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米ドルが全般的に軟調、対カナダドルで約8カ月ぶり安値

2025/06/03 08:49

【ポイント】
・貿易摩擦が激化するとの懸念がさらに高まるか
JOLTS求人件数の結果次第では米景気をめぐる懸念が高まる可能性も
・植田総裁の講演で日銀の金融政策について新たなヒントが提供されるか

(欧米市場レビュー)

2日、欧米時間の外為市場では米ドルが軟調に推移。一時米ドル/円は142.529円、米ドル/カナダドルは1.36699カナダドルへと下落し、ユーロ/米ドルは1.14448ドル、英ポンド/米ドルは1.35539ドルへと上昇。米ドル/カナダドルは、24年10月上旬以来8カ月ぶりの安値をつけました。トランプ米大統領の発言や中国の反応を受けて貿易摩擦が激化するとの懸念が高まったことや、米国の5月ISM製造業景況指数が48.5と市場予想の49.3を下回ったことが、米ドルに対する下押し圧力となりました。

トランプ大統領は5月30日に演説で、「6月4日から米国に輸入される鉄鋼・アルミニウムに課す追加関税を25%から50%(2倍)に引き上げる」と表明しました。

トランプ大統領はまた、同じく5月30日に「中国は米国との合意に完全に違反した」とSNSに投稿。それに対して中国は6月2日、「トランプ大統領の主張には根拠がない。中国の正当な権利と利益を守るために断固とした措置を取る」としました。

(本日の相場見通し)

トランプ大統領は、6月4から鉄鋼・アルミ関税を現行の25%から50%へと引き上げる考えを示しています。

鉄鋼・アルミ関税を含めてトランプ政権による関税について新たなニュースが出てくるかに注目です。新たなニュースによって貿易摩擦が激化するとの懸念がさらに高まる場合、米ドル安圧力は一段と強まる可能性があります。

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本日は、米国の4月JOLTS(労働動態調査)が発表されます(日本時間23:00)。

JOLTS求人件数の市場予想は710.0万件と、前月の719.2万件から減少するとみられています。市場予想を下回る結果になれば、米景気の先行きをめぐる懸念が高まるとともに、米ドルのマイナス材料になりそう。米ドル/円や米ドル/カナダドルは下値を試し、ユーロ/米ドルや英ポンド/米ドルは上値を試す可能性があります。米ドル/は、5月27日安値の142.093を割り込むかもしれません。

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日銀の植田総裁が内外情勢調査会で本日講演します(日本時間16:50)。

植田総裁は5月27日の国際コンファランスでの開会あいさつで「経済・物価の中心的な見通しが実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになる」と改めて表明。また、「現在、物価安定の目標にまだ到達していないものの、過去30年間のどの時点よりもそれに近づいている」、「食料品価格の上昇が基調的な物価上昇率に与え得る影響に注意する必要がある」などと述べました。

市場では、日銀は今年終盤に追加利上げを行うとの見方が優勢です。

本日の植田総裁の講演で、日銀の先行きの金融政策について新たなヒントが提供されるかどうかに注目。新たなヒントが提供されれば、市場が反応しそうです。

八代和也

執筆者プロフィール

八代和也(ヤシロカズヤ)

シニアアナリスト

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