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トランプ大統領の利下げ要求は逆効果!?

2025/05/30 07:26

【ポイント】
・トランプ大統領はパウエル議長と面談して利下げを要求
・FRB声明は政治に屈しない姿勢を表明!?
・GDP予想は足もと景気の堅調さを示唆

トランプ米大統領は29日、パウエルFRB議長をホワイトハウスに招き(呼び付け?)、利下げをするように強く迫ったようです。

もっとも、トランプ大統領の利下げ要求は逆効果になる可能性が高そうです。米ドルが基軸通貨である条件の1つに公正かつ透明な金融市場があり、中央銀行の独立性もその中に含まれるはずです。基軸通貨としての地位が揺らぐならば、米ドルや米ドル建て資産には下落圧力が加わるでしょう。

仮に、FRBが利下げに踏み切ったとしても、それが政治圧力に屈したものだと市場が判断すれば、短期金利は低下しても長期金利は上昇するかもしれません。イールドカーブがスティープ化すれば(利回り曲線の右上がりの傾斜が急になれば)、米経済にとってもマイナスになるでしょう。

28日には米国の国際貿易裁判所が、大統領令による相互関税などは違法だとの判断を下しました。当面、関税は有効のようですが先行きどうなるのか。各国との関税交渉も多くが継続中であり、それらの総合的な影響は簡単には推し量れないでしょう。また、FOMC議事録(5/6-7開催分)では、関税のみならず、財政・規制・移民政策などについても不確実性が非常に大きいと指摘されています。

■29日付け「米FOMC議事録:不確実性が一段と高まるなかで、待つ余裕が十分にある!?」をご参照ください。

幸いにして、米景気は底堅く推移しているようで(後述)、FRBには金融政策を維持してトランプ政権の政策の影響がより明確になるまで待つ余裕がありそうです。

トランプ大統領とパウエル議長の面談について、FRBは以下の声明を発表しました<筆者全訳>。政治圧力には屈しないとの姿勢を示したかったのでしょう。示さざるを得なかったのかもしれません。

「大統領の招きに応じて、パウエル議長はホワイトハウスで大統領と面談し、景気・雇用・インフレなどの経済情勢を話し合った。

パウエル議長は金融政策の見通しについては議論せず、代わりに政策の軌道は完全に今後入手する経済データとそれらが経済見通しに与える影響に依存することを強調した。

最後に、パウエル議長は、彼自身とFOMCのメンバーは法の規定に従って最大の雇用と安定した物価を支援するために金融政策を決定し、それらの決定をもっぱら注意深く、客観的で、かつ政治を排除した分析に基づいて行うと伝えた(下線強調は筆者による)」

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今年1-3月期GDPは前期比年率-0.2%と、速報値(-0.3%)から小幅に上方修正されたものの、引き続きマイナス。ただし、マイナス成長になった主因は、関税発動前の駆け込みによって輸入が急増し、純輸出(=輸出-輸入)が大きく足を引っ張ったこと(純輸出のGDP寄与度は-4.9%)。PDFP(国内民間最終需要=個人消費+設備投資+住宅投資)はGDPを2.2%押し上げており、それ以前の数四半期と比較してもさほど悪くありません。上述したFOMC議事録でも、「1-3月期はマイナス成長だったものの、PDFPは底堅い」との指摘がありました。

GDPNow

アトランタ連銀のGDPNow(短期予測モデル)によれば、27日時点(GDP改定値発表前)で4-6月期GDPは前期比年率2.2%と予測されています。PDFPのGDP寄与度は3.0%と、過去数四半期で最大となる見通しです。今後のデータ次第で予測は変化するでしょうが、現時点で景気は底堅いと言えそうです。
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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