日米関税合意、米国側取り分90%の意味
2025/07/24 07:29
【ポイント】
・日米関税合意の詳細が徐々に明らかに
・対米投資5,500億ドルの説明が日米で微妙に異なる?
・対米投資は低金利で日本から資金を引き出すスキーム⁉
23日に日米間で合意した関税協定の内容が徐々に明らかになってきました。様々に報道されているので、詳細に立ち入ることはしませんが、一つ気になる点がありました。
日本の対米投資5,500億ドル
日本が米国に対して最大5,500億ドル(約80兆円、1米ドル=146円で計算、以下同じ)の投資を行い、利益の90%を米国が受け取り、残り10%を日本が受け取るというもの。
日本製鉄がUSスチールに投資したのが140億ドルあまり。28年までに追加投資110億ドル、その後に30億ドルとのことなので、総額282億ドル(約4兆1,000億円)。これに比べて5,500億ドルというのは途方もない額に感じられます。
日経電子版(23日21:42配信、24日0:29更新)によれば、この投資計画を「ジャパン・インベストメント・アメリカ・イニシアティブ」と呼び、半導体や医薬品、造船など経済安全保障にかかわる分野で日本企業の対米投資を拡大させる、とのこと。そして、投資の呼び水とするために、日本政府は政府系金融機関による最大5,500億ドルの出資・融資・融資保証枠を新設するようです。
いかに日本政府のバックアップがあるとしても、日本企業に対米投資を促し、その上がりの90%を米国が取るのはさすがに行き過ぎではないか。そう思っていました。
日本は銀行⁉
ところが、Bloombergの記事によるとニュアンスが異なるようです。ベッセント財務長官はインタビューに答えて、日本の投資を「革新的な資金供給スキーム」と呼び、「米国内の大型プロジェクトに対して、出資や融資保証、資金を行う内容だ」と説明しました。
また、ラトニック商務長官は、自身がこれを1月に考え出したと主張しました。そして、投資は、日本企業が行うプロジェクトを特に対象にするわけではないと述べました。そのうえで、日本は「銀行(バンカー)であり、運営事業者(オペレーター)ではない」との認識を示しました。
仮に米国側の説明が正しければ、対米投資は非常に低い金利(※)で日本からお金を引っ張るスキームに過ぎないということになります。
※固定金利ではなく、利益の10%ということなので利益率次第ですが、おそらく1%かそれ以下になるのではないでしょうか。
トランプ政権は、外国が保有する米国債に「高い」金利を払っていることに不満を持っているとされていました。このスキームを使えば「低い」金利で資金調達ができるということでしょう。
日本の資金が米国に投資されるという意味では、日本側と米国側の説明に大差はないかもしれません。ただ、他の項目に関しても日米での解釈が異なっていないか、ちょっと心配になりました。
・日米関税合意の詳細が徐々に明らかに
・対米投資5,500億ドルの説明が日米で微妙に異なる?
・対米投資は低金利で日本から資金を引き出すスキーム⁉
23日に日米間で合意した関税協定の内容が徐々に明らかになってきました。様々に報道されているので、詳細に立ち入ることはしませんが、一つ気になる点がありました。
日本の対米投資5,500億ドル
日本が米国に対して最大5,500億ドル(約80兆円、1米ドル=146円で計算、以下同じ)の投資を行い、利益の90%を米国が受け取り、残り10%を日本が受け取るというもの。
日本製鉄がUSスチールに投資したのが140億ドルあまり。28年までに追加投資110億ドル、その後に30億ドルとのことなので、総額282億ドル(約4兆1,000億円)。これに比べて5,500億ドルというのは途方もない額に感じられます。
日経電子版(23日21:42配信、24日0:29更新)によれば、この投資計画を「ジャパン・インベストメント・アメリカ・イニシアティブ」と呼び、半導体や医薬品、造船など経済安全保障にかかわる分野で日本企業の対米投資を拡大させる、とのこと。そして、投資の呼び水とするために、日本政府は政府系金融機関による最大5,500億ドルの出資・融資・融資保証枠を新設するようです。
いかに日本政府のバックアップがあるとしても、日本企業に対米投資を促し、その上がりの90%を米国が取るのはさすがに行き過ぎではないか。そう思っていました。
日本は銀行⁉
ところが、Bloombergの記事によるとニュアンスが異なるようです。ベッセント財務長官はインタビューに答えて、日本の投資を「革新的な資金供給スキーム」と呼び、「米国内の大型プロジェクトに対して、出資や融資保証、資金を行う内容だ」と説明しました。
また、ラトニック商務長官は、自身がこれを1月に考え出したと主張しました。そして、投資は、日本企業が行うプロジェクトを特に対象にするわけではないと述べました。そのうえで、日本は「銀行(バンカー)であり、運営事業者(オペレーター)ではない」との認識を示しました。
仮に米国側の説明が正しければ、対米投資は非常に低い金利(※)で日本からお金を引っ張るスキームに過ぎないということになります。
※固定金利ではなく、利益の10%ということなので利益率次第ですが、おそらく1%かそれ以下になるのではないでしょうか。
トランプ政権は、外国が保有する米国債に「高い」金利を払っていることに不満を持っているとされていました。このスキームを使えば「低い」金利で資金調達ができるということでしょう。
日本の資金が米国に投資されるという意味では、日本側と米国側の説明に大差はないかもしれません。ただ、他の項目に関しても日米での解釈が異なっていないか、ちょっと心配になりました。
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