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AI株ブームへの疑念、今年4月以来のリスクオフ水準

2025/11/21 07:53

【ポイント】
・20日NYで米株が急落してリスクオフに
・エヌビディア好決算後も株式市場の地合いは悪い
・リスクオフでも円は買われず、サナエノミクスが重石!?
・日本の長期金利は2000年以降で定着したことのない2%を目指すか

(欧米市場レビュー)

19日の欧米市場で、リスクオフが強まりました。米ドルユーロ英ポンドが堅調で、カナダドル豪ドルメキシコペソなどの資源・新興国通貨が総じて軟調でした。

主要通貨のなかでは比較的軟調、米ドル/円はNY時間に一時157.849円をつけました。ユーロ/円は一時181.949円とユーロ導入後の高値を更新、英ポンド/円は昨年7月以来となる一時206.798円をつけました。

前日引け後に発表されたエヌビディアの7-9月期業績は市場予想を上回り、日本株や欧州株の相場上昇要因となりました。米株も上昇して始まりましたが、その後に急落。NYダウは一時前日比718ドル高から386ドル安で引けました。

エヌビディアの決算は好感されたものの、ハイテク企業のAIやデータセンターへの巨額の投資が将来の収益を生むのか、現在のバリュエーションは適正なのかといった疑念はぬぐえなかったようです。

VIX指数(別名「恐怖指数」)は欧州時間に低下して始まったものの、NY時間に入って急騰。終値ベースでは、トランプ大統領の「解放の日」で市場が大荒れとなった今年4月の下旬以来の水準まで上昇しました。

遅れていた米国の9月雇用統計がようやく発表されました。NFP(非農業部門雇用者数)は前月比11.9万人増と、市場予想(6.2万人増)を上回りました。一方で、失業率は4.4%と3カ月連続で上昇しました。発表直後に、市場は米ドル安、長期金利低下で反応しました。

■20日のファンダメ・ポイント「【速報】9月米雇用統計:NFPは予想を上回るも、失業率はジリジリと上昇中」をご覧ください。

SARB(南アフリカ中銀)は2会合ぶりに0.25%の利下げを決定、政策金利を6.75%としました。前日発表された10月CPIは総合が前年比3.6%、コアが同3.1%と、いずれも市場予想(3.7%、3.2%)を下回りました。それもあって、0.25%利下げは大方の市場予想の通りでした。


(本日の相場材料)

株式市場の地合いは非常に不安定であり、本日も上下に大きく振れるかもしれません。株が上昇してリスクオンが強まれば、豪ドルや資源・新興国通貨が買われやすく(経験的には豪ドル/NZドルも買われやすく)、下落してリスクオフが強まれば、主要通貨が買われやすくなりそうです。

ただ、後者の場合でも円は例外かもしれません。かつては「リスクオフ=円高」でしたが、現局面では当てはまりません。高市政権の「(責任ある)積極財政と緩和的金融政策」、いわゆるサナエノミクスが円に対する大きな重石となっているようです。

日本の長期金利(10年物国債利回り)は、20日に一時1.845%と08年リーマンショック以降の高値をさらに更新しました。足もとで上昇ピッチが速まっており、2000年以降で定着したことのない2%台を目指す展開となるでしょうか。これは「悪い金利上昇」と捉えられ、(株安や)円安と整合的です。

20日は円安が進んだものの、政府当局、とりわけ片山財務相から明確なけん制はありませんでした。為替介入やそれの強い示唆がなければ円安は止まらないかもしれません(それでも効果は一時的でしょうが)。

本日は、日本の10月全国CPIが発表されます。市場では日銀が来年1~3月に利上げするとの見方が有力のようですが、それに変化は生じるでしょうか。

日・米・欧・英PMI(製造業・サービス業・総合)の11月速報値が発表されます。とりわけ、経済指標の発表が遅れている米国のPMIは要注目かもしれません。
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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