米FOMC、7月利下げの可能性は?
2025/06/27 07:44
【ポイント】
・政権の圧力もあって7月の利下げ観測は低いながらもジリジリ上昇中
・FRB内部にも7月利下げを検討すべきとの声も
・本日のPCEやその他の経済データ次第で利下げ観測は一段と高まるか
7月29-30日のFOMCに向けて、市場の利下げ観測がジリジリと高まっています。26日時点のOIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、市場が織り込む7月利下げの確率は2割強。確率として高くありませんが、6月17-18日のFOMC直後には確率が1割もありませんでした。本日発表の5月PCE(個人消費支出)デフレーター、7月3日の6月雇用統計、同15日の6月CPI(消費者物価指数)やその他の経済データ次第では利下げ観測が一段と高まる可能性もあるでしょう。
トランプ政権から利下げを求める圧力が強まっています。トランプ大統領は次期FRB議長候補を3~4人に絞り込んだとして近く発表する意向を示しています。次期議長候補は、いわゆる「シャドウ議長」として、その発言が市場で注目されたり、金融政策自体に影響を与えたりする可能性もあります。
ラトニック商務長官は25日、SNSでパウエル議長を批判し、「あなたの仕事は米国民を助けることであって、傷つけることではない。バカみたいに高い金利を次の会合で引き下げよ」と発信しました。
まだ少数派ですが、FRB内部からも早期利下げを検討すべきとの意見が出ています。ボウマン副議長は23日の講演で、「インフレ圧力が抑制されたままであれば、次回会合で利下げを支持する」と述べました。また、ウォラー理事は20日のメディアインタビューで、「利上げの余地はある。早ければ7月に行うかもしれない」と述べました。
ボウマン氏は6月9日に理事から副議長(銀行監督担当)に昇格したばかり。ウォラー理事はトランプ政権1期目終盤に指名されており、次期議長候補に名前が挙がっています。どちらもトランプ政権の覚えがめでたいと考えるのは穿(うが)ち過ぎでしょうか。
65年にジョンソン大統領(当時、以下同じ)がマーチン議長をテキサスの自身の牧場に呼びつけて利下げを迫ったのは有名な話です。また、70年代にはニクソン大統領がバーンズ議長に金融緩和を要求し、議長が忖度したと指摘されています。
それらのエピソードを踏まえて、78年にはハンフリーホーキンス(HH)法が成立し、FRBの役割を強化・明確化し、独立性を高めました。長くディスインフレの時代が続いたので、政権とFRBとの確執はそれほど激しいものにはなりませんでした。しかし、80年代前半以来のスタグフレーションが懸念される現在、再びFRBの独立性が脅かされています。今後の展開は、米国、米ドル、米ドル建て資産への信認にもかかわる問題だけに注意深くモニターすべきでしょう。
なお、HH法は2000年に失効しましたが、その精神は年2回の議長の議会証言という形で残っています。その場で、パウエル議長が共和党議員から利下げを迫られたのは皮肉と言えそうです。
・政権の圧力もあって7月の利下げ観測は低いながらもジリジリ上昇中
・FRB内部にも7月利下げを検討すべきとの声も
・本日のPCEやその他の経済データ次第で利下げ観測は一段と高まるか
7月29-30日のFOMCに向けて、市場の利下げ観測がジリジリと高まっています。26日時点のOIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、市場が織り込む7月利下げの確率は2割強。確率として高くありませんが、6月17-18日のFOMC直後には確率が1割もありませんでした。本日発表の5月PCE(個人消費支出)デフレーター、7月3日の6月雇用統計、同15日の6月CPI(消費者物価指数)やその他の経済データ次第では利下げ観測が一段と高まる可能性もあるでしょう。
トランプ政権から利下げを求める圧力が強まっています。トランプ大統領は次期FRB議長候補を3~4人に絞り込んだとして近く発表する意向を示しています。次期議長候補は、いわゆる「シャドウ議長」として、その発言が市場で注目されたり、金融政策自体に影響を与えたりする可能性もあります。
ラトニック商務長官は25日、SNSでパウエル議長を批判し、「あなたの仕事は米国民を助けることであって、傷つけることではない。バカみたいに高い金利を次の会合で引き下げよ」と発信しました。
まだ少数派ですが、FRB内部からも早期利下げを検討すべきとの意見が出ています。ボウマン副議長は23日の講演で、「インフレ圧力が抑制されたままであれば、次回会合で利下げを支持する」と述べました。また、ウォラー理事は20日のメディアインタビューで、「利上げの余地はある。早ければ7月に行うかもしれない」と述べました。
ボウマン氏は6月9日に理事から副議長(銀行監督担当)に昇格したばかり。ウォラー理事はトランプ政権1期目終盤に指名されており、次期議長候補に名前が挙がっています。どちらもトランプ政権の覚えがめでたいと考えるのは穿(うが)ち過ぎでしょうか。
65年にジョンソン大統領(当時、以下同じ)がマーチン議長をテキサスの自身の牧場に呼びつけて利下げを迫ったのは有名な話です。また、70年代にはニクソン大統領がバーンズ議長に金融緩和を要求し、議長が忖度したと指摘されています。
それらのエピソードを踏まえて、78年にはハンフリーホーキンス(HH)法が成立し、FRBの役割を強化・明確化し、独立性を高めました。長くディスインフレの時代が続いたので、政権とFRBとの確執はそれほど激しいものにはなりませんでした。しかし、80年代前半以来のスタグフレーションが懸念される現在、再びFRBの独立性が脅かされています。今後の展開は、米国、米ドル、米ドル建て資産への信認にもかかわる問題だけに注意深くモニターすべきでしょう。
なお、HH法は2000年に失効しましたが、その精神は年2回の議長の議会証言という形で残っています。その場で、パウエル議長が共和党議員から利下げを迫られたのは皮肉と言えそうです。
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