BOC会合に注目、トランプ政権は鉄鋼・アルミ関税を引き上げへ!?
2025/06/04 08:40
【ポイント】
・鉄鋼とアルミ関税引き上げへの各国の対応
・BOC(カナダ中銀)の利下げの有無、先行きの金融政策についてどのようなヒントが示されるか
・米経済指標で市場のFRB金融政策見通しが変化するか
(欧米市場レビュー)
3日、欧米時間の外為市場では米ドルが反発。一時米ドル/円は144.072円へと上昇し、ユーロ/米ドルは1.13635ドル、英ポンド/米ドルは1.34931ドルへと下落しました。米国の4月JOLTS(労働動態調査)求人件数が739.1万件と、市場予想の710.0万件を上回ったことが、米ドルのプラス材料になりました。
円は軟調に推移。一時ユーロ/円は163.814円、英ポンド/円は194.717円、豪ドル/円は93.067円へと上昇しました。植田日銀総裁が追加利上げを急がない姿勢を示したことや、欧米の主要な株価指数が堅調に推移するなかでリスクオフ(リスク回避)が後退したことが、円の重石となりました。
植田総裁は参院財政金融委員会で、「(展望リポートで示した)見通しが実現していけば、経済・物価情勢の改善に応じて引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく」との方針を改めて表明。その一方で、「将来の利下げ余地をつくるために、経済・物価情勢の改善が見込めない中で、無理に政策金利を引き上げる考えはない」と述べました。
(本日の相場見通し)
トランプ政権は米東部時間4日午前0時1分(日本時間午後1時1分)、米国に輸入される鉄鋼・アルミに課す追加関税を25%から50%へと引き上げる措置を発動する予定です。5月に通商交渉で合意した英国は関税引き上げの適用対象外となります。
鉄鋼・アルミ関税の引き上げが実際に発動された場合、各国の対応に注目です。仮にEU(欧州連合)や中国などの対応によって貿易摩擦が激化するとの懸念が市場で高まれば、リスクオフが強まる可能性があります。リスクオフは円のプラス材料になると考えられます。
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BOC(カナダ中銀)の政策会合が本日開かれます。会合の結果は日本時間22時45分に発表され、同23時30分からマックレム総裁が会見します。それらにカナダドルが反応しそうです。
BOCは24年6月から25年3月にかけて7会合連続合計2.25%の利下げを実施。前回4月の会合では政策金利を2.75%に据え置きました。
トランプ政権による関税はカナダ経済に大きな打撃を与える可能性があります。一方で、カナダの4月CPI(消費者物価指数)はトリム値が前年比3.1%、中央値が同3.2%と、上昇率はいずれも前月(それぞれ2.9%と2.8%)から高まりました。本日の会合で政策金利は現行の2.75%に据え置かれるとの見方が市場では優勢です。
BOCの声明やマックレム総裁の会見にも注目です。それらでは7月以降の会合についてどのようなヒントが示されるのかが焦点になりそう。市場では、本日の会合で政策金利は据え置かれたとしても、次回7月30日の会合で0.25%の追加利下げが行われるとの観測があります。
本日の会合で政策金利が据え置かれて、さらに声明やマックレム総裁の会見で7月以降の追加利下げ観測が市場で後退する場合、カナダドルが堅調に推移しそうです。
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本日は、米国の5月ADP雇用統計や5月ISM非製造業景況指数が発表されます。それらの結果が材料になる可能性があります。
市場予想は以下のとおり。( )は前回の実績です。
・ADP雇用統計(前月比):11.2万人増(6.2万人増)
・ISM非製造業景況指数:52.0(51.6)
市場では、FRB(米連邦準備制度理事会)は9月のFOMC(米連邦公開市場委員会)で追加利下げを行うとの見方が優勢。CMEのFedWatchツールによると、米国時間3日時点で市場が織り込む利下げ確率は、6月17-18日のFOMCで約1%、7月29-30日のFOMCまでで約25%、9月16-17日のFOMCまでで約70%です。
ADP雇用統計やISM非製造業景況指数が市場予想を下回る結果になれば、米景気の先行きへの懸念が強まるともに、FRBの追加利下げ観測が高まる可能性があります。その場合には米ドルが軟調に推移して、米ドル/円や米ドル/カナダドルには下落圧力が、ユーロ/米ドルや英ポンド/米ドルには上昇圧力が加わりそうです。米ドル/円の下値メドとして、5月27日安値の142.093円が挙げられます。
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