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トランプ関税の行方 米最高裁判断へ⁉

2025/09/02 08:05

【ポイント】
・連邦高裁はトランプ関税の一部を違法判断
・トランプ政権は最高裁に控訴へ、判断が覆る可能性も
・違法判断が維持されても、トランプ関税が全廃される可能性は低そう

米連邦高裁は8月29日、トランプ関税()を違法と判断し、審理を差し戻しました。これは米・国際貿易裁判所に提訴された部分のみに限るのか、トランプ関税全体を対象とするのか、再審理させるためです。

IEEPA(国際緊急経済権限法)に基づく相互関税や対カナダ・メキシコ・中国のフェンタニル関税が対象。鉄鋼・アルミや自動車など通商拡大法232条に基づく品目別関税は対象外。本稿では「トランプ関税」を全て同じ定義とします。

■6/3付け「トランプ関税はどうなるか、最高裁の判断に委ねられそう」をご覧ください。

今後の展開は?
連邦高裁の判断は10月14日まで執行停止となります。つまり、それまではトランプ関税は有効。その間に、トランプ政権は最高裁に上訴し、最高裁の判断が出るまで執行停止期間の延長を求めそうです。

最高裁で逆転も?
最高裁は6対3で保守派が過半数を占めています。これまでにもトランプ政権に有利な判断を下すことも多かったので、最高裁が連邦高裁の判断を覆してトランプ関税は有効との判断を下す可能性は高いのかもしれません。最高裁の判決に時間がかかる可能性はあり、その場合は強い不透明感が続きそうです。

最高裁でも違法とされれば・・・
最高裁が連邦高裁の判断を支持する可能性もなくはありません。その場合、国際貿易裁判所が再審理で全面的に違法と判断すれば、トランプ関税は無効となります。そして、トランプ政権に関税撤廃徴収済み関税の払い戻しの義務が発生します。

ただし、ここでの判断は、トランプ大統領がIEEPA(国際経済緊急権限法)の権限を用いたことに対するものです。トランプ政権は、議会と諮るなどして、通商法301条(不公正貿易慣行への対応)、通商拡大法232条(品目別関税)などを用いて関税を再インストールする手段を模索するでしょう。

トランプ関税の違法性が確定すれば、一時的な関税の引き下げや関税交渉のやり直しなどの機運は高まりそうです。ただし、トランプ政権が様々な手段を模索することで、今年4月2日「解放の日」以前の状態に戻ることはあまり期待できません。

いずれにせよ、事態がどう進展するのか、トランプ関税に関する不透明感は払しょくされるのか、それはいつか。引き続き見守る必要はありそうです。
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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