、財政、金融政策など様々な要因を吟味する必要あり
・レームダック・セッションにも注意が必要
以下では、米国中間選挙の結果が市場に与える影響を考察します。
日本時間5日午前8時時点での選挙結果(上院や州知事は非改選も含む)
Real Clear Politicsによれば、上院の議席は、民主党54、共和党44、未定2。民主党はReal Clear Politicsが直前に接戦とした9州のうち7州で勝利しました。もちろん、民主党はフィリバスターを阻止するスーパーマジョリティー(60議席以上)には届きませんでしたが、2~3名の造反があっても、過半数を維持できます。
下院の議席は、民主党244、共和党152、未定39。現時点で過半数に必要な218議席を大きく上回りました。最終的には、民主党が選挙前から40議席前後を積み上げることになりそうです。
州知事は、民主党28、共和党20、未定2。民主党が5州を積み上げました。民主党はAIデータセンターへの反対が支持を集めたようです。
相場材料としての考察
トランプ大統領は結果判明後に共和党の敗北を受け入れました(受け入れないケースが想定されること自体が普通ではありませんが)。トランプ大統領は民主党と協働する姿勢を打ち出したものの、さすがにその言葉通り受け止めるのは賢明ではないでしょう。
外交・安全保障
条約の批准には上院の承認が必要ですが、外交交渉そのものは大統領が主導することができます。民主党勝利を受けて米国とイランの和平協議が進展するとの期待から、WTI原油先物価格は88ドル台まで下落しました。トランプ大統領はイスラエルと距離を置き始めているようにもみえ、中間選挙後に直ちにイラン攻撃を再開することはなさそうです(トランプ大統領は常に予測不能ですが)。和平協議が進展すれば、原油価格はさらに下落する可能性があります。
他方、トランプ大統領が外交面でレガシーを残そうと過激な行動に出る可能性は否定できません。また、中国やロシアに接近すれば、ウクライナを含む欧州の安全保障や台湾問題に絡んで地政学リスクが高まるかもしれません。まずは、APEC首脳会議(11/18-19)に絡んで、トランプ・習・プーチンの三者会議が開催されるのか、そこで何が話し合われるのか要注目です。
AIデータセンター
今回の選挙には、AIデータセンターに対する有権者の反発が大きく影響しました。とりわけ、テキサスやジョージアの州知事選では、データセンター建設の一時停止を公約した民主党候補が勝利しました。AIブームにブレーキがかかるとの思惑から米株価指数先物は一時下落しましたが、すぐに反発。現物の株価指数は取引開始から大幅に上昇しました。材料出尽くし、長期金利の低下、トランプ大統領の暴走への歯止めなど様々な背景が考えられますが、企業の設備投資負担が軽減されるとの思惑もあったのかもしれません。
もっとも、AIブームや半導体需要の高まりは、株価全体の押し上げに寄与し、景気をけん引してきました。そこにブレーキがかかるとすれば、先行きに株安や景気減速をもたらす可能性はあるでしょう。
財政収支と長期金利
政府と議会は分断されるので、減税や意欲的な支出プログラムが実現する可能性は低そうです。10月に始まった27年度も継続(つなぎ)予算が続くならば、支出レベルは抑制されます。仮に、12月11日に継続予算が期限切れとなった後に予算措置が採られなければ、シャットダウン(政府機能の一部停止)が発生します。それも結果的には財政収支改善要因です。
財政収支の改善は「悪い金利上昇」を抑える要因です。それによる金利低下は米株や米ドルにとってもプラスとなりそうです。ただ、シャットダウンや(来年にも起こり得る)デフォルトの懸念によって安全資産として国債が買われて金利が低下するケースは、米株や米ドルにとってマイナスでしょう。
経済・物価・金融政策
引き続き中東情勢と原油価格が大きなカギを握りそう。原油価格が大幅に下落すれば、インフレ圧力は後退し、主要中銀の利上げ機運も後退するでしょう。それらは景気にとってプラス材料でしょう。一方で、AIの成長期待が下方シフトすることで株価が大きく調整するならば、景気に下押し圧力が加わり、利下げ観測が浮上するかもしれません。米ドルにとってマイナスとなりそうです。
トランプ大統領が人事権をもってFRBに利下げ圧力をかけるなど独立性を脅かすことは難しくなるでしょう。それは長期金利の低下要因であり、米ドルにとってもプラスです。求心力・影響力の低下するトランプ大統領に対して、ウォーシュFRB議長がどう振舞うかも興味深いところです。
レームダック・セッションにも要注意!
