米FOMC議事録:不確実性が一段と高まるなかで、待つ余裕が十分にある!?
2025/05/29 07:33
【ポイント】
・引き続きトランプ政権の政策の不確実性が強く意識された
・景気の下方リスク、物価の上昇リスクのいずれもが増大
・足もと景気が比較的底堅いため、関税等の影響が明確になるまで待つ余裕はある
・イールドカーブのスティープ化や、金利と米ドルとの逆相関を指摘
米FOMC議事録(5/6-7開催分)によれば、トランプ政権の政策に関する不確実性が引き続き強く意識されました。大半が関税への言及でしたが、財政・規制・移民に関する政策の変化とその影響についても重大な不確実性があると指摘されました。
議事録中には、「関税」が32回、(政府の政策に関わる)「不確実(不透明)」が19回出てきます。前回3月18-19日開催分の議事録では「関税」が18回、「不確実」が21回でした。
結論として、不確実性が強く、景気の下振れリスクと物価の上振れリスクがいずれも増大しているなかでも、景気が比較的底堅さを維持している。そのため、慎重なアプローチが適切であり、トランプ政権の政策変更の影響が明確になるまで待つ十分な余裕があるとのことでした。
28日時点のOIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、市場のメインシナリオ(確率5割超)で次の利下げは9月。それも7割程度に過ぎず、確実視される(10割超)のは10月です。

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物価については、関税の価格転嫁やサプライチェーンの障害などの上振れリスクが指摘されました。企業や消費者のインフレ期待が上昇しており、さらにコロナ・ショック後のインフレ高騰の経験もあって値上げし易い環境だとの指摘もありました。また、関税に直接影響を受けない企業も便乗値上げするかもしれないとの指摘もありました。
一方で、インフレ・リスクを低減し得るものとして、通商交渉における関税引き下げ、値上げに対する消費者の拒否感、景気の鈍化、移民減少に伴う住宅価格上昇圧力の低下なども指摘されました。
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景気は足もとで底堅く、失業率は低位で安定していると判断。今年1-3月期GDPはマイナス成長になったものの、PDFD(国内民間最終需要=個人消費+設備投資+住宅投資)は底堅いと指摘されました。
もっとも、関税発動に備えた駆け込み需要の反動、海外景気の減速、移民規制に伴う需要や労働力の減少、政府支出の削減など、景気下振れリスクへの言及もありました。
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金融市場の安定に関して、国債市場の重要性が指摘されました。イールドカーブのスティープ化(利回り曲線の右上がりの傾斜が急になること)が指摘されました。とりわけ、長期金利の上昇と米ドルの下落という、典型的なパターンからの変化への言及がありました。「悪い金利上昇」との表現はありませんでしたが、こうした変化が継続し、あるいは米国資産の安全資産としての地位が揺らぐならば、米経済にとって長期的な影響があるかもしれないと指摘されました。
ただ、スタッフからの報告では、海外の投資家が米国資産を大量に売却したとの証拠はなし。足もとの状況(金利上昇&米ドル安)は米国資産からの資金流出というより、グローバル投資家が一段の米ドル安に備えて為替ヘッジを増やしたためだとのこと。
もっとも、同じスタッフの報告で、大手のグローバル投資家は投資戦略をゆっくりと変更する傾向があるので、保有資産の地域配分に変更があるかどうかは今後の世界経済見通しの変化によるとのことでした。
・引き続きトランプ政権の政策の不確実性が強く意識された
・景気の下方リスク、物価の上昇リスクのいずれもが増大
・足もと景気が比較的底堅いため、関税等の影響が明確になるまで待つ余裕はある
・イールドカーブのスティープ化や、金利と米ドルとの逆相関を指摘
米FOMC議事録(5/6-7開催分)によれば、トランプ政権の政策に関する不確実性が引き続き強く意識されました。大半が関税への言及でしたが、財政・規制・移民に関する政策の変化とその影響についても重大な不確実性があると指摘されました。
議事録中には、「関税」が32回、(政府の政策に関わる)「不確実(不透明)」が19回出てきます。前回3月18-19日開催分の議事録では「関税」が18回、「不確実」が21回でした。
結論として、不確実性が強く、景気の下振れリスクと物価の上振れリスクがいずれも増大しているなかでも、景気が比較的底堅さを維持している。そのため、慎重なアプローチが適切であり、トランプ政権の政策変更の影響が明確になるまで待つ十分な余裕があるとのことでした。
28日時点のOIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、市場のメインシナリオ(確率5割超)で次の利下げは9月。それも7割程度に過ぎず、確実視される(10割超)のは10月です。

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物価については、関税の価格転嫁やサプライチェーンの障害などの上振れリスクが指摘されました。企業や消費者のインフレ期待が上昇しており、さらにコロナ・ショック後のインフレ高騰の経験もあって値上げし易い環境だとの指摘もありました。また、関税に直接影響を受けない企業も便乗値上げするかもしれないとの指摘もありました。
一方で、インフレ・リスクを低減し得るものとして、通商交渉における関税引き下げ、値上げに対する消費者の拒否感、景気の鈍化、移民減少に伴う住宅価格上昇圧力の低下なども指摘されました。
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景気は足もとで底堅く、失業率は低位で安定していると判断。今年1-3月期GDPはマイナス成長になったものの、PDFD(国内民間最終需要=個人消費+設備投資+住宅投資)は底堅いと指摘されました。
もっとも、関税発動に備えた駆け込み需要の反動、海外景気の減速、移民規制に伴う需要や労働力の減少、政府支出の削減など、景気下振れリスクへの言及もありました。
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金融市場の安定に関して、国債市場の重要性が指摘されました。イールドカーブのスティープ化(利回り曲線の右上がりの傾斜が急になること)が指摘されました。とりわけ、長期金利の上昇と米ドルの下落という、典型的なパターンからの変化への言及がありました。「悪い金利上昇」との表現はありませんでしたが、こうした変化が継続し、あるいは米国資産の安全資産としての地位が揺らぐならば、米経済にとって長期的な影響があるかもしれないと指摘されました。
ただ、スタッフからの報告では、海外の投資家が米国資産を大量に売却したとの証拠はなし。足もとの状況(金利上昇&米ドル安)は米国資産からの資金流出というより、グローバル投資家が一段の米ドル安に備えて為替ヘッジを増やしたためだとのこと。
もっとも、同じスタッフの報告で、大手のグローバル投資家は投資戦略をゆっくりと変更する傾向があるので、保有資産の地域配分に変更があるかどうかは今後の世界経済見通しの変化によるとのことでした。
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