マネースクエア マーケット情報

トランプ関税はどうなるか、最高裁の判断に委ねられそう

2025/06/03 07:52

【ポイント】
・関税問題は最終的に最高裁に持ち込まれそう
・対象は、相互関税とフェンタニル関税。鉄鋼・アルミなど商品別関税は合法
・決着までには時間がかかり、議会での減税審議にも影響しそう

トランプ米大統領は、鉄鋼・アルミ関税を現行の25%から6月4日に50%に引き上げるとしています。トランプ関税に対して米国際貿易裁判所が違法と判断したり(5月28日)、連邦高裁が関税差し止めを一時停止したり(29日)するなど、事態は流動的です。

トランプ関税が今後、どうなるのか。Bloombergの解説コーナーQuickTakeなどを参考に概観しておきましょう。

*******
トランプ関税の何が違法とされたか
まず、国際貿易裁判所が違法と判断したのは、全般的な相互関税と、カナダ・メキシコ・中国に課した合成麻薬フェンタニルの流入抑制を目的とした関税です。それらはトランプ大統領がIEEPA(国際緊急経済権限法)に基づいて発動しました。ただ、IEEPAは、国家の危機に際して、大統領が非常事態宣言後に金融取引の規制・禁止などの経済制裁を行うことができるというもの。IEEPAを根拠に多くの国に関税をかけるのは無理筋という裁判所の判断でしょう。

一方で、鉄鋼・アルミ、自動車など商品別の関税は、通商拡大法232条に基づくもの。これは、特定の商品が米国の安全保障を阻害する恐れがある場合に、大統領に関税を発動する権限を与えるもの。それらの関税は違法と判断されていません。また、米国が18年以降に通商法301条(不公正貿易慣行への対応)に基づいて中国に課している関税も判断の対象外のようです。

今後の展開は?
関税差し止めが一時停止している間に、連邦高裁が関税の合法性を判断します。合法と判断されれば、国際貿易裁判所の差し止め命令は却下されます。連邦高裁の判断に関わらず、本件は最終的に連邦最高裁で判断されることになりそうです。

最高裁に持ち込まれれば、「重要問題法理(major questions doctrine)」に基づいて審理されるようです。これは、明確な議会の承認がない限り、連邦政府機関が大規模な政治・経済政策を実施することはできないというもの。最高裁は「重要問題法理」を論拠として、バイデン政権時にEPA(環境保護局)の気候変動対策や、教育省による学生ローン返済免除などの政策を無効としました。トランプ大統領が一方的に導入した関税に対して、最高裁が「重要問題法理」の原則を適用するかどうかが争点となるようです。

いずれにせよ、関税問題が決着するまでに相当な時間がかかりそうです。その間、関税収入の見通しは立てられないでしょう。トランプ減税を実現するための予算調整法案は関税収入を財源の一部に見込んでいるだけに、その議会審議にも影響が出るかもしれません。
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

  • 当レポートは、情報提供を目的としたものであり、特定の商品の推奨あるいは特定の取引の勧誘を目的としたものではありません。
  • 当レポートに記載する相場見通しや売買戦略は、ファンダメンタルズ分析やテクニカル分析などを用いた執筆者個人の判断に基づくものであり、予告なく変更になる場合があります。また、相場の行方を保証するものではありません。お取引はご自身で判断いただきますようお願いいたします。
  • 当レポートのデータ情報等は信頼できると思われる各種情報源から入手したものですが、当社はその正確性・安全性等を保証するものではありません。
  • 相場の状況により、当社のレートとレポート内のレートが異なる場合があります。
topへ