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英ポンドが堅調、対米ドルで約2カ月ぶり高値

2025/12/17 09:00

【ポイント】
・英CPIで市場のBOE金融政策見通しがどのように変化するか
・米FRB理事らは金融政策の先行きについて新たなヒントを提供するか

(欧米市場レビュー)

16日、欧米時間の外為市場では英ポンドが堅調に推移。一時英ポンド/円は207.939円、英ポンド/米ドルは1.34500ドルへと上昇し、ユーロ/英ポンドは0.87485ポンドへと下落。英ポンド/米ドルは10月17日以来の高値をつけました。英国の8-10月の平均賃金(ボーナスを除く)は前年比4.6%と市場予想の4.5%を上振れ、同国の12月PMI(購買担当者景気指数)速報値も市場予想を上振れました。それらが英ポンドの支援材料となりました。

PMI速報値の結果は以下のとおり。( )は市場予想です。
・総合:52.1(51.6)
・製造業:51.2(50.4)
・サービス部門:52.1(51.6)

米国の11月雇用統計の結果は、失業率が4.6%、非農業部門雇用者数は前月比6.4万人増でした。失業率は市場予想の4.4%よりも弱かった一方、非農業部門雇用者数は市場予想の5.0万人増と比べて強い結果でした。強弱が混在していたためか、雇用統計の発表後、米ドル/円は154円台、ユーロ/米ドルは1.17ドル台、米ドル/シンガポールドルは1.28シンガポールドル台後半でのもみ合いとなりました。

本日の『ファンダメ・ポイント』は[米雇用統計:労働市場は軟調、金融政策見通しに著変ナシ!?]です。

(本日の相場見通し)

本日は、英国の11月CPI(消費者物価指数)が発表されます(日本時間16:00)。その結果に英ポンドが反応しそうです。

CPIの市場予想は、総合が前年比3.5%、食品・エネルギー・アルコール飲料・タバコを除いたコアが同3.4%。総合は前月の3.6%から上昇率が鈍化し、コアの上昇率は前月と同じになるとみられています。BOE(英中銀)のインフレ目標は2%です。

市場では、BOEは明日18日の政策会合で0.25%の利下げを行うと予想されています。CPIが市場予想を下回る結果になれば、明日の会合での利下げ観測が補強されるとともに、26年2月以降(1月は政策会合なし)の追加利下げ観測が高まると考えられます。その場合、英ポンドが軟調に推移して、英ポンド/円や英ポンド/米ドルには下落圧力が、ユーロ/英ポンドには上昇圧力が加わりそうです。

※ユーロ/英ポンドのテクニカル分析は、本日の『テクニカル・ポイント』は[ユーロ/英ポンド、方向感模索の相場付き]をご覧ください(お客様専用ページへのログインが必要です)。

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本日、ウォラーFRB(米連邦準備制度理事会)理事が経済見通しについて講演します。また、ウィリアムズNY連銀総裁は会合で開会のあいさつをし、ボスティック・アトランタ連銀総裁は討論会に参加する予定です。それらFOMC(米連邦公開市場委員会)参加者の発言が相場材料になる可能性があります。

12月9-10日のFOMCでは0.25%の利下げを実施し、政策金利を3.75~4.00%から3.50~3.75%に引き下げることが決定されました。その決定にウォラー理事とウィリアムズ総裁は賛成しました。ボスティック総裁は25年のFOMCで投票権を持っていません。

※FOMCについて詳しくは、11日の『ファンダメ・ポイント』[米FOMCはタカ派的利下げ!? 市場はもっと「タカ派」を想定していた?]をご覧ください。

ウィリアムズ総裁は15日の講演で、先週の利下げによって「FOMCはやや(景気)抑制的な金融政策スタンスを中立へと移行させた」とし、「26年に向けて金融政策は良好な状態にある」と述べました。また、「ここ数カ月、雇用の下振れリスクは高まっている一方、インフレの上振れリスクは幾分低下している」との認識を示しました。次回26年1月27-28日のFOMCについては「どのような対応になるかを言うのは時期尚早だ」と語りました。

ボスティック総裁は16日、アトランタ連銀が公表したエッセーの中で「先週のFOMCでは政策金利を据え置くことを望んでいた」とし、「金融政策を緩和的な水準に近づけることで、インフレを悪化させてインフレ期待を上昇させるリスクがある」などの認識を示しました。

本日のウォラー理事の講演などでは、FRBの先行きの金融政策について新たなヒントが提供されるかに注目です。

CMEのFedWatchツールによれば、16日時点で市場が織り込むFRBが利下げを行う確率は、次回1月27-28日のFOMCで約25%、次々回3月17-18日までで約5割です。仮にFRBによる追加利下げ観測が市場で後退する場合、米ドルにとってのプラス材料となり、米ドル/円や米ドル/シンガポールドルは堅調に推移し、ユーロ/米ドルは軟調に推移しそうです。

八代和也

執筆者プロフィール

八代和也(ヤシロカズヤ)

シニアアナリスト

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