結局のところ、市場への影響を考える場合に様々な要因とそのタイミングをよく吟味する必要があります。また、上記の考察は、主に27年1月3日に新議会が招集された後を想定したものです。それまでは中間選挙前の議員によるレームダック・セッションが開催されます。感謝祭やクリスマスなど休暇が多く、議会開催期間は短いですが、トランプ政権や共和党が最後のチャンスとばかりに強引な法案成立を目論めば、市場のかく乱要因になるかもしれません。注意は怠れません。
・トランプ大統領は民主党と協働する姿勢を示したものの、果たして・・
・外交・安全保障、財政、金融政策など様々な要因を吟味する必要あり
・レームダック・セッションにも注意が必要
以下では、米国中間選挙の結果が市場に与える影響を考察します。
日本時間5日午前8時時点での選挙結果(上院や州知事は非改選も含む)
Real Clear Politicsによれば、上院の議席は、民主党54、共和党44、未定2。民主党はReal Clear Politicsが直前に接戦とした9州のうち7州で勝利しました。もちろん、民主党はフィリバスターを阻止するスーパーマジョリティー(60議席以上)には届きませんでしたが、2~3名の造反があっても、過半数を維持できます。
下院の議席は、民主党244、共和党152、未定39。現時点で過半数に必要な218議席を大きく上回りました。最終的には、民主党が選挙前から40議席前後を積み上げることになりそうです。
州知事は、民主党28、共和党20、未定2。民主党が5州を積み上げました。民主党はAIデータセンターへの反対が支持を集めたようです。
相場材料としての考察
トランプ大統領は結果判明後に共和党の敗北を受け入れました(受け入れないケースが想定されること自体が普通ではありませんが)。トランプ大統領は民主党と協働する姿勢を打ち出したものの、さすがにその言葉通り受け止めるのは賢明ではないでしょう。
外交・安全保障
条約の批准には上院の承認が必要ですが、外交交渉そのものは大統領が主導することができます。民主党勝利を受けて米国とイランの和平協議が進展するとの期待から、WTI原油先物価格は88ドル台まで下落しました。トランプ大統領はイスラエルと距離を置き始めているようにもみえ、中間選挙後に直ちにイラン攻撃を再開することはなさそうです(トランプ大統領は常に予測不能ですが)。和平協議が進展すれば、原油価格はさらに下落する可能性があります。
他方、トランプ大統領が外交面でレガシーを残そうと過激な行動に出る可能性は否定できません。また、中国やロシアに接近すれば、ウクライナを含む欧州の安全保障や台湾問題に絡んで地政学リスクが高まるかもしれません。まずは、APEC首脳会議(11/18-19)に絡んで、トランプ・習・プーチンの三者会議が開催されるのか、そこで何が話し合われるのか要注目です。
AIデータセンター
今回の選挙には、AIデータセンターに対する有権者の反発が大きく影響しました。とりわけ、テキサスやジョージアの州知事選では、データセンター建設の一時停止を公約した民主党候補が勝利しました。AIブームにブレーキがかかるとの思惑から米株価指数先物は一時下落しましたが、すぐに反発。現物の株価指数は取引開始から大幅に上昇しました。材料出尽くし、長期金利の低下、トランプ大統領の暴走への歯止めなど様々な背景が考えられますが、企業の設備投資負担が軽減されるとの思惑もあったのかもしれません。
もっとも、AIブームや半導体需要の高まりは、株価全体の押し上げに寄与し、景気をけん引してきました。そこにブレーキがかかるとすれば、先行きに株安や景気減速をもたらす可能性はあるでしょう。
財政収支と長期金利
政府と議会は分断されるので、減税や意欲的な支出プログラムが実現する可能性は低そうです。10月に始まった27年度も継続(つなぎ)予算が続くならば、支出レベルは抑制されます。仮に、12月11日に継続予算が期限切れとなった後に予算措置が採られなければ、シャットダウン(政府機能の一部停止)が発生します。それも結果的には財政収支改善要因です。
財政収支の改善は「悪い金利上昇」を抑える要因です。それによる金利低下は米株や米ドルにとってもプラスとなりそうです。ただ、シャットダウンや(来年にも起こり得る)デフォルトの懸念によって安全資産として国債が買われて金利が低下するケースは、米株や米ドルにとってマイナスでしょう。
経済・物価・金融政策
引き続き中東情勢と原油価格が大きなカギを握りそう。原油価格が大幅に下落すれば、インフレ圧力は後退し、主要中銀の利上げ機運も後退するでしょう。それらは景気にとってプラス材料でしょう。一方で、AIの成長期待が下方シフトすることで株価が大きく調整するならば、景気に下押し圧力が加わり、利下げ観測が浮上するかもしれません。米ドルにとってマイナスとなりそうです。
トランプ大統領が人事権をもってFRBに利下げ圧力をかけるなど独立性を脅かすことは難しくなるでしょう。それは長期金利の低下要因であり、米ドルにとってもプラスです。求心力・影響力の低下するトランプ大統領に対して、ウォーシュFRB議長がどう振舞うかも興味深いところです。
レームダック・セッションにも要注意!
結局のところ、市場への影響を考える場合に様々な要因とそのタイミングをよく吟味する必要があります。また、上記の考察は、主に27年1月3日に新議会が招集された後を想定したものです。それまでは中間選挙前の議員によるレームダック・セッションが開催されます。感謝祭やクリスマスなど休暇が多く、議会開催期間は短いですが、トランプ政権や共和党が最後のチャンスとばかりに強引な法案成立を目論めば、市場のかく乱要因になるかもしれません。注意は怠れません。
- 当レポートは、情報提供を目的としたものであり、特定の商品の推奨あるいは特定の取引の勧誘を目的としたものではありません。
- 当レポートに記載する相場見通しや売買戦略は、ファンダメンタルズ分析やテクニカル分析などを用いた執筆者個人の判断に基づくものであり、予告なく変更になる場合があります。また、相場の行方を保証するものではありません。お取引はご自身で判断いただきますようお願いいたします。
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