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米連邦巡回控訴裁判所がトランプ関税の差し止めを一時停止

2025/05/30 09:12

【ポイント】
・「中国との交渉はやや行き詰まっている」と米財務長官が発言、リスクオフが強まる可能性も
・米PCEデフレーターで市場のFRB金融政策見通しが変化するか
・カナダGDPでBOCの追加利下げ観測が市場で後退するか

(欧米市場レビュー)

29日、欧米時間の外為市場では米ドルが軟調に推移。一時米ドル/円は143.943円、米ドル/カナダドルは1.37835カナダドルへと下落し、ユーロ/米ドルは1.13788ドル、英ポンド/米ドルは1.35019ドル、豪ドル/米ドルは0.64549米ドルへと上昇しました。米国の先週分の新規失業保険申請件数の弱い結果やトランプ政権の関税の先行き不透明感が、米ドルの重石となりました。

新規失業保険申請件数の結果は24.0万件、市場予想は23.0万件でした。米国の国際貿易裁判所は28日、トランプ関税の一部(相互関税など)を違法だとして差し止めるとの判断を下しました。トランプ政権はただちに控訴し、連邦巡回控訴裁判所は29日に差し止めの一時停止(関税は有効)を命じました。

SARB(南アフリカ中銀)は0.25%の利下げを行うことを決定。政策金利を7.75%から7.50%に引き下げました。利下げは24年7月以降4回目です。0.25%利下げするとの決定は5対1で、反対した1人はより大幅な0.50%利下げすることを主張しました。SARBの政策決定に対して南アフリカランドは反応薄でした。

(本日の相場見通し)

ベッセント米財務長官は29日(日本時間30日朝)、「中国との貿易交渉はやや行き詰まっている」と述べました。リスクオフ(リスク回避)が強まる可能性があります。リスクオフはのプラス材料になると考えられるため、リスクオフが強まる場合には米ドル/円やクロス円(ユーロ/円や豪ドル/円など)には下押し圧力が加わりやすいかもしれません。

米国の4月PCE(個人消費支出)デフレーターが本日発表されます(日本時間21:30)。

PCEデフレーターの市場予想は以下のとおり。( )は前回の実績です。
<総合>
・前月比:0.1%(0.0%)
・前年比:2.2%(2.3%)
<コア>
・前月比:0.1%(0.0%)
・前年比:2.5%(2.6%)

市場では、FRB(米連邦準備制度理事会)は9月のFOMC(米連邦公開市場委員会)で追加利下げを行うとの見方が優勢。CMEのFedWatchツールによると、米国時間29日時点で市場が織り込む利下げ確率は、6月が約4%、7月までで約25%、9月までで7割弱です。

PCEデフレーターが市場予想を下回る結果になれば、FRBの追加利下げ観測が強まると考えられます。その場合、米ドルのマイナス材料となって米ドル/円は軟調に推移し、ユーロ/米ドルや英ポンド/米ドルは堅調に推移しそうです。英ポンド/米ドルの目先の上値メドとして、5月26日高値の1.35889ドルが挙げられます。

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カナダの1-3月期GDP(国内総生産)が発表されます(日本時間21:30)。この結果にカナダドルが反応しそうです。

GDPの市場予想は前期比年率換算1.7%と、成長率は24年10-12月期の2.6%から減速するとみられています。

6月4日にBOC(カナダ中銀)の政策会合が開かれます。政策金利は現行の2.75%に据え置かれるとの見方が市場では優勢であり、OIS(翌日物金利スワップ)が織り込む確率は、政策金利の据え置きが7割強、0.25%の利下げが3割弱です。

GDPが市場予想を上回る結果になれば、BOCの追加利下げ観測が後退するとともに、カナダドルが堅調に推移する可能性があります。

***

4回目の日米関税交渉がワシントンで30日(日本時間31日)に開かれます。日本側は赤沢経済再生担当相、米国側はベッセント財務長官らが交渉に参加します。ベッセント長官は前回23日(日本時間24日)の協議では欠席していました。日米の関税交渉に進展がみられるかどうかに注目です。
八代和也

執筆者プロフィール

八代和也(ヤシロカズヤ)

シニアアナリスト

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