マネースクエア マーケット情報

ウォーシュ氏を正式指名、上院の承認は?

2026/03/13 07:07

【ポイント】
・トランプ政権はウォーシュ氏をパウエルFRB議長の後任に正式指名
・上院での指名承認には高い壁
・銀行委員会のティリス議員が召喚状問題の解決までFRB人事を凍結する意向
・ウォーシュ氏が承認されても利下げできるかは不透明

トランプ政権は3月4日、ウォーシュ元FRB理事パウエル議長の後任に正式指名しました。上院が指名を承認すれば、5月15日のパウエル議長の任期満了後にウォーシュ議長が就任する見通しです。

もっとも、現時点でウォーシュ氏の上院の承認は難しい状況です。本会議で審議・採決を行うために通過すべき銀行委員会が高い壁となりそうです。

上院銀行委員会は共和党議員13名、民主党議員11名で構成されています。共和党のティリス議員は司法省による召喚状問題が解決するまでFRB人事の承認を凍結すると宣言しています。ティリス議員と民主党議員全員が反対すれば、過半数の賛成が得られず、本件が銀行委員会から本会議へ送られることはないようです。

また、正式指名を受けて、銀行委員会のウォレン議員(民主)は次の声明を出しました。
「ケビン・ウォーシュはドナルド・トランプの操り人形に過ぎない。トランプ大統領は相変わらず、司法省を使ってパウエル議長やクック理事を追放してFRBを支配しようとしている。そのため、上院は彼の指名を前に進めるべきではない」と。

ティリス議員は10日、ウォーシュ氏の承認プロセスを開始することに同意しましたが、それでも召喚問題が解説するまで採決を行わせない(あるいは採決があっても賛成票を投じない)との姿勢は堅持しているようです。

上院銀行委員会のスコット委員長は11日、パウエル議長に対する調査が終結するよう期待していると述べました。また、同問題を扱う司法省の主席検察官が交代したことを明かしましたが、それが何を意味するのか不明です。

*******
仮に、ウォーシュ氏が議長に就任しても、思い通りに利下げを行えるとは限りません。

ウォーシュ氏は利下げの根拠として2つの柱を提示しています。1つは、AI利用により生産性が高まるので、低金利でインフレなき高成長が可能になる点。もう1つはFRBのバランスシート(≒保有債券)の縮小を主張しており、それを相殺するために利下げが可能になる点。

もっとも、FOMC参加者の多くは、ウォーシュ氏のロジックに疑問を感じているか、賛同はしてもそれが即時かつ大幅な利下げを正当化するとは考えていないでしょう。少なくとも、明確に判断するには時期尚早だとみているはず。

米景気が失速し、そして(あるいは)物価が顕著に鈍化するようであれば、FOMC内で利下げのコンセンサスを形成するのは簡単かもしれませんが、現時点の状況はそうではありません。米国のイラン攻撃が原材料コストの上昇や株価の下落などを通じて世界経済に急ブレーキをかける可能性はあります。ただ、当面は原油価格上昇によるインフレ圧力への警戒が強まる方向でしょう。

*******
トランプ大統領は12日、次の会合(3月17-18日)を待たずに直ちに利下げするようパウエル議長に要求しました。

NYダウは下落基調にあるものの、2月10日の高値から7%程度の下げにとどまっており、株の暴落が流動性危機を招いて緊急利下げを必要とする状況ではなさそうです。仮に、現時点で利下げに踏み切れば、上昇基調にある長期金利(10年物国債利回り)インフレ懸念から一段と上昇する可能性もあります。

13日時点のOIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、次回あるいは次々回(4月28-29日)の会合で利下げが行われる確率を市場は1割未満とみています。6月と7月まで含めても4割弱。利下げの確率が5割を超える(=メインシナリオになる)のは9月以降。それも26年末までの確率は7割程度に過ぎません(=年内据え置きの確率が3割弱)。
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

  • 当レポートは、情報提供を目的としたものであり、特定の商品の推奨あるいは特定の取引の勧誘を目的としたものではありません。
  • 当レポートに記載する相場見通しや売買戦略は、ファンダメンタルズ分析やテクニカル分析などを用いた執筆者個人の判断に基づくものであり、予告なく変更になる場合があります。また、相場の行方を保証するものではありません。お取引はご自身で判断いただきますようお願いいたします。
  • 当レポートのデータ情報等は信頼できると思われる各種情報源から入手したものですが、当社はその正確性・安全性等を保証するものではありません。
  • 相場の状況により、当社のレートとレポート内のレートが異なる場合があります。
topへ