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米下院歳入委員会が税制改革法案を承認、トランプ減税実現へ向けてさらに前進!?

2025/05/15 08:11

【ポイント】
・下院は5月26日までの法案可決を目指す
・上院は歳出削減や債務上限引き上げを含めて7月の成立を目指す??
・共和党内部も一枚岩ではなく、審議難航の可能性も
・財政赤字拡大の可能性を意識すれば長期金利は上昇しそう

米国の下院歳入委員会は14日、税制改革法案を承認しました。これは、共和党が成立を目指す予算調整法案の一部であり、トランプ減税の中核をなすもの。今後、手続き上の調整を経て下院本会議で審議されます。共和党は5月26日のメモリアルデーまでの下院通過を目指しています。

税制改革法案

無党派のCRFB(責任ある連邦財政委員会)は、税制改革法案は10年間で政府債務を3.3兆ドル、一部の時限措置を恒久化すれば同5.2兆ドル増加させると試算しています。

予算調整法案では歳出を最低1.5兆ドル削減することを目指していますが、減税をカバーするには不十分。共和党は減税による増収効果によって財政赤字は拡大しないと主張しているものの、多くのエコノミストは懐疑的です。また、現在の関税率が続けば、10年間で2兆ドル程度の関税収入になるとの試算もあるようですが、こちらも先行きは不透明です。

今後のスケジュール
共和党は下院の過半数を握っているものの、民主党との差はわずか(218対215)。そのため、税制改革法案を下院が可決するためには共和党が一枚岩になる必要があります。しかし、法案の中身に対して、共和党内にも賛否があるため、審議が長引く可能性があります。

下院は並行して、あるいは税制改革法案の可決後に、歳出の削減策を立法化する必要がありますが、こちらも前途多難でしょう。

一方、上院は民主党によるフィリバスター(法案の採決妨害)を避けるため、税制改革を予算調整法案に組み込む必要があり、それには減税分を相殺するための歳出削減策も盛り込む必要があります。また、共和党はデットシーリング(債務上限)の引き上げも予算調整法案の一部とする意向であり、そのため7月中の成立を目指しています(財務省の特別措置の限界が8月にも到来するため)。

上院が予算調整法案を可決すれば、改めて下院での審議・採決が必要になります。このプロセスは、上院と下院が同一の法案を可決するまで続きます。

市場の反応は・・・・
下院歳入委員会が税制改革法案を承認したことを受けて、14日の長期金利(10年物国債利回り)は7bp(ベーシスポイント=1/100%)上昇し、終値ベースでは約3カ月ぶりの高水準となりました。財政赤字拡大の可能性が意識されたからでしょう。

今後も議会の審議内容次第では、債券市場が嫌気して長期金利が上昇する場面があるかもしれません。

米長期金利
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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