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イラン情勢:原油価格は70ドル前後で落ち着くのか

2026/03/03 08:29

【ポイント】
・イラン攻撃後にWTI原油先物価格は一時75ドル超
・その後は産油国の増産やイランの輸出拡大期待から落ち着きか
・歴史的にみて70ドル台は十分に高いようにみえるものの・・
・・・インフレ調整後で振り返れば状況次第で一段上昇も⁉

米国とイスラエルのイラン攻撃を受けて2日のWTI原油先物価格は1バレル=75ドル超に急騰しましたが、その後は70ドル台前半で推移しています。イランへの攻撃が続いており、また要衝のホルムズ海峡が事実上封鎖されているわりには、原油価格は比較的落ち着いていると言えるかもしれません(25年6月の12日間戦争時を下回る)。

WTI原油価格

原油の需給ひっ迫に対応して産油国が増産に踏み切る、あるいは将来的にイランに対する制裁が解除されて広範な原油輸出が可能になる(その点ではベネズエラも同様か)との見方が背景にあるのかもしれません。

軍事行動が短期間で終了し、石油関連施設が大きくダメージを受けないのであれば、原油価格は早期に軍事行動前の水準に戻る可能性はあります。また、WTI原油価格が40ドルを超えてきたのは05年以降であり、それ以前と比べれば1バレル=70ドル台は十分に高いと言えるかもしれません。もっとも、インフレを調整した現在価格に引き直してみると(下図赤ライン)、今後の展開次第ではまだまだ上昇余地はありそうです。

以下に原油価格の歴史を概観しておきます。

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73年10月に勃発した第4次中東戦争ではOPEC(石油輸出国機構)がイスラエル支援国に対して禁輸措置を採り、原油価格はそれまでの1バレル=2-3ドルから同10-12ドルまで上昇、第1次オイルショックを引き起こしました。79年にはイラン革命が起こり、80年にイラン・イラク戦争が勃発したため、原油価格は30-40ドルまで上昇、第2次オイルショックを招きました。

86年にはサウジアラビアが市場シェア拡大を狙って原油を増産したため(いわゆるオイル・グラット、原油価格は急落しました。

90年8月にはイラクがクウェートに侵攻して湾岸危機が発生。原油価格は約2倍(20ドル⇒40ドル)に急騰しました。ただ、米国がリセッション(景気後退)入りしたこともあって、原油価格はすぐに反落。多国籍軍によるイラク攻撃(湾岸戦争)が開始された91年1月には危機前の水準である20ドル前後まで下落しました。

原油価格 長期

01年のIT株バブル崩壊を受けて、米FRBが積極的な金融緩和を進めたため、住宅バブルが発生。過剰な流動性は原油市場にも流入、産油国の生産設備の老朽化による供給能力の低下もあって、原油価格は08年7月に一時147ドル台をつけました。その後は同5年9月のリーマン・ショックを受けて急落。

09年後半に世界経済が回復すると原油価格も上昇に転じました。そして、11年には「アラブの春」が起き、リビアの原油生産が減少。リーマン・ショック後の世界的な金融緩和の継続もあって2010年代前半の原油価格は100ドル前後で推移しました。

14年後半以降、世界経済が減速する一方で、非OPECが原油を増産したことで、原油価格は大幅に下落。20年春にはコロナ・ショックで一時急落しました。同年4月20日にはマイナス40.32ドルを記録。原油の貯蔵場所に困った保有者がおカネを払ってでも引き取ってもらいたいという異例の事態が起こりました。その後は世界的な金融緩和にロシアのウクライナ侵攻が加わって原油価格が100ドルを超える場面もありました(22年3月に130.50ドル)。22年春ごろからの主要中銀のアグレッシブな利上げや世界経済の減速により原油価格は緩やかな下落基調となり、25年12月には55.27ドルをつけました。
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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