原油価格は落ち着くのか、イスラエル・イラン停戦合意で急落
2025/06/24 08:09
【ポイント】
・米国のイラン空爆でWTI原油価格は一時78.40ドルまで上昇
・24日のイスラエル・イラン停戦合意を受けて65ドルまで下落
・最終的な合意に至るか、今後の交渉に要注目
原油価格が急落しています。日本時間24日午前7時にWTI原油先物価格は一時65.02ドルをつけました。その約6時間前には74ドル近辺で推移していました。イランによるカタールの米軍基地へのミサイル攻撃が限定的だったこと、事前通告されたこともあって全ミサイルの迎撃に成功したこと、さらには懸念されたホルムズ海峡を含めて石油関連への打撃がなかったことから安心感が広がりました。さらに、同午前7時ごろにトランプ大統領がSNSでイスラエルとイランの停戦合意を発表したことで、原油価格はさらに下押ししました。

米国を巻き込んだ(米国が介入した?)イスラエルとイランの戦火拡大が回避されたこと、そして石油の供給網への攻撃がなかったことなどから、原油価格は当面落ち着いて推移しそうです。
もっとも、このまま原油価格が低位安定すると判断するのは時期尚早かもしれません。トランプ大統領の発信によれば、「完全かつ徹底的な停戦」は12時間の期限付き。その間に、停戦の長期化や終戦に向けての合意が達成されるかは不透明でしょう。核開発の放棄を求める米国やイスラエルの要求と、経済制裁の解除を求めるイランがどこで折り合いをつけるのか、現時点ではなかなか見えてきません。今後の交渉を注意深く見守る必要がありそうです。
以下では、原油価格の歴史を振り返っておきます(23年10月10日付け「中央紛争と原油価格の歴史」をアップデートして再掲しました)。
*******
73年10月に勃発した第4次中東戦争ではOPEC(石油輸出国機構)がイスラエル支援国に対して禁輸措置を採り、原油価格はそれまでの1バレル=2-3ドルから同10-12ドルまで上昇、第1次石油ショックを引き起こしました。79年にはイラン革命が起こり、80年にイラン・イラク戦争もあったため、原油価格は30-40ドルまで上昇、第2次石油ショックを招きました。

86年にはサウジアラビアが市場シェア拡大を狙って原油を増産したため(いわゆるオイル・グラット)、原油価格は急落しました。
90年8月にはイラクがクウェートに侵攻して湾岸危機が発生。原油価格は約2倍(20ドル⇒40ドル)に急騰しました。ただ、米国がリセッション(景気後退)入りしたこともあって、多国籍軍によるイラク攻撃(湾岸戦争)が開始された91年1月には危機前の水準である20ドル前後まで下落しました。
01年のIT株バブル崩壊を受けて、米FRBが積極的な金融緩和を進めたため、住宅バブルが発生。過剰な流動性は原油市場にも流入、産油国の生産設備の老朽化による供給能力の低下もあって、原油価格は08年7月に一時147ドル台をつけました。その後はリーマン・ショックにより急落。
09年後半に世界経済が回復すると原油価格も上昇に転じました。そして、11年には「アラブの春」が起き、リビアの原油生産が減少。リーマン・ショック後の世界的な金融緩和の継続もあって2010年代前半の原油価格は100ドル前後で推移しました。
14年後半以降、世界経済が減速する一方で、非OPECが原油を増産したことで、原油価格は大幅に下落。20年春にはコロナ・ショックで一時急落しました(4月20日にマイナス40.32ドルを記録)。その後は世界的な金融緩和のもとで原油価格が100ドルを超える場面もありましたが、22年春ごろからの主要中銀のアグレッシブな利上げにより60ドル台まで下落。足もとでは60ドル~80ドルのレンジを中心に推移しています。
・米国のイラン空爆でWTI原油価格は一時78.40ドルまで上昇
・24日のイスラエル・イラン停戦合意を受けて65ドルまで下落
・最終的な合意に至るか、今後の交渉に要注目
原油価格が急落しています。日本時間24日午前7時にWTI原油先物価格は一時65.02ドルをつけました。その約6時間前には74ドル近辺で推移していました。イランによるカタールの米軍基地へのミサイル攻撃が限定的だったこと、事前通告されたこともあって全ミサイルの迎撃に成功したこと、さらには懸念されたホルムズ海峡を含めて石油関連への打撃がなかったことから安心感が広がりました。さらに、同午前7時ごろにトランプ大統領がSNSでイスラエルとイランの停戦合意を発表したことで、原油価格はさらに下押ししました。

米国を巻き込んだ(米国が介入した?)イスラエルとイランの戦火拡大が回避されたこと、そして石油の供給網への攻撃がなかったことなどから、原油価格は当面落ち着いて推移しそうです。
もっとも、このまま原油価格が低位安定すると判断するのは時期尚早かもしれません。トランプ大統領の発信によれば、「完全かつ徹底的な停戦」は12時間の期限付き。その間に、停戦の長期化や終戦に向けての合意が達成されるかは不透明でしょう。核開発の放棄を求める米国やイスラエルの要求と、経済制裁の解除を求めるイランがどこで折り合いをつけるのか、現時点ではなかなか見えてきません。今後の交渉を注意深く見守る必要がありそうです。
以下では、原油価格の歴史を振り返っておきます(23年10月10日付け「中央紛争と原油価格の歴史」をアップデートして再掲しました)。
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73年10月に勃発した第4次中東戦争ではOPEC(石油輸出国機構)がイスラエル支援国に対して禁輸措置を採り、原油価格はそれまでの1バレル=2-3ドルから同10-12ドルまで上昇、第1次石油ショックを引き起こしました。79年にはイラン革命が起こり、80年にイラン・イラク戦争もあったため、原油価格は30-40ドルまで上昇、第2次石油ショックを招きました。

86年にはサウジアラビアが市場シェア拡大を狙って原油を増産したため(いわゆるオイル・グラット)、原油価格は急落しました。
90年8月にはイラクがクウェートに侵攻して湾岸危機が発生。原油価格は約2倍(20ドル⇒40ドル)に急騰しました。ただ、米国がリセッション(景気後退)入りしたこともあって、多国籍軍によるイラク攻撃(湾岸戦争)が開始された91年1月には危機前の水準である20ドル前後まで下落しました。
01年のIT株バブル崩壊を受けて、米FRBが積極的な金融緩和を進めたため、住宅バブルが発生。過剰な流動性は原油市場にも流入、産油国の生産設備の老朽化による供給能力の低下もあって、原油価格は08年7月に一時147ドル台をつけました。その後はリーマン・ショックにより急落。
09年後半に世界経済が回復すると原油価格も上昇に転じました。そして、11年には「アラブの春」が起き、リビアの原油生産が減少。リーマン・ショック後の世界的な金融緩和の継続もあって2010年代前半の原油価格は100ドル前後で推移しました。
14年後半以降、世界経済が減速する一方で、非OPECが原油を増産したことで、原油価格は大幅に下落。20年春にはコロナ・ショックで一時急落しました(4月20日にマイナス40.32ドルを記録)。その後は世界的な金融緩和のもとで原油価格が100ドルを超える場面もありましたが、22年春ごろからの主要中銀のアグレッシブな利上げにより60ドル台まで下落。足もとでは60ドル~80ドルのレンジを中心に推移しています。
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