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シャットダウンの後遺症

2025/11/14 07:15

※11月17-21日のファンダメ・ポイントは不定期配信となります。予めご了承ください。

【ポイント】
・政府機能の正常化には相応の時間も
・民間企業のレイオフはどうなる?
・経済指標発表の遅延/キャンセル
・今後の経済データに歪みか 12月FOMCは据え置きも⁉

継続予算成立/シャットダウン解消を受けた13日のNY市場では、米ドル(対主要通貨)、株、国債が下落しました。市場の関心が「シャットダウンがいつ終了するか」から「シャットダウンの悪影響はどれだけ大きいか」へとシフトし、不透明感が依然として強いことが背景でしょう。また、FOMC参加者から12月利下げに懐疑的な発言が相次いだこと(後述)も大きかったかもしれません。

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米議会上院は現地10日、下院は12日に継続(つなぎ)予算案を可決。12日午後10時過ぎ(日本時間13日正午過ぎ)にトランプ大統領が署名。予算が成立して過去最長43日間のシャットダウン(政府機能の一部停止)が解消されました。

政府機能の正常化
もっとも、政府機能が正常化するには相当な時間がかかるかもしれません。シャットダウン中に山積したタスクの処理がまず優先されるでしょう。レイオフ(一時解雇)された連邦職員がすぐに復職できるか、離職した職員の穴埋めができるかも不透明です。食料補助SNAP(旧フードスタンプ)の発給には時間がかかるかもしれません。また、航空便のスケジュールが正常に戻るには1~2週間かかるとの指摘もあります。

民間企業のレイオフ
連邦職員は自宅待機者も含めてシャットダウン中の給料を後払いで受け取れます。しかし、政府と取引関係にある企業の担当者がレイオフされていれば、直ちに職場復帰ができるかは不透明であり、給料の支払いも実行されないかもしれません。

経済指標発表の遅延/キャンセル
延期されていた経済指標の発表は徐々に再開されるでしょう。データ収集が済んで発表を待つばかりだったもの、たとえば9月の雇用統計などはすぐに発表されそうです。しかし、10月分のデータ収集はされていないはず。遡ってデータ収集が可能なもの、例えば雇用統計のNFP(非農業部門雇用者数、事業所調査)は企業の給料支払い記録なのでかなりの遅れるとしても発表は可能でしょう。一方で、調査員がインタビューや実地調査でデータを集めるもの、例えば雇用統計の失業率(家計調査)やCPIなどは、調査そのものが実施されていないとみられ、10月分のデータは欠落したままとなりそうです。

13日時点の労働省統計局のHPによると、「状況を完全に把握するのに時間がかかるかもしれない。準備ができ次第、新しい発表スケジュールを当ページで発表します」とのこと。

なお、過去2番目に長い35日間のシャットダウンがあった18-19年のケースでは、労働省などの年度予算は成立していたため、経済指標の発表に支障はありませんでした。

今後の経済データはブレが大きく!?
これから発表される経済データが歪む可能性は高そうです。10月下旬に発表予定だった7-9月期GDPは景気堅調を示唆するかもしれません。11月6日時点のアトランタ連銀GDPNow(短期予測モデル)によれば、7-9月期GDPは前期比年率4.0%と高い伸びが予測されています。中立のCBO(議会予算局)は、10-12月期GDPは1.5%分下押しされると試算しています。これに前期の高成長の反動が加われば、相当な低成長、場合によってはマイナス成長となるかもしれません。逆にその反動もあって、26年1‐3月期GDPは高めの伸びになりそうですが・・。

12月利下げは微妙⁉
12月9-10日のFOMCまでに、シャットダウンの影響や景気・物価の実態がどの程度把握できるでしょうか。やはり、金融政策の判断は大変難しいものとなりそうです。

サンフランシスコ連銀のデーリー総裁(ハト、筆者判断、以下同じ)は、現時点での判断は時期尚早だと述べました。クリーブランド連銀のハマック総裁(タカ)は、労働市場について懸念しながらも、インフレ抑制のために政策金利を据え置くべきだとしました。ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁(ハト)は、インフレ率は高すぎると指摘。セントルイス連銀のムサレム総裁(タカ)はインフレ率が2%を上回っているため追加利下げには慎重になるべきだとの見解を示しました。

13日時点のOIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、市場は12月FOMCでの0.25%利下げをほぼ五分五分とみています。10月FOMC前には10月と12月の利下げがほぼ100%織り込まれていました。

※本日のM2TV(YouTube)グローバルViewでも解説する予定です。
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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